平成30年度 筆記試験(追加試験分) 問16 解説 太陽光発電
太陽電池を使用した太陽光発電に関する記述として, 誤っているものは。
- イ. 太陽電池は, 一般に半導体のpn接合部に光が当たると電圧を生じる性質を利用し, 太陽光エネルギーを電気エネルギーとして取り出している。
- ロ. 太陽電池の出力は直流であり, 交流機器の電源として用いる場合は, インバータを必要とする。
- ハ. 太陽電池発電設備を一般送配電事業者の系統と連系させる場合は, 系統連系保護装置を必要とする。
- ニ. 太陽電池を使用して1kWの出力を得るには, 一般的に1m2程度の表面積の太陽電池を必要とする。 ✓ 正答
解説
太陽光発電の基本原理と出力特性
この問題は、太陽光発電の基本的な仕組み、出力特性、そして系統連系に関する知識を問うています。特に、選択肢ニの「1kWの出力を得るのに必要な表面積」という具体的な数値が誤りであることを見抜くことが重要です。
選択肢の検討と正誤判断
イ. 太陽電池の発電原理 太陽電池が半導体のpn接合に光が当たると電圧を生じる性質を利用しているというのは、太陽光発電の基本的な原理そのものです。これは正しい記述です。
ロ. 出力形式とインバータの必要性 太陽電池の出力は、ご存知の通り直流(DC)です。家庭や送配電網で一般的に使用されているのは交流(AC)ですので、直流を交流に変換するためにインバータが不可欠です。これも正しい記述です。
ハ. 系統連系と保護装置 一般送配電事業者の電力系統に太陽光発電設備を接続(連系)する場合、電力系統の安定運用や、非常時の系統からの自立運転を防ぐために、系統連系保護装置(系統保護装置とも呼ばれます)の設置が義務付けられています。これは、安全確保のために必須の設備です。この記述も正しいです。
ニ. 1kWの出力に必要な表面積 この選択肢が誤りです。「1kWの出力を得るのに一般的に○m²程度の表面積が必要」という具体的な数値は、太陽電池の種類(単結晶シリコン、多結晶シリコン、化合物半導体など)や、その変換効率によって大きく変動します。一般的に、太陽電池の変換効率は15%~20%程度ですが、最新のものや特殊なものではさらに高くなることもあります。 仮に変換効率を15%とすると、太陽光のエネルギー(一定の条件下で約1kW/m²)を15%の効率で電気に変換するため、1kWの出力を得るには、単純計算で 1kW / (1kW/m² * 0.15) = 約6.67m² の面積が必要となります。 しかし、この問題の選択肢には具体的な数値が「○m²」として空欄になっており、その空欄にどのような数値を入れれば「一般的」と言えるかが曖昧です。仮に、より効率の良い太陽電池(例: 20%)であれば、1kWの出力には 1kW / (1kW/m² * 0.20) = 5m² が必要になります。 したがって、「一般的に○m²」という表現で、特定の数値を断定的に示すことが難しく、また、その数値が大きく変動する可能性があるため、この記述は誤りであると判断できます。正確には、太陽電池の「モジュール変換効率」によって必要面積は決まります。
太陽光発電の教育的意図と応用
この問題は、単に太陽光発電の原理を知っているかだけでなく、その実用性に関わる要素、特に「どれくらいのスペースでどれくらいの発電量が得られるか」という、我々が太陽光発電システムを導入する上で非常に現実的に直面する課題を理解しているかを問うています。
太陽光発電の仕組み:光エネルギーから電気エネルギーへ
太陽電池は、半導体材料(主にシリコン)を用いて作られており、その内部には「pn接合」と呼ばれる構造があります。このpn接合に太陽光(光子)が当たると、半導体内の電子が励起されて自由になり、これが電流として流れることで電気が発生します。これは「光起電力効果」と呼ばれる現象です。
flowchart TD
A["太陽光(光子)"] --> B["pn接合"];
B --> C["電子が励起"];
C --> D["電流発生"];
D --> E["直流電力"];出力特性とインバータの役割
太陽電池パネル一枚一枚が出力する電圧・電流は、光の強さや温度によって変動します。また、パネルの接続方法(直列・並列)によって、全体の出力特性が決まります。いずれにしても、最終的に得られるのは直流電力です。 家庭で利用する電気製品の多くは交流で動作するため、また、電力系統へ供給するためには、この直流電力を交流電力に変換する必要があります。この役割を担うのが「インバータ」です。インバータの性能も、発電システム全体の効率に大きく影響します。
系統連系と安全対策
太陽光発電設備を電力会社の送配電網に接続する(系統連系)際には、いくつかの重要な安全対策が講じられます。
- 自立運転の防止: 停電時、太陽光発電設備が単独で運転を続けると、保守作業員に感電の危険が生じます。これを防ぐため、系統からの電力供給が途絶えたことを検知すると、太陽光発電設備も自動的に停止する機能(逆潮流防止、単独運転防止)が求められます。
- 電圧・周波数の安定化: 系統連系された太陽光発電設備から大量の電力が注入されると、系統の電圧や周波数が不安定になる可能性があります。これを防ぐための制御機能も重要です。 これらの安全機能を統合したものが「系統連系保護装置」です。
必要面積の目安:発電効率が鍵
前述の通り、1kWの出力を得るために必要な表面積は、太陽電池の「モジュール変換効率」に大きく依存します。
- モジュール変換効率とは: 太陽電池パネルの表面積あたり、どれだけの太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換できるかを示す割合です。例えば、変換効率が20%であれば、1平方メートルのパネルに1kWの太陽光が当たった場合、理論上0.2kW(200W)の電力が出力されることになります。
- 一般的な数値: 現在、一般的に普及している太陽光パネルの変換効率は15%~20%程度です。これに基づけば、1kWの出力を得るには、おおよそ5m²~7m²程度の表面積が必要になると考えられます。しかし、これはあくまで目安であり、パネルの種類や設置条件(角度、日陰の有無など)によっても実際の発電量は変動します。 この問題の選択肢ニでは、具体的な数値が明記されていないものの、「一般的に○m²」という表現は、ある程度の幅や変動要因を考慮した上での概算値を示すべきですが、その概算値が誤っている(あるいは、誤っていると判断できる曖昧さがある)ことが、この選択肢を誤りにしていると考えられます。