第四級アマチュア無線技士 CBT試験問題例題(工学 No.1) 問14 解説 トランジスタ増幅方式
図は、トランジスタ増幅器の V_BE-I_C 特性曲線の一 例である。特性のP点を動作点とする増幅方式の名称 として、正しいのは次のうちどれか。
- 1. A級増幅
- 2. B級増幅 ✓ 正答
- 3. C級増幅
- 4. AB級増幅
解説
特性曲線において、コレクタ電流が流れ始める境界の点(カットオフ点、図のP点)を動作点とし、入力信号のプラス側の半サイクル(半分)だけ出力電流を流す増幅方式は、B級増幅です。
動作点の位置と出力波形による分類
トランジスタ増幅器は、入力信号がないときに流しておく電流(バイアス電流)の量と、それによって決まる動作点の位置によって、A級、B級、C級、AB級などの増幅方式に分類されます。それぞれの特徴は以下の通りです。
A級増幅
特性曲線の直線部分のほぼ中央に動作点を置きます。入力信号の全サイクル(360度)にわたって常に電流が流れます。出力波形の歪みは極めて少ないですが、信号がないときでも常に大きな電流が流れるため効率が悪く、発熱が大きくなります。
B級増幅
電流が流れ始める境界の点(カットオフ点)に動作点を置きます。入力信号の半サイクル(180度、半分)だけ電流が流れます。信号がないときは電流が流れないため効率が良いですが、そのままでは半分しか増幅できないため、波形が大きく歪みます。
C級増幅
カットオフ点よりもさらに深い(電圧がマイナス側の)領域に動作点を置きます。入力信号の半サイクル未満(180度未満)の短い時間だけ電流が流れます。効率は非常に高いですが、出力波形は激しく歪むため、単体で音声増幅などには使えず、共振回路と組み合わせて高周波の増幅に使われます。
AB級増幅
A級とB級の中間(カットオフ点より少し上)に動作点を置きます。半サイクルより少し多い時間(180度から360度の間)だけ電流が流れます。A級の低歪み性とB級の高効率性をバランスよく両立した方式です。
図の読み解き方と正解へのアプローチ
問題の図に示されている特性曲線と、入力・出力の波形の関係を順番に観察していきます。
まず、横軸はベース・エミッタ間電圧 、縦軸はコレクタ電流 を示しています。トランジスタはある一定以上の電圧がベースに加わらないと電流が流れない性質があります。図の特性曲線が右上がりに立ち上がっている部分が、電流が流れる領域です。
次に、動作点を示すP点の位置に注目します。P点は となる立ち上がりの起点、すなわち電流が流れ始める限界の点(カットオフ点)にあります。
この状態で、P点を中心とする交番電圧(入力電圧の波形)をベースに加えたときの、出力電流の波形を見てみます。 入力電圧がプラス側に振れたとき(右側)は、特性曲線に沿ってコレクタ電流 が上向きに流れます。 しかし、入力電圧がマイナス側に振れたとき(左側)は、動作点Pよりもさらに電圧が下がるため、トランジスタは完全に遮断状態となり、コレクタ電流は全く流れません。
結果として、出力電流は入力信号のプラス側の半分(半サイクル)だけが山型の波形として現れ、残り半分はゼロのまま平らになります。 このように、カットオフ点を動作点とし、入力の半サイクルだけを出力する方式であることから、正解は選択肢2の「B級増幅」と判断できます。
無線機における増幅方式の使い分けと技術的意義
この知識は、実際の無線機における「送信機の電力増幅部(パワーアンプ)」や「音声増幅部」の設計や動作原理を理解するためにとても重要です。
なぜわざわざ波形が半分に欠けてしまうB級増幅を使うのかというと、それは効率(省電力性)を高めるためです。常に電流を流し続けるA級増幅は音が歪まないという大きなメリットがありますが、電波を送信していないときや無音のときでも最大の電流を消費し続け、そのほとんどが熱となって無駄になってしまいます。これでは、バッテリーで動く移動体無線や、高出力の送信機には不向きです。
B級増幅であれば、信号が入力されたときだけ電流が流れるため、無駄な電力消費と発熱を大幅に抑えることができます。半分に切れてしまった波形は、NPN型とPNP型のトランジスタを上下に対称に組み合わせた「プッシュプル回路」を使うことで、プラス側とマイナス側の波形をそれぞれ増幅し、きれいに合成して元の形を復元します。
4アマの試験では、この「動作点(P点)の位置」と「得られる出力電流の形(半サイクル)」の対応関係を視覚的に理解しているかが問われています。それぞれの「級」が持つ効率と歪みのトレードオフの関係をイメージできるようになると、実務や上級資格へのステップアップにも大いに役立ちます。