三相専用配電線で受電する需要家が受電電圧を 20 kV に維持したまま力率を 0.8 から 0.95 へ改善するとき、電圧降下を決定する送電線の電圧降下の近似式において、受電電力と受電電圧が一定であれば電圧降下が R+Xtanθ に比例するという関係から、改善後の電圧降下の比率は 68.8 % に低下するため、正答は 68.8 となります。
送電線路における電圧降下の簡易計算式
三相3線式配電線路において、受電端の線間電圧を Vr [V]、線路を流れる電流を I [A]、電線1条当たりの抵抗を R [Ω]、リアクタンスを X [Ω]、負荷の力率を cosθ とすると、送電端と受電端の間の線間電圧降下 v [V] は、送電線の電圧降下の近似式によって次のように表されます。
v=3I(Rcosθ+Xsinθ)
この近似式は、受電端電圧を基準としたベクトル図において、送電端電圧と受電端電圧の位相差が十分に小さいと仮定することで導かれる実用的な式です。
さらに、負荷が消費する三相有効電力 P [W] は、次の関係式で定義されます。
P=3VrIcosθ
この有効電力の式から、線路電流 I について整理すると、次のように表すことができます。
I=3VrcosθP
この電流 I を、最初に示した電圧降下 v の近似式に代入します。
v=3(3VrcosθP)(Rcosθ+Xsinθ)
式を整理すると、3 が約分され、括弧の中の各項を cosθ で割る形になります。
v=VrP(R+Xtanθ)
この関係式から、受電電力 P と受電電圧 Vr が一定である場合、電圧降下 v は力率角 θ に依存する (R+Xtanθ) の値に直接比例することがわかります。力率を改善すると cosθ が 1 に近づくため、力率角 θ およびその正接 tanθ は小さくなり、結果として線路の電圧降下を抑制することができます。
力率改善にともなう電圧降下比率の算出
1. 改善前の負荷の力率特性を求める
改善前の力率 cosθ1 は 0.8(遅れ)です。三角関数の相互関係である sin2θ+cos2θ=1 を用いて、正弦 sinθ1 を求めます。
sinθ1=1−cos2θ1=1−0.82=0.6
これより、改善前における力率角の正接 tanθ1 は次のようになります。
tanθ1=cosθ1sinθ1=0.80.6=0.75
2. 改善前の電圧降下に比例する項を計算する
電圧降下 v を決定するパラメータのうち、一定である VrP を除いた比例部分 (R+Xtanθ) に、電線1条当たりの抵抗 R=3 Ω、リアクタンス X=5 Ω、および tanθ1=0.75 を代入します。
R+Xtanθ1=3+5×0.75=3+3.75=6.75
3. 改善後の負荷の力率特性を求める
コンデンサの設置により、改善後の力率は cosθ2=0.95(遅れ)となります。これに対する正弦 sinθ2 を同様に求めます。
sinθ2=1−cos2θ2=1−0.952=1−0.9025=0.0975≈0.31225
この値を用いて、改善後における力率角の正接 tanθ2 を計算します。
tanθ2=cosθ2sinθ2=0.950.31225≈0.32868
4. 改善後の電圧降下に比例する項を計算する
改善後の比例部分 (R+Xtanθ) に、各値を代入して計算します。
R+Xtanθ2=3+5×0.32868=3+1.6434=4.6434
5. 改善前後の電圧降下の比率を決定する
改善前の電圧降下を v1、改善後の電圧降下を v2 とすると、両者の比率はそれぞれの比例項の比と等しくなります。
v1v2=R+Xtanθ1R+Xtanθ2=6.754.6434≈0.6879
この値をパーセント表示に換算します。
0.6879×100=68.79≈68.8 %
この結果、コンデンサ設置後の電圧降下は、設置前の電圧降下に対して 68.8 % の比率になることが導かれます。
電線1条当たりに存在する抵抗 3 Ω とリアクタンス 5 Ω という具体的な数値、そして力率が 0.8 から 0.95 へと改善された際に tanθ が半分以下へ急激に減少する様子をあわせて眺めてみると、受電電圧を保ったまま線路の電圧降下を大きく抑制できる電気的なつながりが見えてきます。
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