令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目 問181 解説 問18(a) 問18
問18(a) 図1は,飽和領域で動作する接合形FETを用いた増幅回路を示し,図中のvi並びにvoはそれぞれ,入力と出力の小信号交流電圧[V]を表す。また,図2は,その増幅回路で使用するFETのゲート-ソース間電圧Vgs[V]に対するドレーン電流Id[mA]の特性を示している。抵抗RG=1MΩ,RD=5kΩ,RL=2.5kΩ,直流電源電圧VDD=20Vとするとき、FETの動作点が図2の点Pとなる抵抗RS[kΩ]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 0.1
- 0.3
- 0.5
- 1 ✓ 正答
- 3
解説
図2の動作点Pにおけるゲート-ソース間電圧 -1.8 V 及びドレーン電流 1.8 mA という具体的な動作条件から、接合形FETの自己バイアス回路を記述する閉ループの電圧方程式を適用することにより、求めるソース抵抗 の値は 1 k となり、選択肢(4)が導かれます。
自己バイアス回路における電位関係とキルヒホッフの第二法則
接合形FET(JFET)を用いた増幅回路において、安定した動作を行わせるためには適切なバイアス状態を設定する必要があります。本問で用いられている回路は、自己バイアス回路と呼ばれる極めて一般的な構成です。
自己バイアス回路の動作原理を理解するための最大のポイントは、接合形FETのゲートには電流がほとんど流れないという性質にあります。ゲートはチャネルに対して逆バイアスされたダイオード(pn接合)を形成しているため、入力端子であるゲートに流れ込むゲート電流 は実質的に 0 A とみなすことができます。
ゲート電流 が 0 A であるため、ゲートに接続されている抵抗 に電流が流れることはなく、抵抗 での電圧降下()も 0 V となります。この結果、ゲートの電位 は基準電位(アース)と同じ 0 V に固定されます。
一方で、ドレーンからソースに向かって流れるドレーン電流 は、すべてソース抵抗 を通ってアースへと流れていきます。これにより、ソース端子には という電圧降下が発生し、ソース電位 はアースに対して だけ高くなります。
ここで、ゲートからソース、そしてソース抵抗 を経てアースに至る閉ループにキルヒホッフの第二法則(電圧則)を適用します。ゲート-ソース間の電圧を とすると、ゲート電位 とソース電位 の関係から、次の関係式が成り立ちます。
この式は、ドレーン電流 が流れることによって、ゲート-ソース間に負のバイアス電圧 が自動的に発生することを示しています。自らの電流を利用して必要なバイアス電圧を作り出すことから、自己バイアスと呼ばれます。
動作点Pのパラメータによるソース抵抗の決定
図2に示されたゲート-ソース間電圧 に対するドレーン電流 の特性曲線において、動作点として指定されている点Pの座標を読み取ります。点Pにおけるゲート-ソース間電圧 は -1.8 V であり、そのときのドレーン電流 は 1.8 mA であることがわかります。
自己バイアス回路における基本関係式である に、読み取った動作点Pの値を代入します。この関係式を求めるソース抵抗 について解く形に変形すると、次のようになります。
- 変形した式に、電圧 V、電流 A を代入して抵抗値を計算します。
これにより、動作点を点Pに設定するために必要なソース抵抗 の値が 1 k であることが特定されます。
図1の回路においてゲートからソースへと向かう電位の差と、図2の特性曲線上で指定された点Pの電圧・電流のバランスを重ね合わせてみると、自己バイアス回路が一定の動作点を保ち続けるための物理的な仕組みが見えてきます。