第一種電気工事士試験 / 平成30年度 第一種 筆記試験 / 問16
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平成30年度 第一種 筆記試験 問16 解説 水力発電の出力計算

有効落差 100 m, 使用水量 20 m³/s の水力発電所の発電出力[MW]は。 ただし, 水車と発電機の総合効率は 85 % とする。

  1. イ. 1.9
  2. ロ. 12.7
  3. ハ. 16.7 ✓ 正答
  4. ニ. 18.7

解説

この問題は、水力発電所の発電出力を計算する基本的な公式を理解しているかを問うものです。

まず、水力発電所の発電出力 P[kW]P \text{[kW]} を求める公式 P=9.8×Q×H×ηP = 9.8 \times Q \times H \times \eta を使用します。 ここで、

  • QQ: 使用水量 [m3/s]\text{[m}^3\text{/s]}
  • HH: 有効落差 [m]\text{[m]}
  • η\eta: 水車と発電機の総合効率 (0〜1の間の値)

問題文に与えられた値は以下の通りです。

  • 有効落差 H=100 mH = 100 \text{ m}
  • 使用水量 Q=20 m3/sQ = 20 \text{ m}^3\text{/s}
  • 総合効率 η=85%=0.85\eta = 85 \% = 0.85

これらの値を公式に代入して計算します。 P=9.8×20×100×0.85P = 9.8 \times 20 \times 100 \times 0.85 P=196×100×0.85P = 196 \times 100 \times 0.85 P=19600×0.85P = 19600 \times 0.85 P=16660 kWP = 16660 \text{ kW}

求められている発電出力は [MW]\text{[MW]} 単位なので、kW\text{kW}MW\text{MW} に変換します。 1 MW=1000 kW1 \text{ MW} = 1000 \text{ kW} ですから、 P=166601000=16.66 MWP = \frac{16660}{1000} = 16.66 \text{ MW}

選択肢の中で最も近い値は「ハ. 16.7」です。

水力発電出力の公式とその意味

水力発電の出力計算は、水の持つ位置エネルギーがどれだけ電気エネルギーに変換されるかを求めるものです。公式 P=9.8×Q×H×ηP = 9.8 \times Q \times H \times \eta は、このエネルギー変換の過程を凝縮したものです。

  • Q×HQ \times H の意味: 水の持つ位置エネルギーは、水の質量と高さに比例します。単位時間あたりに利用される水の質量は、使用水量 Q[m3/s]Q \text{[m}^3\text{/s]} に水の密度 [kg/m3]\text{[kg/m}^3\text{]} を掛けることで得られます。水の密度はほぼ 1000 kg/m31000 \text{ kg/m}^3 です。 したがって、単位時間あたりの水の質量は Q×1000 [kg/s]Q \times 1000 \text{ [kg/s]} となります。 この水が有効落差 H[m]H \text{[m]} を落下することで得られる位置エネルギーは、質量×重力加速度×高さ\text{質量} \times \text{重力加速度} \times \text{高さ} で計算できます。 つまり、Q×1000×g×H [W]Q \times 1000 \times g \times H \text{ [W]} となります(gg は重力加速度)。

  • 定数 9.89.8 の由来: 上記の式における水の密度 1000 kg/m31000 \text{ kg/m}^3 と重力加速度 g9.8 m/s2g \approx 9.8 \text{ m/s}^2 を掛け合わせると、1000×9.8=98001000 \times 9.8 = 9800 となります。 水力発電の公式では、最終的な出力を kW\text{kW} で求めるため、この 9800980010001000 で割った 9.89.8 を定数として用いるのが一般的です。 つまり、P[kW]=1000×g1000×Q×H×η=9.8×Q×H×ηP \text{[kW]} = \frac{1000 \times g}{1000} \times Q \times H \times \eta = 9.8 \times Q \times H \times \eta となるわけです。

  • 総合効率 η\eta: 水が持っていた位置エネルギーが、すべて電気エネルギーに変換されるわけではありません。水車での回転エネルギーへの変換効率、発電機での電気エネルギーへの変換効率、さらに摩擦や熱損失などがあるため、必ずエネルギーの一部は失われます。この損失を考慮したものが「総合効率」です。効率は 0<η10 < \eta \leq 1 の範囲で表され、問題ではパーセンテージで与えられることが多いので、計算の際は小数に直すのを忘れないようにしましょう。

問題解決の思考プロセス

このような計算問題では、以下のステップで進めるとスムーズに解答にたどり着けます。

  1. 何が求められているかを確認する: 「発電出力[MW]」が求められています。最終的な単位に注意しましょう。

  2. 問題文から必要な情報を抽出する:

    • 有効落差 H=100 mH = 100 \text{ m}
    • 使用水量 Q=20 m3/sQ = 20 \text{ m}^3\text{/s}
    • 総合効率 η=85%=0.85\eta = 85 \% = 0.85
  3. 適切な公式を思い出す: 水力発電の出力に関する公式 P=9.8×Q×H×η[kW]P = 9.8 \times Q \times H \times \eta \text{[kW]} を適用します。この公式は、第一種電気工事士試験だけでなく、電験三種などの上位資格でも必須の知識です。

  4. 単位に注意して数値を代入し、計算する: QQm3/s\text{m}^3\text{/s}HHm\text{m}η\etaは小数であるかを確認します。問題文の単位が公式の単位と合致しているか確認することは、計算ミスを防ぐ上で非常に重要です。

  5. 最終的な単位に変換する: 計算結果は kW\text{kW} で得られるため、問題で指定された MW\text{MW} に変換するのを忘れないでください。

実社会での活用と試験の教育的意図

この問題は、電気工事士として発電所の基本的な仕組みを理解しているかを確認するものです。水力発電は再生可能エネルギーの重要な柱であり、その発電原理と出力計算の基礎を知ることは、電気技術者としての素養を培う上で不可欠です。

実際の現場では、発電所の設計や運用において、この出力公式がベースとなります。例えば、新しい水力発電所の建設を計画する際に、どのくらいの水量と落差があれば、どれくらいの電力を安定して供給できるのかを試算する際にこの公式が用いられます。また、既存の発電所の効率改善を検討する際にも、効率 η\eta の重要性を理解していることが役立ちます。

電気工事士試験では、このような物理学的な背景を持つ公式を暗記するだけでなく、その意味を理解し、与えられた条件に適用できる応用力が求められます。この問題を通じて、エネルギー変換の基礎と、それが実際の電力供給にどう結びついているかを感じ取っていただければ幸いです。

参考リンク

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