平成24年度 秋期 ITパスポート試験 問13 解説 先行指標
戦略目標の達成状況を評価する指標には、目標達成のための手段を評価する先行 指標と目標達成度を評価する結果指標の二つがある。戦略目標が“新規顧客の開 拓”であるとき、先行指標と考えられるものはどれか。
- ア 新規契約獲得率
- イ 新規顧客数
- ウ 見込み客訪問件数 ✓ 正答
- エ 総顧客増加率
解説
戦略目標「新規顧客の開拓」における先行指標は、新規顧客獲得という結果に繋がる前段階の活動を示すものです。選択肢の中で、実際に顧客となる前の行動を直接的に示す「ウ 見込み客訪問件数」が、結果に先行する活動であるため正解となります。
目標達成を導く二つの指標:先行指標と結果指標
ビジネスにおいて、企業が設定する「戦略目標」を達成するためには、ただ目標を設定するだけでなく、その達成状況を適切に評価し、必要に応じて軌道修正していくことが不可欠です。そこで用いられるのが「先行指標」と「結果指標」という考え方です。
結果指標 (Lagging Indicator)
- 目標達成の「結果」として現れるもの、あるいは「後段階」で測定される指標です。過去の活動がもたらした成果を示すもので、目標の達成度そのものを表すことが多いです。
- 例えば、「売上目標の達成」という戦略目標に対して「最終的な売上高」は結果指標となります。結果指標は、目標が達成できたかどうかを明確に示しますが、問題が発生してからでは手遅れになることが多いという側面もあります。経営学ではKey Goal Indicator (KGI) と呼ばれることもあります。
先行指標 (Leading Indicator)
- 目標達成に向けた活動の「原因」となるもの、あるいは「前段階」で行われる活動の進捗を示す指標です。未来の結果を予測するのに役立ち、目標達成のために「今、何をすべきか」を示唆します。
- 例えば、売上目標達成のために「商談件数」や「見込み客の質」などが先行指標になりえます。先行指標を継続的にモニタリングすることで、結果が出る前に活動の方向性を調整し、目標達成の確度を高めることができます。経営学ではKey Performance Indicator (KPI) と呼ばれることもあります。
「新規顧客開拓」における各選択肢の役割
本問題の戦略目標は「新規顧客の開拓」です。この目標達成に向けて、各選択肢が先行指標と結果指標のどちらに該当するかを見ていきましょう。
ア 新規契約獲得率
- これは「見込み客が何件契約に至ったか」という、ある程度の活動の結果を示します。契約という「結果」に焦点を当てた割合であるため、先行指標というよりは結果指標に近い、または結果指標を評価する補助的な指標と言えます。
イ 新規顧客数
- これは「新規顧客の開拓」という目標そのものの達成度を表す、最も直接的な「結果」です。目標達成の最終的な成果を示すため、結果指標に該当します。
ウ 見込み客訪問件数
- 新規顧客を獲得するためには、まず見込み客を探し、訪問し、商談を行うという一連の「活動」が必要です。この「見込み客訪問件数」は、その活動の量を示すものであり、訪問の後にはじめて商談や契約へとつながるため、新規顧客獲得という結果に先行する「活動の進捗」を表す指標です。したがって、先行指標に該当します。
エ 総顧客増加率
- これは既存顧客も含めた、全体の顧客数がどれだけ増えたかという「結果」を示します。新規顧客だけでなく、既存顧客のリピート率なども含めた、より広範な結果指標です。
この分析から、「ウ 見込み客訪問件数」が、新規顧客の獲得という結果に直接つながる前段階の「活動」を示す先行指標であることが明確になります。
なぜ先行指標の理解が重要なのか?
ITパスポート試験でこのようなビジネス概念が問われるのは、IT技術がビジネスと密接に結びついているからです。先行指標と結果指標の理解は、単に問題を解くだけでなく、実際のビジネスシーンで以下のような重要な役割を果たします。
- 早期の軌道修正: 結果指標だけを見ていては、目標達成が危ういと分かった時には手遅れになっていることがあります。先行指標を定期的にチェックすることで、活動の初期段階で問題を発見し、計画やアプローチを修正することができます。これはPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)の「Do(実行)」と「Check(評価)」の段階で特に有効です。
- 活動の可視化とモチベーション向上: 目標達成に向けた日々の活動が、具体的にどのような進捗を生んでいるかを先行指標で可視化できます。これにより、チームメンバーは自分たちの努力が結果につながっていることを実感しやすくなり、モチベーションの維持・向上にも貢献します。
- 戦略立案とマネジメント: 適切な先行指標を設定することは、具体的な行動計画を立てる上で不可欠です。例えば、システム開発プロジェクトにおいて、最終的なシステム稼働(結果指標)だけでなく、各フェーズでの進捗度、バグ件数、テストケース消化率(先行指標)などを管理することで、プロジェクトを円滑に進めることができます。
このように、先行指標と結果指標の概念は、ITを活用したプロジェクトマネジメント、マーケティング戦略、営業活動、さらには経営戦略全般において、目標達成のための効果的な管理手法として広く活用されています。