第二級陸上特殊無線技士 試験問題例題(無線工学 No.2) 問14 解説 トランジスタの電流
図のようなトランジスタに流れる電流の性質で、誤っているのはどれか。次のうちから選べ。
- 1. ICはIBによって大きく変化する。
- 2. IBはVBEによって大きく変化する。
- 3. IEはICとIBの和である。
- 4. ICはIBよりも小さい。 ✓ 正答
解説
トランジスタの最も重要な特性である電流増幅作用(小さな電流で大きな電流をコントロールする性質)を理解していれば、コレクタ電流ICはベース電流IBよりもはるかに大きくなるため、選択肢4が誤りであるとすぐに判断できます。
トランジスタを流れる電流の基本ルール
トランジスタは、ベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E)という3つの端子を持つ半導体素子です。この素子に流れる電流には、2つの重要なルールがあります。
1つ目は、電流の足し算のルールです。 ベースから流れ込む電流をベース電流IB、コレクタから流れ込む電流をコレクタ電流IC、そしてこれらが合流してエミッタから流れ出る電流をエミッタ電流IEと呼びます。 問題の図に描かれている矢印の向きを見ると、ベースから入るIBと、コレクタから入るICが合流して、エミッタからIEとして出ていくことが視覚的にもわかります。したがって、次の関係式が成り立ちます。
IE = IC + IB
これが選択肢3の「IEはICとIBの和である」の根拠であり、この記述は正しい性質を示しています。
2つ目は、電流を大きくする増幅のルールです。 トランジスタの最大の特長は、小さなベース電流IBで、その何十倍から何百倍もの大きさのコレクタ電流ICをコントロールできる点にあります。この比率を直流電流増幅率(hFE)と呼び、次のような関係式で表されます。
IC = hFE * IB
一般的に、hFEの値は数十から数百程度です。例えばhFEが100の場合、ベースに1ミリアンペアの電流を流すと、コレクタには100ミリアンペアの電流が流れます。 つまり、コレクタ電流ICはベース電流IBよりもはるかに大きくなるのが正しい特性です。したがって、選択肢4の「ICはIBよりも小さい」という記述は真逆であり、これが誤りとなります。
各選択肢の動作特性を詳しく読み解く
試験で問われる他の選択肢についても、トランジスタの基本的な動作原理からその正しさを説明できます。
コレクタ電流とベース電流の関係(選択肢1)
トランジスタは、水道の蛇口のような働きをします。ベース電流IBが蛇口をひねる力であり、コレクタ電流ICがパイプを流れる水の量です。 蛇口を少し動かす(IBを少し変化させる)だけで、流れる水の量(IC)はそれに応じて大きく変化します。この特性を「ICはIBによって大きく変化する」と表現しており、選択肢1は正しい記述です。
ベース電圧とベース電流の関係(選択肢2)
トランジスタのベースとエミッタの間(VBE)は、ダイオードと同じ性質(PN接合)を持っています。 ダイオードは、一定の電圧(シリコントランジスタでは約0.7ボルト)を超えるまでは電流がほとんど流れませんが、その電圧を超えると、電圧のわずかな上昇に対して、流れる電流が急激に増加する特性を持っています。 したがって、ベース・エミッタ間電圧VBEをわずかに変化させるだけで、ベース電流IBは大きく変化します。選択肢2の「IBはVBEによって大きく変化する」も正しい記述です。
無線技術におけるトランジスタの役割と出題意図
この問題は、無線通信機器の心臓部である増幅回路やスイッチング回路の基本原理を理解しているかを問うために出題されています。
無線機が空中からアンテナで受信する電波は、極めて微弱なエネルギーしかありません。そのままではスピーカーを鳴らすことも、デジタルデータを処理することもできません。 そこで、このトランジスタの電流増幅作用を利用します。受信した微弱な信号の電圧変化をベース(VBE)に加えることでベース電流(IB)を変化させ、それによってコレクタ側(IC)に接続された電源から、元の信号の形を保ったまま何倍にも大きくした電流の変化を取り出します。
このように、小さな信号を実用的な強さの信号に大きくする増幅のプロセスは、トランジスタが「小さな入力電流(IB)で、大きな出力電流(IC)を支配する」という関係性によって成り立っています。この基本的な大小関係を正しくイメージできているかどうかが、陸上特殊無線技士として電子回路を理解する上での重要な土台となります。