令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問50 解説 問5 令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問5
問5 問5 各種発電に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 太陽光発電は,太陽電池によって直流の電力を発生させる。需要地点で発電が可能,発生電力の変動が大きい,などの特徴がある。
- (2) 地熱発電は,地下から取り出した蒸気又は熱水の気化で発生させた蒸気によってタービンを回転させる発電方式である。発電に適した地熱資源を見つけるために,適地調査に多額の費用と長い期間がかかる。
- (3) バイオマス発電は,植物などの有機物から得られる燃料を利用した発電方式である。さとうきびから得られるエタノールや,家畜の糞から得られるメタンガスなどが燃料として用いられている。
- (4) 風力発電は,風のエネルギーによって風車で発電機を駆動し発電を行う。プロペラ型風車は羽根の角度により回転速度の制御が可能である。設定値を超える強風時には羽根の面を風向きに平行になるように制御し,ブレーキ装置によって風車を停止させる。
- (5) 燃料電池発電は,水素と酸素との化学反応を利用して直流の電力を発生させる。発電に伴って発生する熱を給湯などに利用できるが,発電時の振動や騒音が大きい。 ✓ 正答
解説
燃料電池発電は、水素と酸素の化学反応から直接電気を取り出すため、タービンや発電機といった高速で回転する可動部を持たず、発電時の振動や騒音が極めて小さいという特徴があることから、選択肢(5)の「発電時の振動や騒音が大きい」とする記述は誤りであり、これが本問の正答となります。
燃料電池の発電原理と熱力学的特徴
燃料電池は、水の電気分解の逆反応、すなわち水素と酸素を化学的に反応させて水が生成されるプロセスにおいて、電気エネルギーを直接取り出す装置です。この電気化学反応はファラデーの法則に基づき、物質の反応量に応じた直流電力を生み出します。
通常の火力発電や原子力発電では、燃料の化学エネルギーや核エネルギーを一度熱エネルギーに変換し、それを蒸気やガスの力学的エネルギーに変えてタービンを回し、最終的に発電機で電気エネルギーへと変換します。このような熱機関を用いた発電方式は、熱力学上のカルノーサイクルによる制約を受けるため、理論的な最大変換効率に上限が存在します。また、高速回転するタービンや発電機、往復運動するピストンなどの可動部が不可欠であり、これらが激しい振動や騒音の発生源となります。
これに対して燃料電池発電は、化学エネルギーから直接電気エネルギーへ変換する直接発電であるため、カルノーサイクルの制限を受けず、極めて高いエネルギー変換効率が得られます。さらに、発電の主役となる電池の本体部分(スタック)には、回転や往復運動をする機械的な可動部が存在しません。そのため、プラント全体において水や燃料ガスを送るポンプやファンなどの補助機器によるわずかな動作音を除けば、発電プロセスそのものに伴う振動や騒音はほとんど発生しないという優れた静粛性を有しています。
この静粛性と、発電に伴って発生する排熱を回収して給湯などに利用するコジェネレーション(熱電併給)の容易さが相まって、家庭用のエネファームをはじめとする都市部やビル内への分散型電源として広く導入されています。
各種発電方式の特徴と判断
燃料電池発電の騒音・振動特性における誤りの指摘 燃料電池発電は、水素と酸素の化学反応を利用して直流電力を発生させ、同時に発生する熱を給湯などに有効利用できるコジェネレーションに適しています。しかし、その物理的な動作原理において高速回転するタービンなどの可動部を持たないため、発電時の振動や騒音は非常に小さいという特性があります。したがって、記述の後半にある「発電時の振動や騒音が大きい」という内容は事実と反対であり、この選択肢が誤り(正答)であると判断できます。
太陽光発電の動作原理と特徴の妥当性 太陽光発電は、半導体のp-n接合に光が当たることで起電力が生じる光電効果を利用し、太陽電池によって直流電力を発生させます。燃料を必要とせず、建物の屋根などの需要地点で直接発電が可能ですが、夜間は発電できず、日中も天候や日射量によって発生電力の変動が大きいという課題があります。したがって、選択肢(1)の記述は正確です。
地熱発電の開発プロセスと課題の妥当性 地熱発電は、地下深くの地熱貯留層から噴出する高温高圧の蒸気や熱水を利用してタービンを回し、発電を行う方式です。化石燃料に頼らないクリーンなベースロード電源ですが、開発に適した地熱資源を特定するためには、地表調査、物理探査、構造試錐(テスト用の穴掘り)などのステップが必要となります。これには多額の費用と10年近くに及ぶ長い準備期間がかかるため、選択肢(2)の記述は正確です。
バイオマス発電の燃料種類の妥当性 バイオマス発電は、動植物などの生物由来の有機資源(バイオマス)を燃料として利用する発電方式です。さとうきびやトウモロコシなどから得られるバイオエタノールや、家畜の糞尿、生ごみなどの有機廃棄物を嫌気性発酵させて得られるメタンガス(バイオガス)などが代表的な燃料として用いられます。これらを燃焼または燃料電池に供給して電気を得るため、選択肢(3)の記述は正確です。
風力発電の制御方法の妥当性 風力発電は、風の運動エネルギーによって風車を回し、発電機を駆動します。一般に広く用いられるプロペラ型風車では、風速に応じてブレード(羽根)の角度を調整するピッチ制御を行うことで、風車の回転速度や出力をコントロールできます。設計値を超えるような強風時には、ブレードの面を風の流れる向きに平行(フェザリング)にすることで風の力を受け流し、同時にブレーキ装置を併用して風車を安全に停止させます。したがって、選択肢(4)の記述は正確です。
各発電方式の記述に並ぶ「可動部の有無」や「エネルギー源の得方」という物理的な仕組みと、それぞれのメリット・デメリットを重ね合わせてみると、燃料電池が備える静音性の理由がより明確に浮かび上がってきます。