令和8年度上期 学科試験 問37 解説 絶縁油の劣化診断
変圧器の絶縁油の劣化診断に直接関係の ないものは。
- イ. 油中ガス分析
- ロ. 真空度測定 ✓ 正答
- ハ. 絶縁耐力試験
- ニ. 酸価度試験(全酸価試験)
解説
この問題は、絶縁油のメンテナンスに関連する用語と、遮断器のメンテナンスに関連する用語を区別できれば正解にたどり着けます。「真空度測定」という言葉が、油(液体)ではなく真空(気体分子が極めて少ない状態)に関連していることに着目するのがポイントです。
絶縁油の役割と劣化診断の重要性
変圧器内の絶縁油は、巻線の冷却と電気的な絶縁という二つの重要な役割を担っています。しかし、長期間の使用により、油は空気中の酸素や湿気と反応し、熱的なストレスを受けて酸化・劣化します。劣化が進むと絶縁性能が低下し、最終的には変圧器の故障や重大な事故につながる恐れがあるため、定期的な診断が不可欠です。
一般的な劣化診断手法には以下のようなものがあります。 ・油中ガス分析:油中に溶け込んだ水素やメタンなどの可燃性ガスを測定します。内部で局所的な過熱や放電が発生している場合、絶縁油が熱分解されてガスが発生するため、最も早期の異常検知に有効です。 ・絶縁耐力試験:油に電圧を加えて、どの程度の電圧で絶縁破壊が起こるかを測定します。絶縁性能そのものを直接確認する手法です。 ・酸価度試験:油が酸化することで発生する酸性成分の量を化学的に調べます。油の「古さ」や酸化の進行具合を評価するための指標となります。
真空度測定が該当しない理由
選択肢にある真空度測定は、真空遮断器(VCB)の点検項目です。VCBは、真空中で接点を開閉することでアーク(火花)を消す仕組みを持っています。もし内部の真空が漏れて劣化すると、正常に遮断できなくなり非常に危険です。そのため、真空バルブ内部が適正な真空状態を保っているかを確認する必要があります。
つまり、絶縁油という「液体」の性質を調べることと、真空容器という「気体が存在しない空間」の性質を調べることは全く別の目的であり、技術的にも混同してはいけない項目です。
試験対策としての整理
この問題は、第一種電気工事士として現場で保守管理を行う際に、どの機器にどの試験が必要かを分類する能力を問うています。
・対象が油入変圧器の場合:油の分析(ガス分析、耐力、酸価) ・対象が真空遮断器の場合:真空度測定
このように「機器」と「試験方法」をセットで記憶しておくことで、試験での取り違えを防ぐことができます。実務においても、特定の機器に対して間違ったメンテナンスを行うことは、設備を破壊するリスクを伴うため、この分類は非常に基本的ながら重要な知識です。