平成30年度 第一種 筆記試験 問31 解説 高圧架空引込線施工
②に示す高圧架空引込ケーブルによる,引込線の施工に関する記述として,不適切なものは。
- イ. ちょう架用線に使用する金属体には,D種接地工事を施した。
- ロ. 高圧架空電線のちょう架用線は,積雪などの特殊条件を考慮した想定荷重に耐える必要がある。
- ハ. 高圧ケーブルは,ちょう架用線の引き留め箇所で,熱収縮と機械的振動ひずみに備えてケーブルにゆとりを設けた。
- ニ. 高圧ケーブルをハンガーにより,ちょう架用線に1mの間隔で支持する方法とした。 ✓ 正答
解説
この問題は、高圧架空引込ケーブルの施工基準に関する知識を問うものです。特にハンガーによるちょう架用線への支持間隔が適切かどうかを判断します。電気設備の技術基準の解釈第164条において、高圧架空引込ケーブルのハンガー支持間隔は0.5m以下と定められているため、1m間隔とする選択肢ニが不適切であると判断できます。
高圧架空引込ケーブルの支持間隔
選択肢「ニ」が不適切である理由は、高圧架空引込ケーブルをハンガーで支持する場合の法令上の要件を満たしていないためです。 「電気設備の技術基準の解釈」第164条(高圧架空引込線の施設)第1項第一号ニには、高圧架空引込ケーブルを施設する際の支持方法について、明確な規定があります。具体的には、「ハンガーを使用する場合は、その間隔を0.5m以下とすること」と定められています。 この規定は、ケーブルの自重や風による振動、あるいは積雪などの外力によってケーブルが過度に垂れ下がったり、損傷したりするのを防ぐために設けられています。支持間隔が広いと、ケーブルに働く力が集中しやすくなり、長期的な信頼性低下や事故の原因となる可能性があります。そのため、1m間隔では基準を満たさず、不適切な施工となります。
ちょう架用線の接地工事
選択肢「イ」の「ちょう架用線に使用する金属には,D種接地工事を施した。」という記述は、適切な施工方法です。 同、電気設備の技術基準の解釈第164条第1項第一号ハでは、「ちょう架用線には、D種接地工事を施すこと」と規定されています。 ちょう架用線は、通常、金属製のワイヤーであり、高圧ケーブルを支持する役割を担っています。万が一、ケーブルの絶縁が劣化したり損傷したりして、高圧電流がちょう架用線に触れた場合、ちょう架用線が帯電し、感電事故のリスクが生じます。また、誘導作用によって不要な電圧が発生する可能性もあります。D種接地工事(旧第3種接地工事)を施すことで、このような異常時に電流を大地に安全に逃がし、感電防止と設備の保護を図ります。
架空電線の機械的強度と環境条件への考慮
選択肢「ロ」の「高圧架空電線のちょう架用線は,積雪などの特殊条件を考慮した想定荷重に耐える必要がある。」という記述は、適切な施工方法です。 架空電線路、特に高圧の設備においては、自然環境からの影響を十分に考慮した設計と施工が不可欠です。積雪、強風、地震、凍結といった特殊な自然条件は、電線や支持物に大きな荷重や応力をもたらします。 電気設備の技術基準の解釈では、直接的にちょう架用線の積雪荷重について言及する条文は第164条にはありませんが、第66条(架空電線路の支持物の強度)や第68条(架空電線路の電線の強度)など、架空電線路全体の設計において、これらの外力に対する十分な機械的強度と安全性を確保することが求められています。高圧架空引込線も架空電線路の一部として、これらの考え方に基づいて設計・施工される必要があります。これにより、設備の破損や広範囲な停電事故を防ぎ、公共の安全と電力供給の安定性を維持します。
ケーブル引き留め箇所のゆとり
選択肢「ハ」の「高圧ケーブルは,ちょう架用線の引き留め箇所で,熱収縮と機械的振動ひずみに備えてケーブルにゆとりを設けた。」という記述は、適切な施工方法であり、電気工事における良好な実務慣行です。 ケーブルは温度変化によって膨張・収縮しますし、風などによる振動も常に受けています。特に、ちょう架用線にケーブルを固定する引き留め箇所では、これらの物理的な力が集中しやすい傾向があります。 ゆとりを設けることで、熱収収縮や振動による応力集中を緩和し、ケーブルの被覆損傷や芯線断線といったトラブルを防ぐことができます。これは、ケーブルの寿命を延ばし、長期的な信頼性を確保するために非常に重要な施工上の配慮となります。電気設備の技術基準の解釈に直接的な条文はありませんが、安全で信頼性の高い電気設備を構築するための基本原則の一つです。
実務に直結する施工基準の重要性
この問題は、第一種電気工事士が実務で高圧設備の施工を行う際に求められる、基本的な法令知識と安全に対する意識を問うものです。電気設備の技術基準の解釈は、電気設備を安全に施設するための最低限の基準を定めており、特に高圧設備は人体への危険性が高いため、これらの基準を正確に理解し遵守することが極めて重要です。 支持間隔のような細かな規定も、ケーブルの長期的な健全性を保ち、事故を未然に防ぐ上で不可欠な要素です。適切な施工は、設備の使用期間を通しての安全と信頼性を確保し、結果として社会インフラの安定稼働に寄与します。