令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目 問182 解説 問18(b) 問18
問18(b) 図2の特性曲線の点Pにおける接線の傾きを読むことで,FETの相互コンダクタンスがgm=6mSであるとわかる。この値を用いて,増幅回路の小信号交流等価回路をかくと図3となる。ここで,コンデンサC1,C2,CSのインピーダンスが使用する周波数で十分に小さいときを考えており,FETの出力インピーダンスがRD[kΩ]やRL[kΩ]より十分大きいとしている。この増幅回路の電圧増幅度Av=|vo/vi|の値として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 10 ✓ 正答
- 30
- 50
- 100
- 300
解説
コンデンサ C1,C2,CS のインピーダンスが十分に小さく、FET の出力インピーダンスが抵抗 RD や RL より十分大きいという条件において、図3の小信号交流等価回路から、出力電圧 vo が電流源 gm * vi と抵抗 RD,RL の並列回路によって定まる関係を用いて計算すると、電圧増幅度 Av の値は 10 となり、選択肢(1)が正答となります。
小信号交流等価回路における電流と電圧の関係
この増幅回路の動作を理解するための基礎となるのが、オームの法則と、並列接続された抵抗の合成抵抗の関係です。
小信号交流等価回路は、直流バイアス分を無視し、交流信号に対する回路の挙動のみを取り出して表したものです。図3において、FETは入力電圧 vi によって制御される電流源 gm * vi としてモデル化されています。ここで用いられている gm は相互コンダクタンスと呼ばれる定数であり、ゲート・ソース間電圧(入力電圧 vi)の変化に対して、ドレーン電流 id がどれだけ変化するかという割合を表します。
等価回路の出力側をみると、ドレーン抵抗 RD と負荷抵抗 RL が並列に接続されています。交流的な視点では、直流電源も接地(基準電位)と同じ扱いになるため、RD と RL はどちらも同じ出力端子 vo と接地との間に並列に接続されていることになります。したがって、電流源から供給される電流 id は、これら2つの抵抗が並列になった回路を流れることになります。
並列接続された抵抗の合成抵抗に電流が流れるとき、そこに発生する電圧はオームの法則によって決定されます。この関係を利用することで、入力電圧 vi に対する出力電圧 vo の比率、すなわち電圧増幅度の大きさを導き出すことができます。
ドレーン抵抗と負荷抵抗による電圧増幅の計算
等価回路から得られる回路定数を数式に当てはめ、電圧増幅度を求めます。
1. 抵抗RDとRLの並列合成抵抗を算出する
図3の出力部分において、ドレーン抵抗 RD = 5 kΩ と負荷抵抗 RL = 2.5 kΩ は並列接続されています。この2つの抵抗の並列合成抵抗を Rp とすると、和分の積の公式により以下のように求められます。 Rp = (RD * RL) / (RD + RL) 数値を代入します。k(キロ)は 10^3 を表します。 Rp = (5 * 10^3 * 2.5 * 10^3) / (5 * 10^3 + 2.5 * 10^3) Rp = (12.5 * 10^6) / (7.5 * 10^3) Rp = (12.5 / 7.5) * 10^3 Rp = (5/3) * 10^3 Ω
2. 出力電圧voと入力電圧viの関係を式に表す
オームの法則により、並列合成抵抗 Rp に電流 id が流れることで出力電圧 vo が発生します。図3におけるドレーン電流源 gm * vi の矢印は上から下を向いているため、接地側から出力端子 vo 側に向かって電流を引き込む挙動となります。これにより、出力電圧 vo の極性は反転し、負の電圧として次のように表されます。 vo = -id * Rp vo = -(gm * vi) * Rp
3. 電圧増幅度Avを計算する
電圧増幅度 Av は、入力電圧の振幅に対する出力電圧の振幅の比、すなわち絶対値 |vo / vi| で定義されます。上記の式から vi を用いて電圧増幅度を整理すると次のようになります。 Av = |vo / vi| = gm * Rp この式に、相互コンダクタンス gm = 6 mS = 6 * 10^-3 S と、ステップ1で求めた合成抵抗 Rp = (5/3) * 10^3 Ω を代入します。 Av = (6 * 10^-3) * ((5/3) * 10^3) ここで、m(ミリ:10^-3)と k(キロ:10^3)は掛け合わせることで相殺されるため、計算は簡単な整数の掛け算になります。 Av = 6 * (5/3) Av = 2 * 5 Av = 10 計算の結果、電圧増幅度として 10 が得られます。
図3に示された電流源の向きと、並列に並んだ RD と RL の接続状態を重ねてみると、電流が吸い込まれる経路に沿って電圧が発生する様子がイメージできます。