平成24年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問3 解説 開発期間短縮の手法
製品開発のライフサイクルにおいて,技術開発や製品の機能設計,ハードウェア設計,試作,製造準備といった作業工程のうち,同時にできる作業は並行して進め,手戻りや待ちをなくして製品開発期間を短縮する手法はどれか。
- ア インダストリアルエンジニアリング
- イ コンカレントエンジニアリング ✓ 正答
- ウ バリューエンジニアリング
- エ リバースエンジニアリング
解説
問題文にある「同時にできる作業は並行して進める」というキーワードに着目します。英語のconcurrentには「並行する」「同時に起こる」という意味があるため、この知識があれば選択肢のコンカレントエンジニアリング(Concurrent Engineering)を即座に選ぶことができます。
並行作業で開発期間を短縮する仕組み
コンカレントエンジニアリングは、製品の開発プロセスにおいて、設計、試作、製造、販売準備などの各工程を、前の工程が完全に終わるのを待たずに、可能な限り同時並行で進める手法です。
従来の開発手法(シーケンシャルエンジニアリング)では、設計が終わってから試作を行い、試作が終わってから製造準備に取り掛かるといったように、一本道の流れで作業を進めてきました。しかし、この方法では後の工程で問題が見つかった場合に、前の工程まで戻ってやり直す「手戻り」のロスが大きくなります。
コンカレントエンジニアリングでは、設計段階から製造担当者や販売担当者が参画し、情報の共有を密に行います。これにより、製造のしやすさを考慮した設計が可能になり、手戻りの回数を減らすとともに、全体の開発期間を大幅に短縮することができます。
正解を導くための比較と消去法
試験対策として、他の選択肢に含まれるエンジニアリング用語との違いを整理しておくことが重要です。
まず、リバースエンジニアリングは、既存の製品を分解したり解析したりして、その仕組みや設計図を明らかにする手法です。競合他社の製品を調査する場合や、古いソフトウェアの仕様書がない場合などに活用されます。
次に、バリューエンジニアリング(VE)は、製品やサービスの「価値」を最大化するための手法です。機能(Function)をコスト(Cost)で割ったものを価値(Value)と定義し、必要な機能を維持しながらコストを下げる、あるいは同じコストで機能を向上させることを目指します。
最後に、インダストリアルエンジニアリング(IE)は、経営工学とも呼ばれ、生産現場における作業者の動きや設備の配置などを科学的に分析し、ムリ・ムダ・ムラを排除して効率を高める手法全般を指します。
問題文にある「工程を並行して進める」という特徴に合致するのはコンカレントエンジニアリングのみであると判断できます。
ビジネスの現場で求められるスピード感
この知識がITパスポート試験で問われる背景には、現代のビジネスにおけるタイムツーマーケット(製品を市場に投入するまでの時間)の重要性があります。
製品のライフサイクルが短くなっている現代では、どれだけ優れた製品であっても、開発に時間をかけすぎると市場に出したときにはすでに流行遅れになっているリスクがあります。また、並行して作業を進めるためには、部門間での円滑なコミュニケーションや、ITツールを活用した情報共有(設計データのリアルタイム共有など)が不可欠です。
この問題は、単に用語の意味を知っているかどうかだけでなく、組織全体で情報を共有し、効率的にプロジェクトを推進する現代的な開発スタイルの基本を理解しているかを問うています。
flowchart TD
subgraph Sequential["従来の手法(直列型)"]
S1["設計"] --> S2["試作"] --> S3["製造"]
end
subgraph Concurrent["コンカレントエンジニアリング(並行型)"]
C1["設計"]
C2["試作"]
C3["製造"]
C1 -.-> C2
C1 -.-> C3
C2 -.-> C3
direction LR
end