令和6年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問20 解説 問2 問2
問2 汽力発電において, 熱効率の向上を図る方法として, 誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 高温高圧の蒸気を使用する。
- 復水器の真空度を高める。
- 再熱サイクルを利用する。
- 給水加熱器で抽出温度を上げる。 ✓ 正答
- 節炭器で排ガス温度を下げる。
解説
給水加熱器において抽出温度を上げる(抽出圧力を高くする)と、タービンで発電の仕事を行うための蒸気量が減少するため、汽力発電の熱効率を向上させる方法として誤っています。
汽力発電の熱効率とカルノーの定理
汽力発電所の熱効率は、熱力学のカルノーの定理に基づいて議論されます。この定理によれば、熱機関の理論的な最大熱効率は、熱源の温度と放出する温度の差が大きいほど高くなります。実際の発電サイクルにおいても、蒸気の温度や圧力を高くしてエネルギーの取り出し効率を上げたり、復水器の冷却を強めて排気側の温度を下げたりすることで、全体的な効率を向上させます。
給水加熱によるサイクル効率への影響
給水加熱は、タービンの途中で一部の蒸気を取り出し(抽出)、それをボイラへ戻る給水の加熱に利用する仕組みです。この抽出蒸気はタービンで最後まで膨張して発電に寄与するはずだったエネルギーを一部消費するため、抽出量が増えるほど発電機で得られる電力は減少します。
一方で、ボイラに供給する給水の温度をあらかじめ高くしておくことで、ボイラ内で燃料を燃焼させて蒸気を作る際に必要な熱量を減らすことができます。給水加熱器は「発電電力量の減少分」と「ボイラでの必要熱量の削減分」を最適化することで、サイクル全体の熱効率を改善する装置です。
誤答の判断ステップ
- 蒸気条件の確認: 選択肢(1)の「高温高圧の蒸気」は、熱源の温度を上げることにつながり、サイクル効率を直接的に向上させる正当な手段です。
- 復水器の役割: 選択肢(2)の「真空度を高める」ことは、蒸気の膨張末端の圧力を下げて、タービンから取り出せる仕事量を増やす効果があるため、効率向上に寄与します。
- サイクル構成の確認: 選択肢(3)の「再熱サイクル」は、途中で膨張した蒸気を再度ボイラへ戻して加熱し、タービン後半での湿り分を減らして仕事量を増やす手法であり、正しい効率向上策です。
- 抽出条件の判定: 選択肢(4)において、抽出圧力を上げると、タービン内で仕事ができる蒸気がより早期にサイクルから取り出されることになります。これによりタービンによる発電仕事が大幅に減少し、給水加熱によるボイラの熱量削減効果を上回る損失が生じるため、熱効率は低下します。
- 排熱回収の確認: 選択肢(5)の「節炭器」は、排ガスの持つ熱を給水に回収する装置であり、燃料消費を抑えるため熱効率の向上に貢献します。
ボイラへ送られる水の流れと、タービンから抜き出される蒸気の経路をたどると、なぜ抽出圧力の設定が熱効率を左右するのかが見えてきます。