第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.1) 問14 解説 半導体の温度特性
半導体を用いた電子部品の温度が上昇すると、一般にその部品の動作にどのような変化が起きるか。次のうちから選べ。
- 1. 半導体の抵抗が増加し、電流が減少する。
- 2. 半導体の抵抗が増加し、電流が増加する。
- 3. 半導体の抵抗が減少し、電流が減少する。
- 4. 半導体の抵抗が減少し、電流が増加する。 ✓ 正答
解説
半導体は温度が上がると、電気を通しやすくなる(抵抗が減少する)という特有の性質を持っています。電気を通しやすくなるため、同じ電圧がかかっていれば流れる電流は増加します。したがって、正解は「4. 半導体の抵抗が減少し、電流が増加する。」となります。
金属と半導体で異なる温度と抵抗の関係
一般に、銅やアルミニウムなどの金属(導体)は、温度が上がると電気抵抗が増加します。これは、温度上昇によって金属内部の原子の熱振動が激しくなり、電気を運ぶ電子の移動を邪魔してしまうためです。
しかし、シリコンなどに代表される半導体は全く逆の挙動を示します。半導体は、温度が低い状態では電子が原子の結合に強く縛られており、電気を運ぶためのキャリア(自由電子や正孔)がほとんど存在しません。そのため、低温時の半導体は電気をほとんど通しません。
ここに熱が加わり温度が上昇すると、熱エネルギーによって結合が破られ、自由に動けるキャリアが次々と生み出されます。温度が上がることによるキャリアの増加スピードは、原子の熱振動による邪魔をはるかに上回るため、結果として「温度が上がると、電気抵抗が急激に下がる(電気を通しやすくなる)」という現象が起きます。このように、温度が上がると抵抗が下がる性質を、負の温度係数を持つと表現します。
選択肢を論理的に絞り込むステップ
本番の試験で迷わずに正解を選ぶためには、以下の2つのステップで順番に思考を組み立てます。
1. 半導体の抵抗変化を思い出す
まず、半導体は熱に反応して抵抗が下がる物質であるという基本特性を思い出します。「温度上昇=抵抗減少」です。この知識だけで、選択肢は「3」か「4」の二択に絞られます。
2. オームの法則から電流の動きを導く
次に、抵抗が変わったときに電流がどうなるかを考えます。オームの法則(電流 = 電圧 ÷ 抵抗)の関係から、電圧が一定であれば、抵抗が小さくなるほど電流はたくさん流れるようになります。 抵抗が減少する(電気が通りやすくなる)のだから、電流は増加する、と結びつけることで、選択肢「4」を迷わず選ぶことができます。
無線機器における熱管理の重要性と出題意図
この問題が無線従事者の試験で出題される背景には、無線機器の安全な運用と保守において、半導体の熱特性を理解しておくことが極めて重要だからです。
半導体に電流が流れると、ジュール熱によって半導体自体が発熱します。発熱すると温度が上がり、抵抗が下がります。抵抗が下がるとさらに多くの電流が流れ、その電流によってさらに激しく発熱する、という悪循環に陥ることがあります。これを「熱暴走(サーマルランナウェイ)」と呼びます。熱暴走を放置すると、トランジスタなどの部品が許容温度を超えて破損し、最悪の場合は発火や機器の故障につながります。
無線送信機などは特に大きな電力を扱うため、半導体部品の温度管理(ヒートシンクによる放熱や冷却ファンの設置)が欠かせません。この問題は、無線機器の心臓部である半導体素子を取り扱う上での物理的な大原則を理解しているかを問う、非常に実用的かつ重要な教育的意図を持っています。