第一種電気工事士試験 / 令和6年度 上期 第一種 学科試験 / 問1
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令和6年度 上期 第一種 学科試験 問1 解説 アーク溶接の感電

設問図

図のようなアーク溶接作業での感電において,人体を通って流れる電流I[mA]と人体抵抗R2にかかる電圧V[V]は。 ただし,溶接機の出力側無負荷電圧E=86V,乾燥した状態の保護手袋や作業靴を着用しているとき,手と溶接棒間の抵抗R1=20kΩ,人体の抵抗R2=500Ω,足と母材間の抵抗R3=30kΩとする。

  1. イ. I=1.7 V=42
  2. ロ. I=17 V=42
  3. ハ. I=1.7 V=0.85 ✓ 正答
  4. ニ. I=17 V=0.85

解説

回路全体を一つの直列回路とみなし、合成抵抗を求めてからオームの法則を適用します。まず、すべての抵抗を足し合わせて回路に流れる電流 II を算出し、その電流値を用いて人体抵抗 R2R_2 に発生する電圧 VV を計算する手順で解き進めます。

直列回路における合成抵抗の計算

この問題の回路は、溶接機の出力端子から、手(保護手袋)、人体、足(作業靴)、母材を通って溶接機に戻る一本の道筋になっています。このように電流の通り道が一つである回路を直列回路と呼びます。

直列回路の合成抵抗 RR は、各部分の抵抗の和で表されます。計算を行う際、単位が kΩk\Omega(キロオーム)と Ω\Omega(オーム)で混在している点に注意が必要です。まずは単位を Ω\Omega に統一します。

R1=20kΩ=20,000ΩR_1 = 20k\Omega = 20,000 \Omega R2=500ΩR_2 = 500 \Omega R3=30kΩ=30,000ΩR_3 = 30k\Omega = 30,000 \Omega

これらを合計すると、回路全体の合成抵抗 RR は以下のようになります。

R=R1+R2+R3R = R_1 + R_2 + R_3 R=20,000+500+30,000=50,500ΩR = 20,000 + 500 + 30,000 = 50,500 \Omega

オームの法則による電流 II と電圧 VV の導出

回路全体の抵抗が判明したため、オームの法則 I=E/RI = E / R を用いて、人体を流れる電流 II を求めます。問題文で与えられている溶接機の無負荷電圧 EE86V86V です。

I=86/50,5000.0017029...AI = 86 / 50,500 \approx 0.0017029... A

求めたい電流の単位は mAmA(ミリアンペア)であるため、10001000 を掛けて単位を変換します。

I=0.0017029...×10001.7mAI = 0.0017029... \times 1000 \approx 1.7 mA

次に、この電流が人体の抵抗 R2=500ΩR_2 = 500 \Omega を流れたときに発生する電圧 VV を求めます。これもオームの法則 V=I×R2V = I \times R_2 を使用します。計算には、単位変換前の AA(アンペア)の値を使用するとスムーズです。

V=0.0017×500=0.85VV = 0.0017 \times 500 = 0.85 V

以上の計算から、電流 I=1.7mAI = 1.7 mA、電圧 V=0.85VV = 0.85 V となり、選択肢のハが正解となります。

保護具の重要性と感電防止の仕組み

この問題は、単なる計算問題ではなく、電気工事の現場における安全管理の重要性を理論的に示しています。

注目すべきは、人体そのものの抵抗 R2R_2500Ω500 \Omega と非常に小さいのに対し、保護手袋 R1R_1 や作業靴 R3R_3 の抵抗が 20kΩ20k\Omega30kΩ30k\Omega と圧倒的に大きい点です。直列回路では、抵抗が大きい場所に高い電圧が分配されます。今回の計算結果で人体にかかる電圧 VV0.85V0.85V と極めて低く抑えられているのは、保護具が高い抵抗値を維持しているからです。

もし、手袋や靴が汗や水で濡れてしまい、これらの抵抗値が人体と同じ 500Ω500 \Omega 程度まで低下したと仮定すると、回路を流れる電流は劇的に増加し、人体にかかる電圧も跳ね上がります。

第一種電気工事士の試験においてこのような感電回路の計算が出題される意図は、数式の習得だけでなく、適切な絶縁保護具の着用がいかに科学的な根拠に基づいて命を守っているかを理解することにあります。現場での「乾燥した状態を保つ」という安全基本動作が、計算上の分圧比を劇的に変え、致命的な電流を回避させているのです。

参考リンク

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