平成27年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問71 解説 無線LANの干渉対策
隣の部屋に他社が引っ越してきた頃から,自社の無線LANの通信速度が低下した。 原因を調査して,自社の無線LANの設定を変更することで,元の通信速度に戻った。 このときに変更した内容として,適切なものはどれか。ここで,自社のESSIDは,そ の引っ越してきた他社のものとは異なる文字列である。
- ア 暗号化のキー文字列を変更した。
- イ 暗号化の設定をWEPからWPA2に変更した。
- ウ ステルス機能を設定した。
- エ 無線チャネルを変更した。 ✓ 正答
解説
無線LANの干渉と解決の考え方
この問題は、無線LANの通信環境において発生する「電波干渉」というトラブルを解決する手法を問うています。
正解にたどり着くための判断基準は、無線LANの特性にあります。無線LAN(Wi-Fi)は決まった周波数帯をいくつかの「チャネル(チャンネル)」に分割して通信を行います。隣接する環境で同じチャネルを使用していると、電波が互いに干渉し合い、パケットの再送が発生して通信速度が著しく低下します。したがって、解決策としては「お互いの使用チャネルをずらす(変更する)」ことが最も効果的です。
無線LANにおけるチャネルの役割
無線LAN(特に2.4GHz帯)は、隣り合うアクセスポイントが同じチャネルを使用していると、お互いの通信をノイズとして捉えてしまい、通信効率が悪化します。これは、交通量の多い道路で隣の車線と車が混在して動けなくなる状況に似ています。
チャネルを変更するということは、使用する周波数の中心周波数をずらすことを意味します。これにより、他社の無線LAN環境と電波の衝突を避け、自社の通信経路を確保することができます。現在のWi-Fiルーターの多くは、周囲の電波状況を検知して空いているチャネルを自動選択する「オートチャネル設定」機能を備えていますが、この問題のように他社の引っ越しなどが原因で急激に混雑した場合には、手動で干渉の少ないチャネルを指定することが有効なトラブルシューティングとなります。
なぜ他の選択肢ではダメなのか
選択肢ア、イ、ウはいずれもセキュリティに関わる設定であり、通信速度の改善には直接結びつきません。
アの暗号化キーやイの暗号化方式(WEPやWPA2など)の変更は、通信の秘匿性を高めるためのものです。通信の安全性は向上しますが、電波干渉という物理的な障害を解決する手段にはなりません。
ウのステルス機能(SSIDを非表示にする機能)は、他者からネットワークを見えにくくする機能です。これは「接続しようとする第三者を減らす」ことには役立ちますが、既に同じ空間で発生している電波干渉を解消する効果はありません。
実務や日常生活への活用
この知識は、オフィスや自宅でのWi-Fi環境を整える際に非常に重要です。例えば、集合住宅などでWi-Fiが極端に遅いと感じた場合、PCやスマートフォンからWi-Fiアナライザーなどのツールを使用して、周囲でどのチャネルが使われているかを可視化できます。混雑しているチャネルを避けて、空いているチャネル(2.4GHz帯であれば1、6、11などの非干渉チャネルが推奨されます)を手動設定するだけで、通信速度が劇的に改善することがあります。ITパスポートで学ぶネットワークの基本知識は、このように身近なITトラブルの解決に直結します。