令和7年度 下期 学科試験 問21 解説 AISの概要
次の記述は、船舶に搭載する船舶自動識別装置(AIS)の概要について述べたものである。[ ] 内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。 AISを搭載した船舶は、識別信号(船名)、位置、針路、船速などの情報を [ A ] 帯の電波を使って自動的に送信する。また、AISにより受信される他の船舶の位置情報は、自船からの [ B ] としてAISの表示器に表示することができる。
- 1. 短波(HF), 12個の輝点列
- 2. 超短波(VHF), 方位、距離 ✓ 正答
- 3. 短波(HF), 12個の輝点列
- 4. 短波(HF), 方位、距離
解説
この問題は、船舶自動識別装置(AIS)で使用する周波数帯と、その機能がどのような形式で出力されるかを問うものです。AISの基本機能として「VHF帯を使用すること」と「他船の位置を方位と距離で把握できること」をセットで記憶していれば、迷わず選択肢2を選ぶことができます。
AISが通信に使う電波の周波数帯
AISは、船舶同士や陸上局との間でリアルタイムに情報を交換するための装置です。この通信には、短波(HF)ではなく、より安定した近距離通信に適した超短波(VHF)帯の周波数(国際VHFの161.975MHzおよび162.025MHz)が使用されます。
この周波数帯の特性により、船舶は数十分の1秒という短い間隔で情報を更新し合うことが可能です。短波(HF)が地球規模の長距離通信に使われるのに対し、AISがVHFを用いるのは、視界が悪い状況や他船との接近時に、確実かつ最新の情報を交換する必要があるからです。
画面に表示される情報と航海支援
AISの表示器やレーダー画面上では、受信した他船のデータが単なる数字の羅列ではなく、視覚的に分かりやすい情報として変換されます。AISが算出する他船の位置情報は、自船を基準とした「方位」と「距離」としてディスプレイにマッピングされます。
これにより、航海士は自船と他船の相対的な位置関係を直感的に把握できます。レーダーによる映像とAISのデジタルデータを重ね合わせることで、相手船がどの方向にどのくらいの距離で存在し、どのような針路と速度で動いているのかを瞬時に読み取ることが可能になります。
安全航海のための自動システム
この問題が意図しているのは、AISが単なる通信機ではなく、航海支援システムとしての役割を担っていることを理解させることです。
かつては視覚(目視)やレーダーのみに頼っていた他船の把握ですが、AISの登場によって、船名、針路、船速、目的港といった詳細情報を自動的に受信できるようになりました。特に霧の中や夜間など、視界が著しく制限される環境下において、このシステムは衝突事故を未然に防ぐための重要な判断材料となります。「VHFを使う」という技術的制約と、「方位・距離として表示する」というユーザーインターフェースとしての利便性は、現代の海上交通ルールや安全管理の基盤となる知識です。