第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(法規 No.3) 問9 解説 非常通信の報告
無線局の免許人は、非常通信を行ったときは、どうしなければならないか。次のうちから選べ。
- 1 総務省令で定める手続により、総務大臣に報告する。 ✓ 正答
- 2 その通信の記録を作成し、1年間これを保存する。
- 3 地方防災会議会長にその旨を通知する。
- 4 非常災害対策本部長に届け出る。
解説
非常通信を行った際の義務について問うこの問題は、電波法に規定されている「非常通信の事後手続き」を正確に覚えているかで合否が分かれます。
この問題は、非常時の特例として電波を運用した後は、国の電波管理の最高責任者である総務大臣に対して報告を行う義務がある、という電波法の基本原則を理解していれば、迷わず選択肢1の「総務省令で定める手続により、総務大臣に報告する」を選ぶことができます。
非常通信の定義と事後報告の義務
電波法第74条第1項において、地震、台風、洪水、津波、火災、暴動など、非常事態が発生した、または発生するおそれがある場合には、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保、秩序の維持のために「非常通信」を行うことができると定められています。
非常通信は、本来その無線局に許可されている通信の目的や相手方、通信事項の制限を超えて、緊急かつ特例的に行うことができます。このように極めて強い権限が与えられている半面、無秩序な電波の混乱を防ぎ、事後にその通信が本当に適切であったかを国が検証する必要があります。
そのため、電波法施行規則第42条に基づき、非常通信を行った無線局の免許人は、速やかに以下の内容を盛り込んだ書面などによって、総務大臣に報告しなければなりません。
- 非常通信を行った日時および場所
- 非常通信を行うに至った理由
- 通信の相手方
- 通信の要旨と送信した電波の数
合否を分ける選択肢の絞り込み方
無線従事者試験の法規科目において、手続きの相手方や報告先を問う問題は頻出です。以下の視点を持つことで、紛らわしい選択肢を確実に排除できます。
管轄官庁への報告という原則
日本の電波行政を一手に担っているのは総務省です。電波法における重大な義務や特例措置の報告先は、原則として「総務大臣(または総合通信局長)」となります。選択肢3の「地方防災会議会長」や選択肢4の「非常災害対策本部長」は、災害対策基本法などに関連する組織であり、電波法に基づく義務の報告先としては誤りです。
記録の保存義務との混同を避ける
選択肢2の「記録を作成し、1年間保存する」は、無線業務日誌の記載ルール(一部の無線局に義務付けられている通信記録の保存期間)に似せた引っ掛けです。非常通信を行った場合の最優先義務は、手元での記録保存ではなく、国(総務大臣)への速やかな報告です。
災害時における無線技術者の役割と制度の意図
この問題が試験に出題される背景には、無線従事者が有事の際に果たすべき社会的な責任を自覚させるという教育的な意図があります。
第三級陸上特殊無線技士が扱う無線設備には、自治体の防災行政無線や、鉄道、道路、電力などのライフラインを支える業務用無線が含まれます。大規模な災害が発生し、携帯電話網や一般の公衆回線が途絶した局面において、これらの専用無線を用いた非常通信は、人命救助や被害拡大防止の最後の砦となります。
電波法が「非常通信を認める一方で、事後の報告を厳格に義務付けている」のは、人命を救うための超法規的な通信を認めつつも、事後にその妥当性を確認することで、電波秩序が不当に乱されるのを防ぐためです。技術者として、特例を利用する権利と、その責任としての報告義務をセットで理解しておくことが実務でも強く求められます。