令和7年度 上期 第一種 学科試験 (出題例) 問20 解説 遮断器の遮断容量
高圧受電設備の受電用遮断器の遮断容量を 決定する場合に、必要なものは。
- イ. 受電点の三相短絡電流 ✓ 正答
- ロ. 受電用変圧器の容量
- ハ. 最大負荷電流
- ニ. 小売電気事業者との契約電力
解説
短絡電流と遮断器の役割
遮断器の定格遮断容量を決定する際は、その設備で想定される「最大の短絡電流」を基準にします。受電点において短絡事故が発生した際、電力会社側から流れ込んでくる電流を「三相短絡電流」と呼びます。遮断器には、この膨大な電流を安全に切り離し、アークを消滅させる能力(遮断容量)が求められるため、受電点の三相短絡電流を知る必要があります。
なぜ遮断容量を計算する必要があるのか
電気設備において、遮断器の最も過酷な任務は「短絡事故」の遮断です。通常の負荷電流はアンペア単位やキロアンペアの小さな値ですが、短絡事故が発生すると、回路のインピーダンスが極めて小さくなるため、瞬時に数万アンペアもの大電流が流れます。
もし、この短絡電流よりも遮断容量が小さい遮断器を使用すると、遮断を試みた瞬間に遮断器が内部で爆発・溶着したり、火災が発生したりする危険性があります。そのため、設計段階で「この地点に短絡が起きたとき、最大で何アンペア流れるか」をあらかじめ計算し、それ以上の遮断能力を持つ遮断器を選定しなければなりません。
短絡電流の決定要因
受電点の三相短絡電流は、主に以下の要因によって決まります。
- 系統の短絡容量:電力会社側(供給側)の変電所能力や電源の強さによって決まります。
- 系統のインピーダンス:受電点までの電線や変圧器が持つ抵抗やリアクタンスの合計値です。
受電用変圧器の容量(ロ)や契約電力(ニ)は、あくまで「定常的に流す電流」や「保護協調」を考える際の指標であり、事故時の「短絡電流の大きさ」を直接決定するものではありません。最大負荷電流(ハ)についても、過負荷保護や遮断器の定格電流を選定する際には重要ですが、短絡遮断容量の算出には直接関与しません。
現場で求められる安全設計の視点
実務において、この知識は受電設備の設計・図面作成の現場で直結します。高圧受電設備を設計する際、技術者は「パーセントインピーダンス(%Z)」という考え方を用いて、事故時の短絡電流を算定します。
この計算結果をもとに、遮断器のカタログデータから「定格遮断容量」が算定値よりも大きい製品を選定し、設計図書に記載します。つまり、この問題は「電気設備が万が一の事故の際にも自らを破壊させないための、最も重要な安全基準」を問うていると言えます。試験では「遮断容量といえば短絡電流」というセットで記憶しておくことが、合格への最短ルートとなります。