平成26年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問30 解説 情報システム戦略
情報システム戦略策定の主たる目的として,適切なものはどれか。
- ア 新たに構築する業務と情報システムに対する要件を明確にし,それを基に IT 化の範囲を決定してその具体的機能を明示する。
- イ 経営戦略に基づいた情報システム全体のあるべき姿を明確にして,組織としての情報システム全体の最適化方針を決定する。 ✓ 正答
- ウ 情報システム開発のために,組織として開発方法と管理方法を決定し,それらに基づいて開発と管理の標準手順を設定する。
- エ 対象とする業務の情報システム構築に関する要求事項を整理し,そのシステム化の方針と構築のための実施計画を作成する。
解説
情報システム戦略策定の判断ポイント
情報システム戦略とは、経営戦略を実現するためにITをどう活用するかを決める「組織の羅針盤」です。キーワードは「全体最適」と「経営戦略との連動」です。
選択肢を絞る際は、その活動が「組織の方向性を決める高いレイヤーの話か」それとも「具体的なシステム構築という低いレイヤーの話か」を見極めましょう。経営戦略という言葉が出てきたら、それが情報システム戦略の正解である可能性が非常に高いです。
なぜ「全体最適化の方針」が重要なのか
企業において、部署ごとにバラバラにシステムを導入すると、データが統合できず、保守コストも膨れ上がり、かえって業務効率が悪くなる「部分最適」の状態に陥ります。
これを防ぐのが情報システム戦略の役割です。具体的には、以下のような観点で組織全体のあるべき姿を描きます。
・経営課題を解決するために、ITでどの業務をどう変えるか ・複数のシステム間でデータをどう連携させるか(IT基盤の統一) ・将来のビジネスの変化に対応できる柔軟なアーキテクチャは何か
選択肢アやエは「個別システム」の要件定義や計画の話であり、戦略というよりも「戦術・実行」に近いレベルの内容です。選択肢ウは「開発プロセスの標準化」であり、これは情報システム戦略というよりは「開発管理」の範疇になります。これらはすべて、戦略で決めた全体最適の方針のもとで行われるべき下位の作業といえます。
実務における戦略の活用場面
この知識は、単なる試験対策にとどまらず、IT部門がビジネス部門と対話する際に必須となります。
たとえば、新しいアプリを作りたいという要望があったとき、情報システム戦略がないと、そのアプリがバラバラの技術で作られ、数年後に維持管理不能になるリスクがあります。戦略を理解している担当者であれば、「このアプリは全体のIT戦略(例:クラウドへの移行、データ利活用の統合など)と整合しているか?」という視点で、長期的視点に立ったアドバイスができるようになります。
経営層は「儲かるシステム」を求め、IT部門は「安定・最適化されたシステム」を目指します。その橋渡しをするのが、この戦略策定プロセスなのです。