令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問30 解説 問3 問3
問3 ガスタービン発電と汽力発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電方式を,同一出力の汽力発電方式と比較した記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 熱効率が高い。
- (2) 起動・停止時間が短い。
- (3) 蒸気タービンの出力分担が小さいので,復水器の冷却水量が少ない。
- (4) 最大出力が外気温度の影響を受けやすい。
- (5) 大型所内補機が多いので,所内率が大きい。 ✓ 正答
解説
ガスタービン発電と汽力発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電方式は、蒸気タービン側の出力割合が小さく、ボイラ用の大型通風機などの大容量補助機械(所内補機)を減らせるため、発電所全体で消費する電力の割合である所内率が汽力発電方式よりも小さくなり、選択肢(5)の記述が誤り(正答)となります。
コンバインドサイクル発電の動作原理と所内率
コンバインドサイクル発電は、ガスタービン発電(ブレイトンサイクル)と汽力発電(ランキンサイクル)を組み合わせた複合発電方式です。
熱機関が熱を仕事に変換する際の効率は、熱力学第二法則に基づき、動作流体の最高温度と最低温度の差が大きいほど高くなります。単体のガスタービン発電では、1100℃から1600℃以上の超高温ガスでタービンを回すことができますが、排ガスの温度も500℃から600℃と非常に高く、この排熱をそのまま捨ててしまうため熱効率に限界があります。一方、汽力発電は、ボイラ内の蒸気温度が材料の耐熱限界(約600℃以下)によって制限されますが、復水器を用いることで熱を約30℃の極限まで回収できます。
コンバインドサイクル発電は、この2つの方式を直列につなぐことで熱力学第二法則を最大限に活かします。まずガスタービンで超高温の燃焼ガスを用いて発電し、その後に排出される高温のガスを排熱回収ボイラに送り込んで蒸気を発生させ、さらに蒸気タービンで発電を行います。これにより、システム全体の作動温度差が非常に大きくなり、送電端熱効率は50〜60%以上という極めて高い値を実現します。
発電所内には、燃料の燃焼に必要な空気を送る押し込み通風機や排ガスを吸い出す誘引通風機、ボイラに高圧で給水するボイラ給水ポンプなど、多くの補助機械(所内補機)が稼働しています。コンバインドサイクル発電では、ガスタービンの排気をそのまま熱源として利用するため、汽力発電における巨大なボイラ用通風機が不要になります。さらに、全体の出力のうち蒸気タービンが担う比率が小さくなるため、給水ポンプなどの水・蒸気系補機の容量も小さくて済みます。その結果、発電所で消費される電力量の割合である所内率は、同一出力の汽力発電に比べて大幅に低下します。
コンバインドサイクル発電と汽力発電の特性比較
1. 熱効率の高さの判断
ガスタービンの高温動作と蒸気タービンの低温排熱回収を組み合わせることで、サイクル全体の動作温度範囲が広がり、熱力学第二法則における理論効率が向上します。一般的な汽力発電の熱効率が約40〜45%であるのに対し、コンバインドサイクル発電では50〜60%以上に達するため、選択肢(1)の記述は正しいと判断できます。
2. 起動・停止時間の長さの判断
汽力発電は、高圧かつ肉厚の金属で作られたドラムや主蒸気管、大型ボイラを擁しており、急激な温度変化による熱応力を避けるために、起動・停止に数時間から半日以上の長い時間を必要とします。一方、コンバインドサイクル発電の主力であるガスタービンは熱容量が小さく、排熱回収ボイラや蒸気タービンもコンパクトであるため、急速な起動・停止が可能です。したがって、選択肢(2)の記述は正しいと判断できます。
3. 復水器の冷却水量の判断
コンバインドサイクル発電の総出力のうち、水と蒸気の循環を必要とする蒸気タービン発電の割合は約30〜40%に過ぎず、残りの大部分はガスタービンが直接発電します。排熱を水で冷やす必要があるのは蒸気タービン系統の復水器のみであるため、全出力を蒸気タービンが担う同一出力の汽力発電と比較して、復水器を通過する冷却水量は半分以下に減少します。これにより、選択肢(3)の記述は正しいと判断できます。
4. 外気温度が最大出力に与える影響の判断
ガスタービンは、吸入した空気の質量流量によって燃料の燃焼量と出力が決定されます。外気温度が高くなると空気の密度が低下(体積が膨張)するため、コンプレッサーから吸入できる空気の質量が減少し、ガスタービンの最大出力が低下します。外気温度の変化はガスタービン出力に直結するため、外気温度の影響を強く受けるという選択肢(4)の記述は正しいと判断できます。
5. 所内率の大きさと所内補機構成の判断
コンバインドサイクル発電は、ボイラ燃焼用の大型押し込み通風機や誘引通風機を必要とせず、蒸気・給水系統の補機容量も小さく設計されます。同一出力の汽力発電における所内率が約3〜5%であるのに対し、コンバインドサイクル発電の所内率は約1.5〜2%程度に抑えられます。したがって、「大型所内補機が多く、所内率が大きい」とする選択肢(5)の記述は誤りであると判断できます。
ガスタービン排気から熱を回収する排熱回収ボイラと、それを冷やす復水器のサイズ感を同一出力の汽力発電の設備図と比較してみると、プラント全体における水と風の流れる規模の違いが見えてきます。