第三種電気主任技術者試験 / 令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目 / 各問題解説 / 問182
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令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目 問182 解説 問18(b) 大問18

設問図

問18(b) 図1の回路の電圧 $v_{\text{C}}(t)$ を求め、$v_{\text{C}}(t) = V_{\text{C}} + A_{\text{C}} \sin (\omega t + \theta_{\text{C}})$ と表す。表す。 $V_{\text{C}}$、$A_{\text{C}}$、$\theta_{\text{C}}$ を用いて、 $v_{\text{C}}(t)$ に最も近い値の組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。 ただし、ベース・エミッタ間電圧は常に $0.7 \text{V}$ であると近似して考えてよい。

  1. VC[V]: 5, AC[V]: 0.6, θc[rad]: 0
  2. VC[V]: 5, AC[V]: 6, θc[rad]: 0
  3. VC[V]: 5, AC[V]: 6, θc[rad]: π
  4. VC[V]: 7, AC[V]: 0.6, θc[rad]: π ✓ 正答
  5. VC[V]: 7, AC[V]: 6, θc[rad]: π

解説

直流バイアスによるコレクタ直流電圧が 7V7 \text{V} であり、エミッタ抵抗とコレクタ抵抗の比で定まる交流増幅によって振幅が約 0.6V0.6 \text{V}、位相が反転して π rad\pi \text{ rad} となるため、選択肢 (4) が正しい値の組合せです。

エミッタ接地増幅回路における動作原理とキルヒホッフの法則

トランジスタ回路の動作を解析する際には、直流成分と交流成分を分離してそれぞれ独立に計算する重ね合わせの理が用いられます。回路の各部分における電圧と電流の関係の根幹をなすのがキルヒホッフの電圧法則です。キルヒホッフの電圧法則とは、回路内の任意の閉ループを1周したとき、電位の上昇と降下の和が常にゼロになるという法則です。

直流動作点(バイアス)を求める際には、トランジスタのベース・エミッタ間電圧 VBEV_{\text{BE}} が約 0.7V0.7 \text{V} でほぼ一定に保たれるという性質を利用します。電源電圧からブリーダ抵抗によって分圧されたベース電位が定まると、そこから 0.7V0.7 \text{V} 下がった値がエミッタ電位となります。このエミッタ電位とエミッタ抵抗値からキルヒホッフの電圧法則に従ってエミッタ電流が決まり、ベース電流が十分に小さければコレクタ電流もほぼ同等の値となります。コレクタ直流電圧は、電源電圧からコレクタ抵抗での直流電圧降下を差し引くことで得られます。

一方、交流小信号に対する増幅動作では、ベース・エミッタ間電圧が一定に保たれる近似のもと、ベースに加わった交流信号電圧の変化がそのままエミッタ抵抗の両端に現れます。この結果、エミッタ抵抗を流れる交流電流が発生し、それがコレクタ抵抗を通ることで大きな交流電圧の変化に変換されます。増幅回路の電圧増幅率の大きさは、近似的にコレクタ抵抗とエミッタ抵抗の比 RC/RER_{\text{C}} / R_{\text{E}} に交流入力振幅を乗じたものとなります。また、ベース電圧が増加するとコレクタ電流が増加してコレクタ抵抗での電圧降下が大きくなり、コレクタ電位そのものは低下するため、入力に対して出力の位相が反転し、位相差は π rad\pi \text{ rad}(180∘180^\circ)となります。

コレクタ電圧の直流成分と交流成分の算出

  1. 直流バイアス状態におけるコレクタ直流電圧 VCV_{\text{C}} を導出します。 電源電圧 12V12 \text{V} を 14kΩ14 \text{k}\Omega と 2kΩ2 \text{k}\Omega の抵抗で分圧したベース直流電圧 VBV_{\text{B}} は、12V×2kΩ14kΩ+2kΩ=1.5V12 \text{V} \times \frac{2 \text{k}\Omega}{14 \text{k}\Omega + 2 \text{k}\Omega} = 1.5 \text{V} となります。ベース・エミッタ間電圧が 0.7V0.7 \text{V} であるため、エミッタ直流電圧 VEV_{\text{E}} は 1.5V−0.7V=0.8V1.5 \text{V} - 0.7 \text{V} = 0.8 \text{V} です。エミッタ抵抗 0.8kΩ0.8 \text{k}\Omega を流れる直流エミッタ電流は IE=0.8V0.8kΩ=1mAI_{\text{E}} = \frac{0.8 \text{V}}{0.8 \text{k}\Omega} = 1 \text{mA} となり、コレクタ電流 ICI_{\text{C}} もほぼ 1mA1 \text{mA} です。コレクタ抵抗 5kΩ5 \text{k}\Omega による電圧降下は 1mA×5kΩ=5V1 \text{mA} \times 5 \text{k}\Omega = 5 \text{V} となるため、コレクタ直流電圧 VCV_{\text{C}} は電源電圧から降下分を引いた 12V−5V=7V12 \text{V} - 5 \text{V} = 7 \text{V} となります。コレクタ抵抗の降下分 5V5 \text{V} そのものをコレクタ電位と混同すると、VC=5VV_{\text{C}} = 5 \text{V} とする誤りにつながります。

  2. 交流入力信号に対するコレクタ交流電圧の振幅 ACA_{\text{C}} を導出します。 入力交流電圧の振幅は Ai=100mV=0.1VA_i = 100 \text{mV} = 0.1 \text{V} であり、結合コンデンサのインピーダンスは無視できるため、ベース交流電圧の振幅も 0.1V0.1 \text{V} です。ベース・エミッタ間電圧が常に 0.7V0.7 \text{V} で一定である近似のもとでは、エミッタ電圧の交流変化の振幅も 0.1V0.1 \text{V} となります。これによりエミッタ抵抗 0.8kΩ0.8 \text{k}\Omega に流れる交流電流振幅は 0.1V0.8kΩ\frac{0.1 \text{V}}{0.8 \text{k}\Omega} となり、この電流がコレクタ抵抗 5kΩ5 \text{k}\Omega を流れることで発生するコレクタ交流電圧の振幅は AC=0.1V×5kΩ0.8kΩ=0.1×6.25=0.625V≈0.6VA_{\text{C}} = 0.1 \text{V} \times \frac{5 \text{k}\Omega}{0.8 \text{k}\Omega} = 0.1 \times 6.25 = 0.625 \text{V} \approx 0.6 \text{V} と求まります。入力振幅 0.1V0.1 \text{V} を掛けずに増幅率 6.256.25 のみをそのまま電圧振幅としてしまうと、AC=6VA_{\text{C}} = 6 \text{V} という誤った選択肢を選ぶことになります。

  3. 交流出力電圧の初期位相 θC\theta_{\text{C}} を特定します。 ベース電圧が正の方向へ変化して高くなると、コレクタ電流が増加してコレクタ抵抗での電圧降下が大きくなるため、コレクタ電位は低下します。逆に入力が低くなるとコレクタ電位は上昇するため、入力電圧とコレクタ電圧の変動は正負が逆になる反転関係となります。数学的には −sin⁡(ωt)=sin⁡(ωt+π)-\sin(\omega t) = \sin(\omega t + \pi) と表されるため、位相差は θC=π rad\theta_{\text{C}} = \pi \text{ rad} となります。位相の反転を考慮せず同相とみなすと θC=0\theta_{\text{C}} = 0 となり誤りとなります。

コレクタ抵抗での電圧降下の大きさと、入力信号に応じて変化するエミッタ電流の動きを重ねてみると、反転して現れるコレクタ電圧波形の振幅と位相の関係が見えてきます。

参考リンク

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