令和3年度 下期 学科試験 問7 解説 コンデンサ容量の計算
図のように三相電源から, 三相負荷(定格電圧200V, 定格消費電力20kW, 遅れ力率0.8)に電気を供給している配電線路がある。配電線路の電力損失を最小とするために必要なコンデンサの容量[kvar]の値は。 ただし, 電源電圧及び負荷インピーダンスは一定とし, 配電線路の抵抗は1線当たり0.1Ωで, 配電線路のリアクタンスは無視できるものとする。
- イ. 10
- ロ. 15 ✓ 正答
- ハ. 20
- ニ. 25
解説
この問題の解き方は、配電線路における電力損失が最小となる条件を把握することです。電力損失 は線路電流 を用いて (三相の場合)と表されます。抵抗 は一定であるため、電力損失を最小にするには電流 を最小にすればよいことになります。電流を最小にする条件は力率を改善して にすること、すなわち負荷が消費する無効電力 をコンデンサで完全に打ち消すことです。
計算手順は以下の通りです。
- 負荷の有効電力 、力率 であるから、無効電力の割合を示す を求める。 なので、
- 負荷の無効電力 を計算する。
- この無効電力 を打ち消すために必要なコンデンサ容量は となる。
なぜ力率改善が電力損失を減らすのか
電力系統において、電流は有効電力のみを運ぶだけでなく、磁界を作るための無効電力も一緒に運んでいます。しかし、配電線路に存在する抵抗 では、電流が流れることで無効電力を運ぶ電流分であっても熱(損失)が発生してしまいます。
式 において、電流 は有効電流 と無効電流 のベクトル和、 で構成されています。有効電力 を一定に保つとすれば、 は変えられません。したがって、電力損失を最小化するには、コンデンサを設置して無効電流 をゼロにする(力率を にする)以外に手段がないのです。
電力系統における力率改善の役割
この問題の思考プロセスは、電気技術者が現場で電力設備を設計・運用する際の基本原則に基づいています。誘導電動機や変圧器など、コイル成分を持つ負荷は遅れ力率を発生させ、系統に無効電流を流します。これが過剰になると、以下の悪影響が生じます。
- 線路の電圧降下が増大する
- 変圧器や配電線が有効電力以外の電流で占有され、設備利用率が下がる
- 電源から供給される電流が増え、送配電線での損失が大きくなる
そのため、電気設備には力率改善用のコンデンサを設置することが義務付けられており、検針票には力率が記載され、低い場合には電気料金の割引(または割増)が行われる仕組みになっています。
この計算が示すもの
試験の問題としては「電力損失を最小にする」という条件下でコンデンサ容量を求めていますが、現実の設計では「何%まで力率を改善すべきか」というコストバランスも考慮されます。しかし、第一種電気工事士の試験としては、無効電力の物理的な意味を理解し、回路に流れる電流成分をベクトル的に制御する概念が問われています。無効電力を相殺するという考え方は、以降の学習や実務における電力管理の基盤となる重要な知識です。