平成28年度 春期 ITパスポート試験 問55 解説 機能要件と非機能要件
情報システムの要件は,業務要件を実現するための機能を記述した機能要件と,性能や保守のしやすさなどについて記述した非機能要件に分類することができる。 機能要件に該当するものはどれか。
- システムが取り扱う入出力データの種類 ✓ 正答
- システム障害発生時の許容復旧時間
- システムの移行手順
- 目標とするシステムの品質と開発コスト
解説
要件定義の分類で見抜く解き方
この問題の正解を導くための鍵は、機能要件と非機能要件の定義を「システムが何をするか(機能)」か「システムがどうあるべきか(性能や品質)」かで区別することです。
機能要件は、システムが具体的にどのような業務処理を行うか、つまり画面や帳票で何を表示し、どのようなデータを計算して保存するかを指します。一方、非機能要件は、システムの安定性、速度、セキュリティといった土台の部分を指します。
選択肢の中で「入出力データの種類」は、システムが業務を遂行するために必要な機能そのものを示しているため、これが機能要件となります。
機能要件:システムの「やることリスト」
機能要件とは、一言でいえばシステムに対する「やりたいこと」です。利用者がシステムを使ってどのような仕事(業務)を完結させたいかを定義します。
具体例として以下のようなものが挙げられます。 ・在庫管理画面で商品の入荷・出荷を入力できること ・売上データを月単位で集計してレポートとして出力できること ・会員登録時にパスワードの複雑性をチェックする機能
システム開発の現場では、これらが整理されていないと、「本来できるはずだった計算ができない」「必要な項目が画面から入力できない」といった、業務そのものが回らなくなるトラブルにつながります。
非機能要件:システムの「品質・環境リスト」
非機能要件は、システムが正しく動くための「制約条件」や「品質目標」です。たとえ全ての機能が実装されていたとしても、これらが満たされていなければ、使い物にならないシステムになってしまいます。
選択肢にあった内容を整理すると、以下のようになります。 ・システム障害発生時の許容復旧時間:可用性に関わるため非機能要件 ・システムの移行手順:運用・保守に関わるため非機能要件 ・目標とするシステムの品質と開発コスト:品質計画・管理のため非機能要件
これらは、利用者が直接操作する機能ではありませんが、システムを安心して使い続けるためには欠かせない要素です。例えば、どれだけ便利な計算機能があっても、処理に1時間かかったり、頻繁に停止してデータが消えてしまったりすれば、そのシステムは役に立ちません。
現場でこの知識はどう使われるか
ITパスポート試験でこの知識を問う意図は、将来皆さんがシステム開発のプロジェクトに参加した際、要件定義の段階で「何を議論すべきか」を正しく仕分けられるようにするためです。
実務において、機能要件は画面設計書や業務フロー図に落とし込まれます。一方で、非機能要件はインフラ構成図やサービスレベル合意書(SLA)に盛り込まれます。この二つを混同して議論を進めると、設計の段階で手戻りが発生し、コストや期間が大幅に膨らむ原因となります。機能と非機能を分けて考える習慣は、プロジェクトの炎上を防ぐための重要なスキルです。