第一種電気工事士試験 / 令和5年度 学科試験 / 問6
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令和5年度 学科試験 問6 解説 配電線の電圧降下

設問図

図のような, 三相3線式配電線路で, 受電端電圧が6700V, 負荷電流が20A, 深夜で軽負荷のため力率が0.9(進み力率)のとき, 配電線路の送電端の線間電圧[V]は。 ただし, 配電線路の抵抗は1線当たり0.8Ω, リアクタンスは1.0Ωである。 なお, cosθ=0.9のときsinθ=0.436であるとし, 適切な近似式を用いるものとする。

  1. イ. 6700
  2. ロ. 6710 ✓ 正答
  3. ハ. 6800
  4. ニ. 6900

解説

この問題は、三相3線式送電線路における電圧降下の近似式を用いて、送電端電圧を求める計算問題です。

計算手順は以下の通りです。

  1. 電圧降下の近似式 ΔV=3I(RcosθXsinθ)\Delta V = \sqrt{3} I (R \cos \theta - X \sin \theta) を用います。進み力率なので、リアクタンス成分の項をマイナスにすることがポイントです。
  2. 与えられた数値を代入します。I=20A,R=0.8Ω,X=1.0Ω,cosθ=0.9,sinθ=0.436I = 20\,\text{A}, R = 0.8\,\Omega, X = 1.0\,\Omega, \cos \theta = 0.9, \sin \theta = 0.436 です。
  3. 計算すると、ΔV=3×20×(0.8×0.91.0×0.436)1.732×20×(0.720.436)=34.64×0.2849.84V\Delta V = \sqrt{3} \times 20 \times (0.8 \times 0.9 - 1.0 \times 0.436) \approx 1.732 \times 20 \times (0.72 - 0.436) = 34.64 \times 0.284 \approx 9.84\,\text{V} となります。
  4. 送電端電圧は受電端電圧に電圧降下を足したものなので、6700+9.84=6709.84V6700 + 9.84 = 6709.84\,\text{V} となり、最も近い6710Vが正解となります。

電圧降下の近似式と進み力率の符号

三相3線式の電圧降下 ΔV\Delta V を求める近似式は ΔV=3I(Rcosθ+Xsinθ)\Delta V = \sqrt{3} I (R \cos \theta + X \sin \theta) が一般的です。これは遅れ力率(誘導性負荷)の場合の式であり、抵抗による電圧降下とリアクタンスによる電圧降下の両方がプラスとして働きます。

しかし、今回の問題のように「進み力率(容量性負荷)」である場合、リアクタンスによる電圧降下は受電端電圧を押し上げる(昇圧させる)方向に働きます。そのため、リアクタンス項の符号がマイナスとなります。この符号の扱いは、第一種電気工事士試験における典型的なひっかけポイントですので注意が必要です。

計算における思考プロセス

問題を解く際は、まず「送電端電圧と受電端電圧のどちらを求めているか」を確認します。送電端から受電端へ向かう過程で電圧は低下しますが、逆に受電端から送電端を求める場合は、計算した電圧降下を足し合わせます。

また、近似式を使う際に混乱を避けるため、式の構造を整理しておくのが有効です。

  • 遅れ力率:ΔV=3I(Rcosθ+Xsinθ)\Delta V = \sqrt{3} I (R \cos \theta + X \sin \theta)
  • 進み力率:ΔV=3I(RcosθXsinθ)\Delta V = \sqrt{3} I (R \cos \theta - X \sin \theta)

今回のように深夜の軽負荷時で進み力率となるケースは、フェランチ効果に近い現象(負荷が少ないときに電圧が上昇する現象)の一端をシミュレーションしているものと捉えることができます。

実務における配電線電圧管理の重要性

この問題は、単なる計算練習ではなく、実務における「電圧管理」という非常に重要な概念に基づいています。電力会社が供給する配電線では、負荷の状態や力率に応じて末端の電圧が変動します。

特に現代の電力系統では、太陽光発電などの分散型電源や、夜間の軽負荷時におけるケーブルの静電容量により、電圧が規定値よりも上昇してしまうケースがあります。技術者はこの電圧降下や上昇を計算で予測し、タップ切換器(LTC)の調整や、無効電力補償装置による力率調整を行って、受電端電圧を一定の範囲内に収める必要があります。試験で学ぶこの数式は、そのような大規模な系統運用の基礎となる「電圧のバランスをとる」という思考を養うためのものです。

参考リンク

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