平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問98 解説 アンチパスバック方式
アンチパスバック方式はIDの状態を記録し,入室済みのIDでの再入室,退室済みのIDでの再退室を規制するものである。IDカードを用いた入退室管理システムを導入した部屋の利用制限について,アンチパスバック方式を導入することで実現できることはどれか。
- 定められた期間において,入退室回数が一定の回数を超えると入室できなくする。
- 他人の入室に合わせて,共連れで入室すると,自分のIDカードを使用しての退室をできなくする。 ✓ 正答
- 当日出社していない同僚から借りたIDカードを使用しての入室をできなくする。
- 入室してから一定時間経過すると退室できなくする。
解説
解法のポイント
アンチパスバック方式の最大の役割は、IDの現在の状態(入室中か退室中か)を常に監視することです。システム上の「入室済み」と「退室済み」のペアが正しく成立しているかをチェックするため、共連れ(テールゲーティング)によって、正当な入室手続きを通らずに中に入った場合、システム上のステータスは「退室済み」のままとなります。その結果、正規の退室手続きを行おうとしても「入室していないのに退室はできない」と判断され、エラーとなります。このロジックを見抜くことが正解への近道です。
アンチパスバック方式とは
アンチ(Anti)パスバック(Passback)という言葉は、直訳すると「通行証の受け渡しを防止する」という意味です。IDカードを入り口でかざして入室した後、そのカードを外にいる別の誰かに渡して、もう一度入室させる行為を防ぐために考え出された仕組みです。
システムは「入室」のログがあれば、次は必ず「退室」のログが来るはずだと待ち構えています。同様に「退室」のログの後には「入室」が来るはずだと認識します。この順序を守らない操作はすべて不正とみなされます。
なぜ共連れを防げるのか
セキュリティ対策における共連れ(テールゲーティング)とは、前の人の後ろに続いて、IDカードをかざさずに扉をすり抜けて入室する行為を指します。
アンチパスバックが有効な環境では、以下の事態が発生します。
- AさんがIDをかざして入室(システム上は「入室中」になる)
- 後ろにいたBさんが、Aさんの後に続いてカードをかざさずに入室(システム上、Bさんの状態は依然として「退室済み」のまま)
- 後ほど、Bさんが退室しようとしてIDをかざす
- システムは「Bさんは現在入室していない状態なので、退室処理は無効です」と判断する
このように、不正な入室を行った人物が、のちに正規のルートで退出しようとした際に足止めを食らうことで、結果的に共連れによる侵入が抑止されます。
活用の場と教育的意図
この問題は、単なる知識の暗記ではなく「物理セキュリティとシステムの論理的な結びつき」を理解しているかを問うものです。
実際にこの仕組みが活用されるのは、高い機密性を求められるデータセンターのサーバー室や、研究所の重要区画です。単に鍵をかけるだけでなく、誰がいつ入ったのか、そして現在誰が室内に残っているのかを正確に把握することで、万が一の事故や情報漏洩が発生した際の追跡能力を高めています。試験においても、物理的な制限とシステムの論理判断をセットで考える能力は、セキュリティ管理の基礎として非常に重要視されています。