平成22年度 春期 ITパスポート試験 問46 解説 プロジェクトの報告
問46 プロジェクトマネージャが行うプロジェクト関係者とのコミュニケーションに関する記述のうち, 最も適切なものはどれか。
- ア どのような報告をいつ, だれに対してどのような方法で行うか, プロジェクトの開始時点で決めておく。 ✓ 正答
- イ 発注者にプロジェクトの進捗報告を行うときは, 開発担当者が作成した進捗報告をそのまま使用する。
- ウ プロジェクトチームのメンバとのコミュニケーションは, 連絡の迅速性を重視して口頭で行う。
- エ プロジェクトの規模にかかわらず, 定期的にプロジェクト内外の関係者全員を集めた進捗状況確認の会議を開催する。
解説
この問題は、プロジェクトマネジメントにおける「コミュニケーション管理」の鉄則を問うものです。正解を選ぶための判断基準は、プロジェクトの遂行にあたって「計画性」と「効率性」のどちらが優先されるかという点にあります。
コミュニケーション管理の基本
プロジェクトを円滑に進めるためには、誰に、何を、いつ、どのような手段で伝えるかという計画が欠かせません。これを「コミュニケーション計画」と呼びます。
プロジェクトの開始直後に、あらかじめ報告ルールを決めておくことで、関係者間の認識のズレを防ぎ、報告漏れによるリスクを低減できます。この「計画を立てる」というプロセスは、プロジェクトマネジメント知識体系(PMBOK)においても非常に重要なステップです。
誤った選択肢を排除する思考プロセス
各選択肢がなぜ適切でないのかを分析すると、プロジェクトマネジメントの本質が見えてきます。
イ:開発担当者が作成した報告書をそのまま使うのは危険です。プロジェクトマネージャには、技術的な詳細を経営層や顧客が理解できる言葉に「翻訳」し、プロジェクト全体のリスクや状況を正しく伝える責務があるからです。内容を精査・調整するのはマネージャの役割です。
ウ:口頭での連絡は迅速ですが、重要な決定事項や合意内容を口頭だけで済ませると、後から「言った・言わない」のトラブルが発生します。重要な情報は文書や記録として残すことが、プロジェクトを守るためのリスク管理となります。
エ:関係者全員を定期的に集める会議は、一見丁寧に見えますが、規模が大きいプロジェクトではコストと時間の無駄になります。不要な会議は関係者の作業時間を奪うため、規模や重要度に応じて適切な報告手段(メール、共有ツール、会議など)を使い分けるのがマネージャの腕の見せ所です。
プロジェクトマネージャの現場での役割
この問題が伝えているのは、「コミュニケーションは行き当たりばったりで行うものではない」という教訓です。
実際に現場で働くプロジェクトマネージャは、以下の点を考慮してコミュニケーションを設計します。 ・誰がこの情報を必要としているか(ステークホルダーの特定) ・情報の重要度はどれくらいか(緊急性や機密性の考慮) ・報告を受ける側のリテラシーや立場は何か(伝える内容の抽象度の調整)
プロジェクト管理とは、単にタスクをこなすことではなく、周囲との円滑な連携を通じた「合意形成」のプロセスです。あらかじめルールを定めておくことは、プロジェクトが進むにつれて生じる混乱や不安を未然に防ぐための、非常に合理的な戦略といえます。