令和6年度 下期 学科試験 問36 解説 DGRの保護装置試験
高圧受電設備に使用されている地絡方向継 電器(DGR)の保護装置試験として,行わな いものは。
- イ. 動作電流値試験
- ロ. 動作電圧値試験
- ハ. 動作周波数試験 ✓ 正答
- ニ. 位相特性試験
解説
地絡方向継電器(DGR)の試験項目に関する知識問題です。正解の根拠は「DGRの動作原理上、周波数を変化させて動作確認を行う必要がないため」です。
地絡方向継電器の動作原理と必要な試験項目
地絡方向継電器は、高圧受電設備において、地絡事故が発生した際に零相電圧と零相電流を検出し、その位相差を判定することで、事故が自構内のものか外部のものかを判別します。
この動作を確認するためには、以下の試験が不可欠です。
- 動作電圧値試験(感度電圧試験):零相電圧を入力した際に、指定された電圧で継電器が正しく動作するか確認する。
- 動作電流値試験(感度電流試験):零相電流を入力した際に、指定された電流で継電器が正しく動作するか確認する。
- 位相特性試験:零相電圧に対する零相電流の位相差が、動作範囲内であることを確認する。DGRは「方向」を判別する必要があるため、この位相特性試験が最も重要です。
一方、動作周波数試験は、商用周波数(50Hzまたは60Hz)で動作する機器に対して周波数を変動させるものであり、継電器の特性試験としては一般的ではありません。
問題を解くための思考プロセス
この問題を解く際は、まず「地絡方向継電器はどのような情報を元に判断しているか」を思い出してください。
- 地絡方向継電器=「電圧(大きさ)」と「電流(大きさ)」と「位相(向き)」の3つの要素で判断する機器である。
- 選択肢のイ、ロ、ニは、それぞれ「電流」「電圧」「位相」に対応しており、すべて継電器の動作判定に必要な項目である。
- 選択肢ハの「周波数」は、電力系統の基本条件であり、試験時にわざわざ変動させて継電器の動作を検証する項目ではない。
このように、継電器の動作原理(電圧・電流・位相の組み合わせ)を理解していれば、選択肢のハが不適切であることは明確に判断できます。
現場で求められる試験知識の背景
第一種電気工事士が扱う受電設備において、保護継電器の試験は「竣工試験」や「定期点検」として極めて重要です。なぜなら、万が一の地絡事故発生時に継電器が正しく動作しなければ、遮断器が開放されず、停電範囲の拡大や機器の焼損、最悪の場合は感電事故につながるからです。
実務においては、試験装置を用いて実際に電圧と電流を印加し、継電器が確実に引き外し信号を出すかを一つずつ検証します。この際、位相特性試験は、零相電圧と零相電流の位相差を意図的に変化させ、動作領域と不動作領域の境界を測定するという高度な作業を伴います。
試験項目を暗記するだけでなく、DGRが何を検出し、何のために動作するのかという論理構造を理解しておくことが、試験合格後、実際に現場で検査を担当する際の自信につながります。