令和8年度 ITパスポート試験 公開問題 問41 解説 ITガバナンスとリーダーシップ
IT ガバナンスの活動において,取締役会等のリーダーシップに関するリスクの記述として,最も適切なものはどれか。
- ア 権限委譲して策定させた成果物である IT 戦略は,担当部門に最終的な責任をもたせないと,取締役会等の説明責任が果たせない。
- イ 組織体としてのパフォーマンスの期待値は,取締役会等が設定に関与すると,現状踏襲型となり組織体の目的を達成できない。
- ウ 取締役会等が規範を策定し,率先して遵守しないと,組織体にその倫理的な行動が徹底されない。 ✓ 正答
- エ 取締役会等が組織体の IT ガバナンス方針を明示すると,情報システム部門主導の活動に偏重してしまう。
解説
正解の判断根拠
ITガバナンスにおける取締役会(経営陣)の役割は、単なる方針の指示出しにとどまりません。組織のトップが自ら倫理観や規範を示し、それを率先して実行する姿を見せることで、初めて全社的なガバナンスが機能するという「率先垂範(そっせんすいはん)」の原則が問われています。選択肢ウの内容が、ガバナンスの根幹である「組織的な倫理観の浸透」を正しく説明しているため、これが正解となります。
ITガバナンスにおける経営陣の責任とは
ITガバナンスとは、組織の目的を達成するために、ITをどのように活用・管理すべきかを定めた体制のことです。この体制において、取締役会などのリーダー層には以下の役割が求められます。
・戦略的方向性の提示 ・IT活用のための組織体制の整備 ・リスク管理の枠組みづくり ・企業倫理の浸透
経営陣が戦略を立てて現場に任せきりにしたり、あるいは自らは行動せずに口先だけで指示を出したりする状況では、ガバナンスは空洞化します。特に倫理的な行動は、ルールブックに書かれているだけでは現場には浸透しません。上層部がその規範を日常的に尊重し、模範を示すことで、従業員はその重要性を理解し、自発的に遵守するようになります。
なぜ他の選択肢は誤りなのか
アの選択肢:権限委譲をした場合でも、最終的な意思決定の責任は取締役会に残ります。説明責任を現場に押し付けることはできず、むしろ経営層が全体的な責任を負う必要があります。
イの選択肢:取締役会がパフォーマンスの期待値に関与することは、組織の目標達成のために不可欠なプロセスです。経営陣の関与が現状踏襲型を招くという指摘は、ガバナンスの本来の目的(価値の最大化とリスクの最適化)と矛盾します。
エの選択肢:ITガバナンス方針を経営陣が明示することで、情報システム部門だけが孤立するのではなく、組織全体でITを利活用できる環境が整います。これを「部門主導への偏重」と捉えるのは誤りです。
経営実務における重要性
この問題は、ITを単なるツールとしてではなく「経営のエンジン」として捉えるための視点を養うことを目的としています。現代のビジネスでは、ITなしでの経営は不可能です。情報漏えいや不正アクセスなどの重大なトラブルが発生した際、現場の技術的な対策はもちろん重要ですが、それ以前に「経営陣がどのような倫理基準でITと向き合っていたか」が社会的評価を大きく左右します。
ITパスポート試験でこのテーマが出題される背景には、将来のビジネスパーソンとして、ITガバナンスを経営の一部として意識できる人材を育成したいという意図があります。