令和7年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目 問90 解説 問9 問9
問9 次の文章は,架空送電線路に関する記述である。架空送電線路が通信線路に接近していると,通信線路に電圧が誘導されて設備やその取扱者に危害を及ぼす等の障害が生じるおそれがある。この障害を誘導障害といい,次の2種類がある。① 架空送電線路の電圧により通信線路に誘導電圧を発生させる (ア) 障害。② 架空送電線路の電流が,架空送電線路と通信線路間の (イ) を介して通信線路に誘導電圧を発生させる (ウ) 障害。三相架空送電線路が十分になん架されていれば,平常時は,電圧や電流によって通信線路に現れる誘導電圧は (エ) となるので0Vとなる。三相架空送電線路に (オ) 事故が生じると,電圧や電流は不平衡になり,通信線路に誘導電圧が現れ,誘導障害が生じる。上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (1) 磁気誘導 誘導リアクタンス ファラデー 大きさの差 三相短絡
- (2) 静電誘導 自己インダクタンス 電磁誘導 大きさの和 1線地絡
- (3) 静電誘導 相互インダクタンス 電磁誘導 ベクトルの和 1線地絡 ✓ 正答
- (4) 磁気誘導 相互インダクタンス 電荷誘導 ベクトルの和 三相短絡
- (5) 磁気誘導 誘導リアクタンス ファラデー ベクトルの差 2線地絡
解説
架空送電線路と通信線路間に生じる誘導障害は、電圧による静電誘導と、電流が相互インダクタンスを介して引き起こす電磁誘導に大別され、三相平衡時における電圧・電流のベクトルの和がゼロとなる性質を逸脱する1線地絡事故時に顕著な障害が現れます。
静電誘導と電磁誘導の物理的背景
送電線と通信線は、空間を隔てて配置された導体であるため、電気的な結合状態にあります。
静電誘導は、送電線の電圧により生じる電界が、通信線との間の静電容量を介して通信線に電荷を移動させ、電圧を発生させる現象です。送電線の電圧が高いほど、また通信線との静電容量が大きいほど、誘導電圧は高くなります。
一方、電磁誘導は、送電線に流れる電流によって生じる磁束が通信線を鎖交し、その変化によって通信線に起電力を生じさせる現象です。この際、送電線と通信線の間に働く結合の強さは、相互インダクタンスによって表されます。
平衡送電とベクトルの和
三相交流送電では、各相の電圧や電流は互いに120度ずつ位相がずれた正弦波となります。十分なねん架が行われている場合、あるいは対称性が保たれている場合、三相の電圧や電流をすべて足し合わせたベクトル和はゼロとなります。
誘導障害の観点から見ると、送電線全体から通信線に及ぶ静電誘導や電磁誘導の影響は、これら三相のベクトル和に比例します。したがって、平常時の平衡状態においてはこのベクトル和がゼロとなるため、理論上、通信線には誘導電圧が発生しません。
誘導障害発生のメカニズム
1線地絡事故が発生すると、送電線路の対称性が崩れます。健全相と故障相の間で電圧や電流のバランスが大きく乱れ、不平衡が生じます。
- 空白箇所(ア)には、電圧に起因する静電誘導が当てはまります。
- 空白箇所(イ)には、電流による磁気的な結合を示す相互インダクタンスが入ります。
- 空白箇所(ウ)には、電流変化によって生じる電磁誘導が当てはまります。
- 空白箇所(エ)は、三相平衡時に誘導電圧がゼロになる根拠として、電圧・電流のベクトルの和がゼロであることを指しています。
- 空白箇所(オ)には、対称性を崩し、不平衡な零相電流や電圧を発生させる原因となる1線地絡事故が入ります。
送電線の配置図やねん架の概念と、各相に流れる電流のベクトル図を重ねてみると、障害が発生する仕組みの全体像が見えてきます。