令和8年度 ITパスポート試験 公開問題 問48 解説 ITサービスマネジメント
ある組織では,IT資産を管理しているグループが,共有ディスクの使用量を月次でチェックし,容量が不足しそうなときは,不要なファイルを消すよう呼び掛けたり,すぐに使わないファイルを別のメディアに退避したりして,容量が不足することを回避する対応を行っている。共有ディスクの増設の対応は,年単位で計画して実施している。ある日,共有ディスクの使用量が上限に達し,組織の業務に支障が出る事象が発生した。この事象への対応を,インシデント管理,問題管理,サービスマネジメントシステムの改善に分けて考えるとき,サービスマネジメントシステムの改善として,適切なものだけを全て挙げたものはどれか。 a 共有ディスクの使用量が大きいファイルを調べ,当面の業務に使用しないものを一時的に別のストレージに移動する。 b 共有ディスクの使用量が上限に達した原因を特定し,再発防止策を検討する。 c 共有ディスクの使用量をタイムリーに把握し,容量不足の兆候を早期に検知できるようにする。 d すぐに共有ディスクの増設の手続を進める。
- a, d
- b, d
- c ✓ 正答
- c, d
解説
この問題は、ITサービスマネジメントにおける「インシデント管理」「問題管理」「改善(継続的改善)」の役割分担を理解しているかを問うものです。
正解にたどり着くための判断基準は、そのアクションが「目の前のトラブルを解決すること」なのか、「仕組みそのものを良くすること」なのかを区別することです。
各アクションの役割分担
今回の事象を整理すると、それぞれの選択肢は以下のプロセスに分類できます。
a 共有ディスクの使用量が大きいファイルを調べ、当面の業務に使用しないものを一時的に別のストレージに移動する これは「インシデント管理」です。業務への支障を最短時間で取り除き、サービスを復旧させるための応急処置にあたります。
b 共有ディスクの使用量が上限に達した原因を特定し、再発防止策を検討する これは「問題管理」です。なぜ容量不足が起きたのかという根本原因を調査し、恒久的な解決策を導き出す活動です。
c 共有ディスクの使用量をタイムリーに把握し、容量不足の兆候を早期に検知できるようにする これが「サービスマネジメントシステムの改善」です。これまでの「月次チェック」という運用プロセスを見直し、より監視体制を強化することで、将来的なインシデント発生を未然に防ぐための仕組みづくりを行っています。
d すぐに共有ディスクの増設の手続を進める これは「変更管理」や「インシデント管理」に伴う実行作業です。サービスを正常な状態に戻すための物理的な手段であって、マネジメントの仕組みを改善しているわけではありません。
なぜこれが重要な知識なのか
ITパスポート試験でサービスマネジメントが問われる背景には、実際の現場で「対症療法」を繰り返して疲弊する組織を減らしたいという意図があります。
多くの現場では、トラブルが発生するたびにその場しのぎの対応(インシデント管理)に追われ、根本的な原因追及(問題管理)や、そもそもトラブルが起きにくい環境への整備(改善)がおろそかになりがちです。試験を通じて、単に「復旧させること」だけでなく、「次は起きないように管理の仕組み自体をどう見直すべきか」という視点を持つことが、ITエンジニアや管理職として不可欠なスキルであると学べます。
例えば、クラウドサービスの利用管理やセキュリティ対策など、現代のIT業務においても「検知→復旧→恒久対策→プロセス改善」というサイクルを意識することが、安定したサービス提供への近道となります。