平成30年度 第一種 筆記試験 問13 解説 蓄電池の特性
蓄電池に関する記述として,正しいものは。
- イ. 鉛蓄電池の電解液は,希硫酸である。 ✓ 正答
- ロ. アルカリ蓄電池の放電の程度を知るためには,電解液の比重を測定する。
- ハ. アルカリ蓄電池は,過放電すると充電が不可能になる。
- ニ. 単一セルの起電力は,鉛蓄電池よりアルカリ蓄電池の方が高い。
解説
本問は、蓄電池の種類とその基本的な特性に関する知識を問うものです。各選択肢の記述が正しいか誤りかを判断することで、正解を導き出します。特に、鉛蓄電池とアルカリ蓄電池の構造、充放電特性、単一セルあたりの起電力の違いを正確に理解しているかがポイントとなります。
各選択肢の正誤判断
選択肢イ:鉛蓄電池の電解液
「鉛蓄電池の電解液は, 希硫酸である。」
この記述は正しいです。 鉛蓄電池は、正極に二酸化鉛、負極に鉛、そして電解液に希硫酸(硫酸と水の混合液)を使用します。充放電反応の際に電解液の硫酸濃度が変化するため、比重を測定することで充電状態を把握できるという特徴があります。
選択肢ロ:アルカリ蓄電池の放電の程度を知る方法
「アルカリ蓄電池の放電の程度を知るためには, 電解液の比重を測定する。」
この記述は誤りです。 アルカリ蓄電池(例えばニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル水素蓄電池など)では、電解液として水酸化カリウムなどのアルカリ性溶液が使われます。これらの蓄電池の充放電反応では、電解液自体の濃度(比重)はほとんど変化しません。そのため、アルカリ蓄電池の充電状態を比重計で測ることはできません。充電状態の把握には、主に電圧測定や専用の充電量計が用いられます。電解液の比重測定が有効なのは、電解液が直接反応に関与し、その濃度が変化する鉛蓄電池の場合です。
選択肢ハ:アルカリ蓄電池の過放電
「アルカリ蓄電池は, 過放電すると充電が不可能になる。」
この記述は誤りです。 アルカリ蓄電池は、鉛蓄電池と比較して過放電に対する耐性が高いという特性があります。ある程度の過放電であれば、再度充電して使用することが可能です。もちろん、極端な過放電や長期間の放置は電池の性能劣化や寿命短縮の原因となりますが、「充電が不可能になる」と断定するほどではありません。
選択肢ニ:単一セルの起電力の比較
「単一セルの起電力は, 鉛蓄電池よりアルカリ蓄電池の方が高い。」
この記述は誤りです。 単一セルあたりの公称起電力は、鉛蓄電池が約2.0Vであるのに対し、アルカリ蓄電池(ニッケル・カドミウム、ニッケル水素)は約1.2Vです。したがって、鉛蓄電池の方が単一セルあたりの起電力は高いと言えます。
蓄電池の基礎知識と実用上のポイント
この問題は、第一種電気工事士として必要となる蓄電池の基本的な知識、特に主要な種類ごとの特性の違いを理解しているかを確認するものです。電気設備における蓄電池は、非常用電源、再生可能エネルギーの貯蔵、UPS(無停電電源装置)など多岐にわたる用途で使用され、その選定や運用には各蓄電池の特性を理解することが不可欠です。
鉛蓄電池の特性と用途:
- 特徴: 比較的安価で、大電流放電が可能。単一セル約2.0V。電解液(希硫酸)の比重変化で充電状態が把握できる。
- 主な用途: 自動車用バッテリー、非常用電源、UPS、フォークリフトなど。
- 留意点: 過放電や過充電に弱く、電解液の補充が必要な場合がある。
アルカリ蓄電池の特性と用途:
- 特徴: 鉛蓄電池に比べて寿命が長く、耐過放電性・耐過充電性に優れる。低温特性も良好。単一セル約1.2V。電解液(水酸化カリウムなど)の比重は充放電で変化しないため、液管理の手間が少ない。
- 主な用途: 非常用照明、通信機器、産業用機器、電気自動車(一部)、ポータブル電子機器など。
- 留意点: 鉛蓄電池に比べて高価。
これらの知識は、単に試験問題を解くだけでなく、現場で最適な蓄電池システムを設計・施工・保守する上で非常に重要です。例えば、非常用電源として鉛蓄電池を選定した場合、定期的な電解液の比重測定や補充といったメンテナンス計画を立てる必要があります。一方で、メンテナンスフリーが求められる用途であれば、アルカリ蓄電池やリチウムイオン蓄電池が候補となるでしょう。
試験対策としては、以下の点を中心に学習を進めることをお勧めします。
- 主要な蓄電池の種類(鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン蓄電池など)
- 各蓄電池の電解液の種類
- 単一セルあたりの公称電圧(起電力)
- 充放電特性(比重の変化、過放電・過充電に対する耐性、サイクル寿命など)
- 主な用途と特徴
これらの基礎知識をしっかりと身につけることが、合格への近道となります。