令和3年度 上期 筆記試験 問50 解説 直列リアクトルの役割
⑩で示す機器の役割として、誤ってい るものは。
- イ. コンデンサ回路の突入電流を抑制する。
- ロ. 電圧波形のひずみを改善する。
- ハ. 第5調波等の高調波障害の拡大を防止する。
- ニ. コンデンサの残留電荷を放電する。 ✓ 正答
- correctAnswerIndex
解説
直列リアクトルと放電コイルの役割を見分ける
この問題は、高圧受電設備におけるコンデンサ周辺機器の機能を問うものです。ポイントは「直列リアクトル(SR)」の機能と「放電コイル(DC)」の機能を混同しないことにあります。
誤りである選択肢「ニ」の「コンデンサの残留電荷を放電する」という役割は、直列リアクトルではなく放電コイルが担うものです。直列リアクトルは主に高調波対策としてコンデンサと直列に接続されます。
直列リアクトルが担う高調波抑制の仕組み
電力系統には、整流器やインバータなどの非線形負荷から発生する高調波電流が存在します。コンデンサは周波数が高くなるほどインピーダンスが小さくなる性質があるため、そのまま系統に接続すると、高調波電流を吸い込んでしまい、コンデンサの過熱や焼損、あるいは系統の電圧波形のひずみを増大させる原因となります。
そこで、コンデンサに直列にリアクトルを接続することで、特定の周波数に対して誘導性(L)の性質を持たせます。日本国内の一般的な商用周波数(60Hzまたは50Hz)において、第5調波(300Hzまたは250Hz)を抑制するように設計するのが標準的です。これにより以下の効果が得られます。
- 高調波電流の流入を阻止し、過電流を抑制する。
- コンデンサ投入時の過大な突入電流を抑制する。
- 系統の電圧波形を改善する。
なぜ放電コイルが必要なのか
選択肢ニにある「残留電荷の放電」は、安全確保のための非常に重要なプロセスです。高圧コンデンサは、遮断器を開放した後も内部に電荷を蓄え続けています。万が一、保守点検作業で担当者がこのコンデンサに触れてしまうと、感電事故につながる恐れがあります。
放電コイルはコンデンサと並列に接続されており、回路が遮断された瞬間に、蓄えられた電荷を速やかに放電し、短時間でコンデンサの端子電圧を低下させる役割を担います。直列リアクトルは「コンデンサの保護と系統品質の維持」が目的であり、放電コイルは「保守作業者の安全確保」が目的であるという明確な役割分担を理解しておくことが合格への鍵です。
試験における知識の活用
第一種電気工事士試験では、機器の役割や構成図を正しく把握しているかが問われます。現場ではコンデンサ設備を見る際、コンデンサ(SC)の直近に設置されているコイルが直列リアクトル(SR)なのか、放電コイル(DC)なのかを識別できなければなりません。
設計や施工の現場において、直列リアクトルの容量選定を誤れば、かえって高調波を助長(共振)させるリスクもあります。そのため、試験問題を通じて各機器が系統にどのような影響を与えるのかという「理論」と「安全」の両面を意識することが、実務能力向上にも直結します。