平成28年度 春期 ITパスポート試験 問44 解説 リスク対応(転嫁)
システム開発プロジェクトにおけるリスク対応には,回避,転嫁,軽減,受容などがある。転嫁の事例として,適切なものはどれか。
- ア 財務的なリスクへの対応として保険を掛ける。 ✓ 正答
- イ スコープを縮小する。
- ウ より多くのテストを実施する。
- エ リスク発生時の対処に必要な予備費用を計上する。
解説
選択のポイント
リスク対応における「転嫁」とは、リスクの影響を第三者に移転し、自社の責任範囲から切り離すことを指します。選択肢の中から、問題の発生時や損失を他社(保険会社や委託先など)が肩代わりする仕組みを探すのが正解への近道です。
リスク対応の4つの手法
プロジェクト管理において、特定されたリスクに対してどのような方針をとるかは極めて重要です。出題される4つの手法を整理しましょう。
回避 リスクを引き起こす要因そのものを取り除くことです。例えば、リスクの高い技術の採用を中止したり、納期が現実的でないプロジェクトを断ったりするケースが該当します。
転嫁 リスクの影響を外部の第三者に移転することです。保険への加入や、専門的な業務を外部業者へ委託(アウトソーシング)することが代表的です。損失を自社だけで抱え込まず、外部の力を借りて補填・補償してもらう考え方です。
軽減 リスクの発生確率を下げる、あるいは発生した際の影響度を小さくすることです。開発期間を延ばして余裕を持たせる、テスト工程を増やして欠陥を早期発見する、といった対策がこれにあたります。
受容 発生頻度が低い、または影響が小さいと判断し、特に対策を打たずリスクを受け入れることです。ただし、いざという時のために予備費を計上しておくなどの準備を伴う場合もあります。
実務における活用の考え方
この知識は、プロジェクトマネージャーやリーダーとして、予算と品質、そして期間のバランスを最適化する際に不可欠です。
例えば、新しいサーバーの導入プロジェクトにおいて、もし機器の故障リスクが経営に大きな打撃を与えるなら「保険への加入(転嫁)」を検討します。一方で、操作ミスによる障害が心配であれば「教育訓練による予防(軽減)」を選びます。すべてのリスクに対してコストをかけて完全に対策することは不可能であるため、上記4つの選択肢を組み合わせて、最も効率的にプロジェクトを守る判断力が求められています。
各選択肢の分析
ア:保険という第三者にリスクを移転しているため「転嫁」です。 イ:スコープを縮小してリスク要因自体を回避しているため「回避」にあたります。 ウ:テストを重ねて品質を確保し、影響を抑えているため「軽減」にあたります。 エ:リスクが発生した場合に備えておく(発生自体は受け入れる)ため「受容」の側面が強い対応です。