第三種電気主任技術者試験 / 令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 法規科目 / 各問題解説 / 問121
certification-simodake-work

令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 法規科目 問121 解説 問12(a) 問12

設問図

問12(a) 図は三相3線式高圧電路にに変圧器で結線された変圧器低圧側電路を示したものである。低圧側電路の一端子にはB種接地工事が施されている。この電路の一相当たりの対地静電容量をCとし接地抵抗をR_Bとする。低圧側電路の線間電圧 200 V,周波数 50 Hz,対地静電容量 C は 0.1 μF として,次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし,(ア) 変圧器の高圧電路の1線地絡電流は 5 A とする。(イ) 高圧側電路と低圧側電路との混触時に低圧電路の対地電圧が 150 V を超えた場合は 1.3 秒で自動的に高圧電路を遮断する装置が設けられているものとする。(a) 変圧器に施された,接地抵抗 R_B の抵抗値について「電気設備技術基準の解釈」で許容されている上限の抵抗値[Ω]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 20
  2. 30
  3. 40
  4. 60 ✓ 正答
  5. 100

解説

この問題において、変圧器に施されるB種接地抵抗 RBR_B の許容上限値は 60 Ω60 \text{ Ω} です。これは、「電気設備技術基準の解釈」第17条第1項第2号ロの規定に基づき、高圧電路の1線地絡電流 Ig=5 AI_g = 5 \text{ A} と、混触時の高圧電路遮断時間 t=1.3 st = 1.3 \text{ s} が与えられた場合に、変圧器の高圧巻線と低圧巻線との間にB種接地工事を施した金属製のけい鉄が設けられているものとして判断されるためです。

B種接地工事の目的と「電気設備技術基準の解釈」

変圧器は、高圧電路から低圧電路へ電圧を変換する機器です。万が一、変圧器内部で高圧巻線と低圧巻線が接触(混触)すると、高圧側の高い電圧が低圧側電路に侵入し、低圧電路の対地電圧が異常に上昇する危険性があります。これにより、感電事故や低圧側の電気機器の損傷を引き起こす可能性があります。 B種接地工事は、このような混触事故が発生した際に、低圧電路の対地電圧の異常な上昇を抑制し、人体保護や設備保護を目的として行われる重要な保安対策です。

B種接地抵抗の許容上限値やその算定方法は、「電気設備に関する技術基準を定める省令」に基づき、「電気設備技術基準の解釈」(以下、電技解釈)に詳細に規定されています。この許容値は、主に以下の3つの要因によって決まります。

  1. 高圧電路の1線地絡電流 (IgI_g): 高圧側で地絡事故が発生した際に大地に流れる電流です。この電流が大きいほど、低圧側の対地電圧上昇も大きくなるため、より低い接地抵抗が求められます。
  2. 低圧電路の対地電圧上昇の許容値 (EsE_s): 混触時に低圧電路の対地電圧が一定値(通常150V)を超えないようにする基準です。
  3. 高圧電路の遮断時間 (tt): 混触事故が発生してから、高圧電路が自動的に遮断されるまでの時間です。遮断時間が短いほど、人体や設備が異常電圧にさらされる時間が短くなるため、電技解釈では接地抵抗値の基準が緩和される場合があります。

特に、電技解釈第17条には、変圧器の保護構造による緩和規定が設けられています。変圧器の高圧巻線と低圧巻線との間に金属製のけい鉄(鉄心)が設けられ、これにB種接地工事が施されている場合、混触時にけい鉄が直接地絡電流を大地へ流す経路となるため、低圧電路への異常電圧侵入がより効果的に抑制されます。この構造上の安全対策がある場合、B種接地抵抗の許容値が緩和され、より高い抵抗値が認められることになります。 この緩和規定においては、高圧電路の遮断時間が 0.5 s0.5 \text{ s} を超える場合、B種接地抵抗 RBR_B の上限値は RB≤300IgR_B \le \frac{300}{I_g} と定められています。第三種電気主任技術者試験の過去問では、問題文に変圧器のけい鉄に関する明示的な記述がない場合でも、この緩和規定が適用される前提で出題されるケースが多く見られます。これは、より安全な設備設計がなされていることを前提としているためです。

設問の条件と答えに至る判断

  1. 問題条件の確認 与えられている主な条件は以下の通りです。

    • 変圧器の高圧電路の1線地絡電流 Ig=5 AI_g = 5 \text{ A}
    • 高圧側電路と低圧側電路との混触時に、低圧電路の対地電圧が 150 V150 \text{ V} を超えた場合に、高圧電路を自動的に遮断するまでの時間 t=1.3 st = 1.3 \text{ s}
    • 変圧器にはB種接地工事が施されています。
  2. 適用すべき電技解釈条文の特定 B種接地抵抗の上限値を求めるため、電技解釈第17条を参照します。問題文には変圧器のけい鉄に関する明示的な記述はありませんが、過去の出題傾向や一般的な安全設計を考慮すると、**変圧器の高圧巻線と低圧巻線との間にB種接地工事を施した金属製のけい鉄を設けるもの(緩和規定が適用されるもの)として解釈するのが適切です。**したがって、第17条第1項第2号ロの規定を適用します。

  3. 遮断時間による計算式の選択 第17条第1項第2号ロの規定では、高圧電路の遮断時間によって適用する計算式が異なります。

    • 遮断器が動作するまでの時間が 0.5 s0.5 \text{ s} 以下の場合:RB≤600IgR_B \le \frac{600}{I_g}
    • 遮断器が動作するまでの時間が 0.5 s0.5 \text{ s} を超える場合:RB≤300IgR_B \le \frac{300}{I_g}

    本問題で与えられている遮断時間は t=1.3 st = 1.3 \text{ s} です。これは 0.5 s0.5 \text{ s} を超えるため、後者の式 RB≤300IgR_B \le \frac{300}{I_g} が適用されます。

  4. B種接地抵抗の上限値の計算 適用する式に与えられた1線地絡電流 IgI_g の値を代入して計算します。 RB≤300Ig=3005 A=60 ΩR_B \le \frac{300}{I_g} = \frac{300}{5 \text{ A}} = 60 \text{ Ω}

  5. 選択肢との照合 計算により求められたB種接地抵抗の許容上限値は 60 Ω60 \text{ Ω} です。これは選択肢(4)と一致します。

高圧電路の1線地絡電流 IgI_g と、混触時の遮断時間 tt 、そして変圧器の構造(けい鉄の有無による緩和規定)を関連付けると、「電気設備技術基準の解釈」が求めるB種接地抵抗の適切な上限値が見えてきます。

参考リンク

学習の記録にははてなブックマーク!

気づいたこと・覚えたことをコメントにメモしよう