平成26年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問63 解説 ソーシャルエンジニアリング
リスク対策のうち,ソーシャルエンジニアリングへの対策に該当するものはどれか。
- ア 電子メールは,メールサーバでウイルス検査をしてから配信する。
- イ 電力供給の停止に備えて,自家発電装置を設置する。
- ウ 電話で重要情報を伝達するときの方法を定めて,その手順に従って行う。 ✓ 正答
- エ 入荷物は,受取場所で危険物が含まれないことを検査してから使用場所へ移す。
解説
正解へのアプローチ
この問題は、ソーシャルエンジニアリングが「技術的手段」ではなく「人間の心理的な隙や物理的な行動」を突く攻撃手法であることを理解していれば解けます。選択肢の中で、人間の対話や伝達ルールに関連しているものを探すのがポイントです。
ソーシャルエンジニアリングの正体
ソーシャルエンジニアリングとは、コンピュータを直接ハッキングするのではなく、ゴミ箱から書類を盗み見たり、電話で管理者になりすましてパスワードを聞き出したり、肩越しに画面を覗き見たり(ショルダーハッキング)する行為を指します。
この攻撃には、システム的な防御ソフト(ウイルス対策ソフトなど)はあまり役に立ちません。なぜなら、攻撃対象が「システム」ではなく「人間」だからです。したがって、対策には「手順のルール化」「教育」「物理的な環境整備」といった、人間の行動を制限または管理する手法が必要になります。
なぜ他の選択肢は誤りなのか
各選択肢は、ソーシャルエンジニアリング以外のリスクに対する対策です。
アのウイルス検査は、マルウェア対策です。システムが自動で処理する部分であり、人間を騙すソーシャルエンジニアリングとは直接の関係がありません。
イの自家発電装置は、停電などの可用性確保(BCP)対策です。施設や設備の物理的なインフラに対するアプローチです。
エの危険物検査は、物理的なセキュリティ対策です。不審物や物理的な破壊工作に対するものであり、情報の窃取を目的としたソーシャルエンジニアリングとは文脈が異なります。
ウの「電話での伝達手順の策定」が正解である理由は、まさに電話という手段を通じた「なりすまし」や「情報の漏えい」を防ぐためのルール作りだからです。例えば、コールバック(一度電話を切って、登録済みの番号にかけ直す)を義務付けることで、相手が本当に本人であるかを確認できます。
ビジネス現場での活用
実際のIT現場やオフィスでは、この問題の知識は「情報セキュリティ規定」の運用として活かされます。
例えば、「電話でパスワードを聞かれても絶対に教えない」「知らない番号からの電話で重要情報を聞かれた場合は、上司に報告して一度切る」といったルールは、ソーシャルエンジニアリングを防ぐための非常に基本的な防衛策です。
ITパスポートの試験では、このように技術的な対策と、組織としての運用・ルールによる対策の両面からセキュリティを考える力が問われます。ソーシャルエンジニアリングという言葉が出てきたら、即座に「人間の心理」「物理的な隙」「ルールで縛る」というキーワードをセットで連想できるようにしておきましょう。