令和7年度 ITパスポート試験 公開問題 問20 解説 企画プロセスの情報収集
ソフトウェアライフサイクルを企画プロセス,要件定義プロセス,開発プロセス, 保守プロセスに分けたとき,企画プロセスのシステム化構想の立案時にベンダー企 業から収集する情報として,最も適切なものはどれか。
- ア システム化計画に基づいた開発コストの見積り
- イ システム化する業務の分野に関する情報技術動向 ✓ 正答
- ウ システム構築を進めるに当たっての発注元企業の役割
- エ ベンダー企業の技術者が保有している技術資格
解説
企画プロセスという立ち位置を見極める
この問題の正解を導く鍵は、ライフサイクルの中で「企画プロセス」がどの位置にあるかを正しく理解することです。
企画プロセスは、システム開発の最も上流にあたります。この段階では「どのようなシステムを作るか」という具体的な設計図はまだ存在しません。したがって、見積りや役割分担といった「契約の細部」を詰める段階ではなく、ITを使って経営課題や業務課題をどのように解決できるかという「実現可能性や手法」を探る段階です。この判断基準に基づけば、選択肢の中で技術的な方向性を模索する内容である「イ」が唯一の正解となります。
ソフトウェアライフサイクルと各プロセスの役割
ソフトウェアライフサイクルプロセス(SLCP)は、システムを構想してから廃棄するまでの流れを定義したものです。
・企画プロセス:システムを作る目的や目標を明確にする段階です。経営目標とITをどう結びつけるか、投資対効果はどれくらいあるかなどを検討します。 ・要件定義プロセス:システムに「何をしてほしいか」という機能を具体的に決定する段階です。 ・開発プロセス:決定した要件に基づき、設計・製造・テストを行う段階です。 ・保守プロセス:システムを稼働させた後、維持管理や機能追加を行う段階です。
今回の問題で重要なのは、企画プロセスでは「外部の専門家であるベンダー」を「情報の提供者」として活用する点です。「自社で抱える課題に対して、市場ではどのようなIT技術が主流か」「他社はどういった技術で課題を解決しているか」といった、専門的な動向情報を仕入れることで、現実的かつ競争力のあるシステム構想を練ることができます。
なぜ他の選択肢は不適切なのか
選択肢ア、ウ、エは、いずれも「企画が固まった後」や「開発のパートナーを決める際」に必要な情報です。
・ア(開発コストの見積り):これは具体的な要件や規模が決まらないと算出できません。企画段階で詳細な見積りを求めても、精度が低く、あまり意味をなしません。 ・ウ(発注元企業の役割):これは契約の締結やプロジェクトの体制図を作成する際に必要な情報であり、構想を練る段階よりも後の「契約交渉」の領域です。 ・エ(ベンダー企業の技術資格):ベンダーの選定(ベンダー・ベネフィットの評価)には役立ちますが、自社のビジネス課題を解決するための「技術トレンドの調査」とは目的が異なります。
実務においては、企画段階でベンダーを「単なる業者」としてではなく「知見を持ったアドバイザー」として捉え、客観的な技術情報を提供してもらうことが、失敗しないシステム投資への第一歩となります。