平成21年度 秋期 ITパスポート試験 問51 解説 プロジェクト短縮手法
プロジェクトのスケジュールを短縮する方法について説明したものはどれか。
- ア ウォータフォール型のシステム開発をスパイラル型に変更する。
- イ クリティカルパスの期間を厳守するために,クリティカルパスにない作業の順序を変更する。
- ウ 順番に行うように計画した作業を並行して行うように変更する。 ✓ 正答
- エ プロジェクトの全期間で,メンバの作業負荷をできるだけ一定になるように調整する。
解説
正解の導き方
この問題は「プロジェクトのスケジュールを短縮するための手法」を問うものです。スケジュール短縮の基本原則は、作業の依存関係を見直し、これまで直列(順番)に行う予定だったタスクを並行して実施することです。したがって、選択肢ウが正解となります。
スケジュール短縮の考え方
プロジェクトマネジメントにおいて、期限内にプロジェクトを完了させるためのスケジュール短縮手法には、主に「ファストトラッキング」と「クラッシング」の2つがあります。
ファストトラッキングとは、本来であれば順番に行うべき作業を、重ねて並行して進める手法です。例えば、建物の設計が終わるのを待たずに基礎工事を始めるようなケースがこれにあたります。リスクや手戻りの可能性は高まりますが、コストを増やさずに期間を短縮できるのが特徴です。
一方、クラッシングとは、作業に必要な人員や資源を追加投入することで、作業そのものの期間を短縮する手法です。例えば、本来2人で10日かかる作業に2人追加して計4人で5日で終わらせるようなケースです。こちらはコストが増加するのが特徴です。
なぜ他の選択肢は誤りなのか
選択肢アの「開発手法の変更」は、プロジェクトの枠組みやリスクの取り方に根本的な変化を及ぼすものであり、単なるスケジュール短縮のための手法とは言えません。
選択肢イの「クリティカルパスにない作業の順序変更」は、スケジュール全体には影響を与えません。クリティカルパスとは、プロジェクト全体の中で最も長い経路を指し、このパス上の作業が遅れるとプロジェクト完了日も遅れます。逆に、クリティカルパス上にない余裕のある作業(バッファがある作業)の順序を変えても、全体の完了日を縮めることはできません。
選択肢エの「負荷の平準化」は、プロジェクトの期間短縮ではなく、メンバーの作業負荷を最適化して特定の個人に負荷が集中するのを防ぐ手法です。これはプロジェクトの安定運用には不可欠ですが、工期を短くするための手法ではありません。
実務現場におけるスケジュールの重要性
この問題で学んだ「作業の並行化」という考え方は、実際の業務でも頻繁に活用されます。特にIT開発現場では、要件定義がすべて完了してから設計に入るのではなく、決まった部分から順次設計や開発に着手する、といったアプローチが取られることが一般的です。
しかし、並行化には「手戻りのリスク」という代償が伴います。先に進んだ作業が、後から変更された前段階の仕様と矛盾を起こせば、かえって修正のための工数が増え、結果として当初の計画よりも時間がかかってしまうこともあります。そのため、マネージャには、スケジュールを短縮することによるメリットと、並行化によって生じる手戻りのリスクを天秤にかけ、どこまでを並行して進めるかの見極めが求められます。