令和7年度 ITパスポート試験 公開問題 問80 解説 基盤モデル
AIにおいて,広範囲かつ大量のデータで訓練されたものであり,ファインチュー ニングなどによって文章生成AIのような様々な用途に適応できる特徴をもつものを 何というか。
- ア アノテーション
- イ エキスパートシステム
- ウ 基盤モデル ✓ 正答
- エ 畳み込みニューラルネットワーク
解説
「広範囲かつ大量のデータで訓練され、ファインチューニングによって文章生成AIのような多様な用途に適応できるAIモデル」という説明は、まさに近年のAI分野で注目されている「基盤モデル」の定義そのものです。したがって、ウが正解となります。
基盤モデルとは何か
基盤モデル(Foundation Model)とは、その名の通り、様々なAIアプリケーションの「基盤」となることを目指して設計された大規模なAIモデルです。この概念は、2021年にスタンフォード大学の研究者たちによって提唱され、以降、生成AI(Generative AI)ブームの核心的な技術として急速に発展しています。
主な特徴は以下の通りです。
- 広範囲かつ大量のデータで事前訓練: 基盤モデルは、インターネット上の膨大なテキスト、画像、音声データなど、多様な種類のデータを学習しています。この事前学習によって、モデルは言語の構造、世界の常識、様々な概念といった汎用的な知識を幅広く、かつ深く習得します。
- 汎用性と適応性: 事前学習によって得られた汎用的な知識は、そのままでは特定のタスクに特化していません。しかし、少量のデータを使って追加で学習させる「ファインチューニング(微調整)」を行うことで、特定の用途(例:文章の要約、翻訳、質問応答、コード生成、画像生成など)に高い精度で適応できるようになります。これは、ゼロからモデルを訓練するよりもはるかに効率的であり、限られたデータや計算リソースでも高性能なAIを開発できるというメリットがあります。
- トランスファー学習: 基盤モデルのファインチューニングによる適応は、特定のタスクで学習した知識を他のタスクに応用する「トランスファー学習(転移学習)」という考え方に基づいています。
特に、ChatGPTに代表される大規模言語モデル(LLM)は、この基盤モデルの一種であり、現代AIの中核をなす技術となっています。
他の選択肢について
AI技術の全体像を理解するために、他の選択肢も確認しておきましょう。
- ア アノテーション: AIの学習に必要な教師データを作成する作業です。例えば、画像に「猫」や「犬」といったラベルをつけたり、文章中の固有名詞や感情を特定するといった、人間がデータに意味付けを行う作業を指します。AIモデルそのものではありませんが、特に教師あり学習において、AI開発には欠かせない重要な前処理工程です。
- イ エキスパートシステム: 1980年代に盛んに研究されたAIの一種で、特定の専門分野の知識を「もし~ならば、~である」といったルール形式(プロダクションルール)で記述し、そのルールに基づいて推論を行うシステムです。人間の専門家が持つ知識を模倣することを目指しましたが、知識の獲得やルールのメンテナンスが難しいという課題があり、現在の機械学習や深層学習とは異なるアプローチのAIです。
- エ 畳み込みニューラルネットワーク(CNN): ディープラーニング(深層学習)の一種で、主に画像認識や画像処理の分野で優れた性能を発揮します。画像の特徴を効率的に捉える「畳み込み層」と「プーリング層」を持つことが特徴で、手書き数字の認識や顔認識などで広く活用されています。汎用的なAIモデルの一つではありますが、問題文にある「広範囲かつ大量のデータで訓練され、ファインチューニングで文章生成AIのような様々な用途に適応できる」という説明が直接的に指すのは、CNNよりも基盤モデル(特にTransformerベースの大規模言語モデル)の方がより適切です。
この問題の教育的意図
この問題は、AI技術が急速に進歩する中で、特に「生成AI(Generative AI)」を支える中核技術である「基盤モデル」について、その特徴と役割を正しく理解しているかを確認する意図があります。ITパスポート試験の受験生として、最新のAIトレンド、特に現代社会に大きな影響を与えている生成AIの背景にある技術概念を把握しておくことは非常に重要です。基盤モデルの登場によって、AI開発のアプローチや応用の可能性が大きく広がっていることを理解しておきましょう。