令和8年度上期 学科試験 問5 解説 三相交流回路の電圧
図のような三相交流回路において, 電源電圧 は 200 V, 抵抗は 8 Ω, リアクタンスは 6 Ω である。抵抗の両端の電圧 VR[V] は。
- イ. 57
- ロ. 69
- ハ. 80
- ニ. 92 ✓ 正答
解説
三相3線式のY(スター)結線回路を、1相分のみ取り出した単相回路として考えて計算します。まず線間電圧200Vをで割って相電圧を求め、次に抵抗とリアクタンスから成る1相分のインピーダンスを算出します。そのインピーダンスで相電圧を割って流れる電流を求め、最後に電流と抵抗値を掛けることで抵抗の両端電圧を導き出します。
Y結線における線間電圧と相電圧の関係
この問題の回路は、3本の線が中心の一点で交わるスター結線(Y結線)です。三相交流回路を解く際の鉄則は、3つの相のうち1つだけを抜き出した「等価回路」で考えることです。
電源電圧として示されている200Vは、電線と電線の間の電圧である線間電圧です。しかし、実際に1相分の負荷(8Ωの抵抗と6Ωのリアクタンス)にかかっているのは、各線と中心の受電点との間の電圧である相電圧です。
Y結線では、相電圧は線間電圧の倍になるという性質があります。したがって、1相分にかかる電圧は [V]となります。この変換を忘れてしまうと、答えが選択肢に合わなくなるため、三相回路ではまず結線方式を確認することが重要です。
交流回路の合成インピーダンス
1相分の負荷には、8Ωの抵抗と6Ωのリアクタンスが直列に接続されています。交流回路において、これらを単純に足して14Ωとすることはできません。抵抗による電圧とリアクタンスによる電圧は位相が90度ずれるため、ベクトルの和として計算する必要があります。
1相分のインピーダンスは以下の式で求められます。 [Ω]
この「8:6:10」という比率は、直角三角形の「4:3:5」を2倍にしたものであり、電気の計算問題では非常によく登場する組み合わせです。
オームの法則による電圧の算出
回路の1相分にかかる相電圧とインピーダンスが判明したので、ここに流れる電流 [A]を求めます。
[A]
求めたいのは抵抗の両端の電圧です。これにオームの法則を適用すると、以下の計算式になります。
[V]
ここでを約1.73として計算を進めます。
[V]
選択肢の中から最も近い値を選ぶと、92となります。
三相回路の計算が実務で意味すること
この問題で問われている「相電圧への変換」や「インピーダンスの計算」は、実際の現場で電動機(モータ)の端子電圧や電力消費量を見積もる際に不可欠な知識です。
例えば、三相200Vの電源に接続されたモータの内部では、この問題のように1相あたり約115V()の電圧が各巻線にかかっています。もし負荷のバランスが崩れたり、断線が起きたりした場合、この電圧バランスが崩れて機器の過熱や故障を招きます。
また、抵抗成分だけでなくリアクタンス成分を含めて計算するプロセスは、電力の「質」を表す力率の理解にも繋がっています。第一種電気工事士としては、単に電圧を測るだけでなく、その電圧が回路内のどの要素でどのように消費されているかを、ベクトル的な視点で捉える能力が求められています。