令和6年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問10 解説 問1 問1
問1 水力発電に関する記述として, 誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 電圧の大きさや周波数は, 自動電圧調整器と調速機を用いて制御される。
- (2) カプラン水車は, プロペラ水車の一種で, 流量に応じて羽根の角度を調整することができるため, 部分負荷での効率の低下が少ない。
- (3) 発電所で発電された電力は, 発電電圧を主変圧器で昇圧した後, 送電される。この主変圧器には発電機側にY結線, 系統側にΔ結線のものが多く用いられる。 ✓ 正答
- (4) ペルトン水車は, 水の衝撃力で回転する衝動水車の一つである。
- (5) 水車発電機の回転速度は, 汽力発電と比べて小さいため, 発電機の磁極数は多くなる。
解説
発電所の主変圧器は送電系統側で中性点接地を行う必要があるため、選択肢(3)で述べられている「発電機側がY結線、系統側がΔ結線」という構成は誤りであり、実際には「発電機側がΔ結線、系統側がY結線」とするのが一般的です。
主変圧器の結線方式と中性点接地
電力系統において、主変圧器は発電機で発生した比較的低い電圧を、送電に適した高い電圧へと昇圧する役割を担います。この際、送電側の高圧系統において「中性点接地方式」を採用することが極めて重要です。
中性点接地を行う最大の目的は、地絡事故が発生した際の過大な異常電圧の抑制と、地絡保護継電器の確実な動作を促すことです。Y結線の巻線を持つ変圧器であれば、その中性点を直接、あるいは抵抗やリアクトルを介して接地することができます。もし系統側をΔ結線にしてしまうと、中性点を取り出すことができないため、この目的に適いません。
一方、発電機側については、発電機内の地絡事故時に過大な電流が流れるのを防ぐために、発電機の定格電圧や容量に応じて高抵抗接地や中性点非接地が選択されます。そのため、変圧器の発電機側巻線にはΔ結線を用いることで、第三高調波成分の循環電流をΔ結線内に閉じ込め、誘導障害を抑制する効果も得ています。
水力発電所の特性と構成要素の判断
設問の各記述を、発電所の構成原理に基づいて整理します。
- 水力発電所の出力制御には、自動電圧調整器(AVR)による発電機電圧の調整と、調速機(ガバナ)による水車への入水流量調整を用いた周波数・出力制御が不可欠です。
- カプラン水車はプロペラ水車の羽根角度を可動式にしたものであり、流れる水量に合わせて羽根の角度を最適化できるため、負荷が変動しても高い水車効率を維持できます。
- 主変圧器の結線は、系統側の地絡事故時の保護と中性点接地を行うために、発電機側をΔ結線、系統側をY結線とすることが標準的です。選択肢ではこの構成が逆になっているため、誤りとなります。
- ペルトン水車は、ノズルから噴出する水の高速流がバケットに当たる衝撃力を回転力に変える形式であり、衝動水車として分類されます。
- 水力発電機は汽力発電機(タービン発電機)と比べて回転速度が低く設定されます。同期速度の式 (は回転速度、は周波数、は磁極数)において、回転速度が小さくなる分、極数を多くすることで商用周波数(50Hzまたは60Hz)を維持しています。
主変圧器の端子配置と、そこから広がる系統の接地インピーダンスの構成を重ねてみると、電流の逃げ道と電圧の安定性がどこで確保されているかが見えてきます。