受電端の電圧が20kVであるとき、配電線1条当たりの抵抗3Ωとリアクタンス5Ωによる三相3線式の電圧降下を近似式を用いて計算すると2.7kVになり、これを受電電圧に足し合わせた変電所引出口の電圧は選択肢にある22.7kVとなります。
三相3線式における電圧降下の原理と関係式
送電端(変電所引出口)から受電端(需要家)に電力を送る際、配電線が持つ抵抗やリアクタンスの影響によって電圧が低下する現象を電圧降下と呼びます。三相3線式回路において、受電端の線間電圧を Vr、線路を流れる電流を I、電線1条当たりの抵抗を R、リアクタンスを X、負荷の遅れ力率を cosθ とすると、送電端の線間電圧 Vs との間に生じる線間電圧降下 ΔV は、送電端と受電端の位相角が十分に小さい場合に以下の近似式で表されます。
ΔV=Vs−Vr≈3I(Rcosθ+Xsinθ)
この式は、電力輸送時における線路インピーダンスによる電圧降下を簡易的に計算するための極めて実用的な関係式です。
また、三相3線式回路で需要家が消費する有効電力 P は、受電端の線間電圧 Vr、線電流 I、力率 cosθ を用いて次のように定義されます。
P=3VrIcosθ
この有効電力の式を変形して電流 I を導出し、電圧降下の近似式に組み込むことで、測定や設定が困難な電流の値を介さずに電圧降下を計算することが可能になります。
送電端電圧の算出プロセス
ステップ1:負荷を流れる線電流の値を導出します。
有効電力の公式である P=3VrIcosθ から、線電流 I を求める式に変形します。
I=3VrcosθP
ここに、需要家の使用電力 P=8000 kW=8000×103 W、受電電圧 Vr=20 kV=20×103 V、負荷の力率 cosθ=0.8 を代入します。
I=3×20×103×0.88000×103
分母と分子の 103 を相殺し、分母の数値を整理します。
I=3×168000=3500 A
この段階では、無理数である 3 をあえて小数にせず、分母に残したままにしておくと、後のステップでの計算が非常に容易になります。
ステップ2:負荷の力率角に対する正弦(サイン)を特定します。
力率 cosθ=0.8 から、三角比の基本公式 sin2θ+cos2θ=1 を用いて sinθ を算出します。
sinθ=1−cos2θ=1−0.82=1−0.64=0.36=0.6
遅れ力率の負荷であるため、sinθ は正の値をとり、0.6となります。
ステップ3:配電線路で発生する電圧降下を計算します。
電線1条当たりの抵抗 R=3 Ω、リアクタンス X=5 Ω、および求めた I と sinθ を電圧降下の近似式 ΔV=3I(Rcosθ+Xsinθ) に代入します。
ΔV=3×3500×(3×0.8+5×0.6)
ここで、先ほどあえて残しておいた分母の 3 と、式の手前にある 3 がきれいに相殺されます。
ΔV=500×(2.4+3.0)=500×5.4=2700 V
これをキロボルト単位に変換すると、ΔV=2.7 kV となります。
ステップ4:変電所引出口の電圧を求めます。
変電所引出口の電圧(送電端電圧)Vs は、受電電圧 Vr に配電線路の電圧降下 ΔV を足した値になります。
Vs=Vr+ΔV=20 kV+2.7 kV=22.7 kV
この算出結果は選択肢に示されている22.7kVと完全に一致します。
配電線路の電線1条が持つ抵抗やリアクタンスの数値と、受電端での消費電力および電圧の大きさをあわせて眺めると、電気を送り届けるために送り出し側で必要となる電圧の規模が見えてきます。
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