平成29年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問43 解説 プロジェクトの品質管理
ある企業におけるシステム開発プロジェクトの進捗に遅れが出始めている。遅れ を解消させるために,プロジェクトリーダが,計画されていた作業手順の一部につ いて省略することをプロジェクトメンバに提案した。プロジェクトメンバの意見は, やむを得ないという意見と品質が低下するので反対という意見に分かれた。プロジ ェクトの品質確保の観点から,プロジェクトリーダとして採るべき対応のうち,最 も適切なものはどれか。
- ア 品質低下に対する具体的な対策をプロジェクト内で検討して,プロジェクトとしての合意を形成する。 ✓ 正答
- イ プロジェクトメンバの中のスキルが高い人の多数決によって提案の採否を決定する。
- ウ プロジェクトリーダが一番経験豊富なので,プロジェクトリーダの提案を採用する。
- エ プロジェクトリーダの提案に賛同できないプロジェクトメンバを交替させる。
解説
この問題の判断根拠は、プロジェクトマネジメントにおいて品質、コスト、納期という制約条件のバランスをどう保つかという視点にあります。単に手順を省略して進捗を優先することは品質低下のリスクに直結するため、リスクを可視化した上でチーム全体が納得できる代替案や対策を合意形成することが、プロジェクトを成功させるための適切な管理手法です。
プロジェクトマネジメントでは、品質、コスト、納期の3要素をトリプル制約と呼びます。これらは互いに影響し合っており、例えば納期を守るために作業期間を短縮すれば、コストが増加したり品質が低下したりするトレードオフの関係にあります。本問では納期(進捗)を守るための手段として作業の省略が提案されましたが、品質に対する懸念がメンバーから出ているため、ただちに方針を決定するのではなく、品質への影響を最小限にするための代替案を検討する必要があります。
選択肢イ、ウ、エのような独断や多数決、あるいはメンバー交代といった手法は、品質保証の観点が欠落しているか、組織的な合意形成を阻害する行為です。これでは後になって手戻りが発生したり、メンバーのモチベーションが低下したりして、かえってプロジェクトの失敗を招くリスクが高まります。
ITパスポート試験では、こうしたマネジメントに関する問題において、以下のキーワードが頻出します。
コンセンサス(合意形成):メンバー間の意見の相違を調整し、全員が納得できる解決策を導き出すこと。 リスク管理:問題が発生する前に影響を予測し、あらかじめ対策を立てておくこと。 ステークホルダー:プロジェクトに関わる全ての関係者のこと。リーダは彼らと適切にコミュニケーションを取ることが求められます。
実際のプロジェクト現場では、単にスケジュールが遅れているからといって作業を減らすのではなく、優先度の低いタスクを後回しにする、タスクを並行作業可能にするなど、品質を維持したまま期間を短縮するための現実的な手法が検討されます。試験問題においては「強権的な決定」や「非科学的な判断(多数決など)」は誤りであり、「リスクを評価し、関係者間で調整・合意する」選択肢が正解になるケースが非常に多いです。
- プロジェクトマネジメントの基礎知識(PMI日本支部)