第三級アマチュア無線技士 CBT試験問題例題(工学 No.3) 問28 解説 VHF帯の通信距離延伸
超短波(VHF)帯の電波を使用する通信において、一般に、通信可能な距離を延ばすための方法として、誤っているのは次のうちどれか。
- 1. アンテナの高さを高くする。
- 2. アンテナの放射角を高角度にする。 ✓ 正答
- 3. 鋭い指向性のアンテナを用いる。
- 4. 利得の高いアンテナを用いる。
解説
VHF帯の電波の性質を理解し、「相手との間にいかに効率よく電波を届けるか」という視点で選択肢を検討するのが正解への近道です。この問題は、直接波の伝搬特性を知っていれば、誤った選択肢を即座に見抜くことができます。
直接波と見通し距離のルール
VHF帯(30MHz〜300MHz)の電波は、光と似た性質を持ち、基本的には送信アンテナから受信アンテナへ直線的に伝わる「直接波」として伝搬します。そのため、通信距離を延ばすには「より遠くの相手を見通せる状態にする」ことが基本となります。
選択肢を検討する際の判断基準は以下の通りです。
- アンテナを高くする:障害物を避けて見通し範囲を広げるため、有効です。
- アンテナの放射角を高角度にする:これが誤りです。電波を空に向けて放射しても、地上の相手には届かず、エネルギーが空中に逃げてしまいます。
- 鋭い指向性のアンテナを用いる:特定の方向へ電波を集中させることで、遠くまで電波を届けることができます。
- 利得の高いアンテナを用いる:同じ電力でも電波を強く集中させるため、通信距離が伸びます。
放射角がなぜ問題なのか
電波を遠くに飛ばすためには、地上の見通し線に沿って水平方向にエネルギーを放射する必要があります。これを「低角度」といいます。一方で「高角度」に放射するということは、地面に対して斜め上や空の方向へ電波を向けることを意味します。VHF帯の電波は電離層で反射されずに突き抜けて宇宙空間へ消えてしまうため、高角度への放射は通信距離を延ばすどころか、逆に損失を招く行為となります。
実践的なアンテナ設置の考え方
アマチュア無線の運用において、この知識はアンテナの設置場所や種類の選定に直結します。たとえば、山間部でVHF無線を使う場合、アンテナをわずかに高く設置するだけで通信が安定したり、指向性アンテナ(八木・宇田アンテナなど)を相手の方向へ向けるだけで届かなかった信号が受信できるようになることがあります。
試験の教育的意図としては、単なる知識の暗記ではなく、「電波の進む方向を意識して環境を整える」という無線運用の基礎的なセンスを問うています。利得や指向性といった言葉は、無線設備を運用する上で避けて通れない概念であり、これらを「いかに通信距離に結びつけるか」を整理しておくことが合格への鍵となります。