第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 / 各問題解説 / 問10
certification-simodake-work

令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 機械科目 問10 解説 令和8年度 第三種電気主任技術者 上期試験 機械科目 問1

いろいろな直流機に関する記述として,誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. (1) 電機子と界磁巻線が並列に接続された分巻発電機は,回転を始めた電機子巻線と磁極の残留磁束によって,まず低い電圧で発電が開始される。その結果,界磁巻線に電流が流れ始め,磁極の磁束が強まれば,発電する電圧が上昇し,必要な励磁が確立する。
  2. (2) 電機子と界磁巻線が直列に接続された直巻発電機は,出力電流が大きく界磁磁極が磁気飽和する場合よりも,出力電流が小さく界磁磁極が磁気飽和しない場合のほうが,出力電圧が安定する。 ✓ 正答
  3. (3) 電源電圧一定の条件下で運転される分巻電動機は,負荷が変動した場合でも,ほぼ一定の回転速度を保つので,定速度電動機とよばれる。
  4. (4) 直巻電動機は,始動時の大きな電機子電流が大きな界磁電流となる。直流電動機のトルクは界磁磁束と電機子電流から発生するので,大きな始動トルクが必要な用途に利用されてきた。
  5. (5) ブラシレス DC モータでは,直流機におけるブラシと整流子の機械的接触による整流の働きを半導体スイッチで電子的に実現する。

解説

直巻発電機は、界磁巻線と電機子が直列に接続されているため、出力電流が大きくなると界磁磁束も増加し、それに応じて発電電圧も大きく上昇します。この特性は、出力電圧が負荷の変動に対して安定しないことを示しており、特に「出力電流が小さく界磁磁極が磁気飽和しない場合のほうが、出力電圧が安定する」とする選択肢(2)の記述は誤りです。

直流発電機の基本的な原理と種類別の特性

直流発電機は、電磁誘導の法則に基づき、電機子巻線が磁界中を回転することで起電力を発生させます。電機子巻線に誘導される基本的な起電力 EE は、界磁磁束 ϕ\phi と回転速度 NN に比例します。 E=kϕNE = k \phi N ここで、kk は機械の構造によって決まる定数です。 また、発電機の外部端子に現れる電圧 VtV_t(端子電圧)は、誘導起電力 EE から電機子巻線の抵抗による電圧降下 IaRaI_a R_a を引いた値となります。 Vt=E−IaRaV_t = E - I_a R_a ここで、IaI_a は電機子電流、RaR_a は電機子巻線抵抗です。

直流発電機は励磁方式によって種類が分かれますが、本問の選択肢(2)では直巻発電機の特性が問われています。

直巻発電機の特性

直巻発電機は、界磁巻線と電機子巻線が直列に接続されています。この接続方式のため、界磁巻線を流れる電流(界磁電流 IfI_f)は、そのまま負荷に流れる電流(負荷電流 ILI_L)と電機子巻線を流れる電流(電機子電流 IaI_a)と等しくなります。 If=Ia=ILI_f = I_a = I_L

この関係から、直巻発電機は以下のような特徴的な出力電圧特性を持ちます。

  • 負荷電流への依存性: 負荷電流 ILI_L が増加すると、界磁電流 IfI_f も増加します。これにより界磁磁束 ϕ\phi が増大し、誘導起電力 EE が上昇するため、端子電圧 VtV_t も大きく上昇する傾向があります。
  • 無負荷時の特性: 無負荷時(IL=0I_L = 0)には界磁電流が流れないため、残留磁束によるわずかな起電力しか発生しないか、ほとんど電圧を確立できません。
  • 磁気飽和の影響: 負荷電流が非常に大きくなると、界磁磁極の磁性体が磁気飽和する領域に入ります。磁気飽和とは、磁性体の磁化が限界に達し、界磁電流を増やしても磁束の増加が鈍くなる現象です。この領域では、電流が増加しても磁束の増加が緩やかになるため、誘導起電力の上昇も緩やかになります。

誤った記述の判断

選択肢(2)「電機子と界磁巻線が直列に接続された直巻発電機は,出力電流が大きく界磁磁極が磁気飽和する場合よりも,出力電流が小さく界磁磁極が磁気飽和しない場合のほうが,出力電圧が安定する。」の記述が直巻発電機の特性に合致しないため、誤りとなります。

  1. 直巻発電機の電圧変動の性質を理解する: 直巻発電機では、負荷電流が変化すると、界磁電流が直接的に変化し、それに伴い界磁磁束が大きく変動します。このため、誘導起電力も大きく変動し、結果として出力端子電圧が大きく変動します。これは、出力電圧が「安定しない」特性を持つことを意味します。一般的に「出力電圧が安定する」とは、負荷電流が変動しても出力電圧があまり変動しない、すなわち電圧変動率が小さい状態を指します。

  2. 磁気飽和の有無が電圧安定性に与える影響を比較する:

    • 出力電流が小さく磁気飽和しない場合: この領域では、界磁電流と界磁磁束がほぼ比例関係にあります。したがって、負荷電流のわずかな変動が界磁磁束、ひいては誘導起電力に大きく影響し、出力電圧は大きく変動します。この状態は、電圧が安定しているとは言えません。むしろ不安定な状態と言えます。
    • 出力電流が大きく磁気飽和する場合: この領域では、界磁電流が増加しても磁束の増加が鈍化します。そのため、負荷電流の変動に対する界磁磁束の変動が小さくなり、誘導起電力の変化も相対的に緩やかになります。この結果、出力電圧の上昇カーブの傾きが緩やかになる傾向はありますが、依然として負荷電流に依存して電圧は大きく変化し続けるため、「出力電圧が安定する」とは言えません。しかし、「出力電流が小さく磁気飽和しない場合」と比較すると、負荷電流の変動に対する電圧の変化の度合いは「相対的に」小さくなる場合があります。
  3. 選択肢(2)の記述の評価: 選択肢(2)は「出力電流が大きく界磁磁極が磁気飽和する場合よりも、出力電流が小さく界磁磁極が磁気飽和しない場合のほうが、出力電圧が安定する」と述べています。しかし、上記ステップ2で説明したように、出力電流が小さく磁気飽和しない領域では、負荷電流の変動が出力電圧に大きく影響し、電圧は大きく変動するため、安定しているとは言えません。 一方、出力電流が大きく磁気飽和する領域では、磁束増加が鈍化するため、相対的に電圧の上昇度合いが緩やかになる傾向があるため、比較の観点から言えば、むしろ「出力電流が大きく磁気飽和する場合」の方が、電流変動に対する電圧の変化が相対的に小さいと言えます。 したがって、「出力電流が小さく界磁磁極が磁気飽和しない場合のほうが、出力電圧が安定する」という選択肢(2)の記述は、直巻発電機の実際の電圧安定性に関する特性とは逆であり、誤りです。

直巻発電機は、その電圧変動特性から、定電圧源としては不向きとされており、電動発電機やアーク溶接用電源など、特定の用途に利用されることが多いです。

直流機の種類ごとの特性曲線、特に直巻発電機における端子電圧と負荷電流の関係を重ねてみると、電流が変動するにつれて電圧がどのように変化するのかが見えてきます。

参考リンク

学習の記録にははてなブックマーク!

気づいたこと・覚えたことをコメントにメモしよう