第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目 / 各問題解説 / 問10
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令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目 問10 解説 問1 問1

問1 A問題(配点は1問題当たり5点)問1 水力発電所に用いられるダムの種別と特徴に関する記述として、最も不適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. (1) 重力ダムとは, コンクリートの重力によって水圧などの外力に耐えられるようにしたダムであって, 体積は大きくなるが, 構造が簡単で安定性が良い。我が国では, 最も多く用いられている。
  2. (2) アーチダムとは, 水圧などの外力を両岸の岩盤で支えるようにアーチ型にしたダムであって, 両岸の幅が広く, 岩盤が丈夫なところに作られ, コンクリートの量を節減できる。 ✓ 正答
  3. (3) ロックフィルダムとは, 岩石を積み上げて作るダムであって, 内側には, 砂利, アスファルト, 粘土などが用いられている。ダムは大きくなるが, 資材の運搬が困難で建設地付近に岩石や砂利が多い場所に適している。
  4. (4) アースダムとは, 土壌を主材料としたダムであって, 灌漑用の池などを作るのに適している。軟弱な地盤でも作れるという利点がある。ダムの高さは50mを超えるものもある。
  5. (5) 取水ダムとは, 水路式発電所の水路に水を導入するため河川に設けられるダムであって, ダムの高さは低く, 越流形コンクリートダムなどが用いられている。

解説

アーチダムは水圧による荷重をアーチ作用によって両岸の強固な岩盤へ逃がす構造であるため、谷の幅が狭い場所にしか建設できないことから、両岸の幅が広い場所に作られるとした選択肢(2)が不適切であり、これが正答となります。

ダムの構造分類と荷重を支える力学的原理

水力発電で用いられるダムは、貯水した水の圧力である水圧や自重などの外力をどのように支えるかによって、いくつかの構造に分類されます。このうち、コンクリートを主材料とする代表的なダムが重力ダムとアーチダムです。

重力ダムは、ダム自体の質量による重力と基礎岩盤との摩擦力によって、水圧による押し出しや転倒に耐える構造です。構造が極めて単純で信頼性が高い一方、水圧に抗するために膨大な体積のコンクリートを必要とします。

これに対してアーチダムは、弓のように上流側に凸となる湾曲した形状を持っています。この形状により、水圧をダム本体の自重で支えるのではなく、アーチ作用と呼ばれる力学的な原理によって左右および底部の基礎岩盤へと受け流します。アーチ作用とは、曲面に加わった外力を圧縮力へと変換し、その軸方向に沿って両端の支持点へと伝える現象です。この原理は、石造りのアーチ橋が自重や荷重を橋台に伝える仕組みと同じです。

アーチ作用によって荷重を効率よく岩盤に分散できるため、ダム本体の厚みを非常に薄くすることができ、重力ダムに比べてコンクリートの使用量を大幅に削減できます。しかし、水圧の大部分が左右の岩盤に集中するため、両岸の岩盤が極めて堅固で、かつ水圧を効率よく岩盤に伝えるために谷の幅が狭いことが絶対条件となります。

また、その他のダム形式として、現地にある岩石や土砂を積み上げて造るフィルダムがあります。これには、岩石を主材料とし遮水壁を設けるロックフィルダムや、均一な土壌を主材料とするアースダムがあります。これらは重力ダムに比べて基礎地盤への要求が緩やかで、軟弱な地盤でも建設が可能です。

各ダム形式の特徴と適地の判断

  1. アーチダムの建設条件と形状の関係 アーチダムは、水圧を左右の岩盤に圧縮力として伝えるため、アーチの開き角度が広くなりすぎない狭い谷でなければ設計が成り立ちません。谷の幅が広い場所では、アーチの半径が大きくなり、水圧によって発生する圧縮力を両岸にうまく伝えられなくなります。また、薄い構造で巨大な水圧をすべて両岸の岩盤で受け止めるため、風化していない非常に新鮮で堅固な岩盤が両岸に存在している必要があります。したがって、両岸の幅が広くという記述は、アーチダムの力学的成立条件と矛盾します。

  2. 重力ダムの安定性と適用 重力ダムは自重によって外力に耐えるため、幅の広い谷でも建設が可能です。構造が単純であり、地盤に対する要求もアーチダムほど厳しくないため、日本の多くの河川で最も広く採用されています。これは選択肢(1)の記述と完全に一致します。

  3. ロックフィルダムの構造と資材調達 ロックフィルダムは、現地で掘削した岩石を積み上げて堤体を形成し、内部にアスファルトや粘土による遮水壁を設けて遮水します。コンクリートを現地で大量に製造・運搬するのが難しい山奥であっても、建設現場の周辺で得られる材料を有効活用できるため、合理的な建設が可能です。これは選択肢(3)の記述の通りです。

  4. アースダムの材料と適用範囲 アースダムは、透水性の低い土を主材料として台形に盛り土をしたダムです。自重が広く分散して基礎地盤に伝わるため、強固な岩盤がない軟弱な地盤でも建設が可能であり、古くからため池などに用いられてきました。現代では50メートルを超える高さのものも存在し、選択肢(4)の記述は正確です。

  5. 取水ダムの役割と形状 水路式発電所において、河川から水路へと必要な水量を取り入れるために設けられるダムを取水ダムと呼びます。これは大きな貯水池を作るためではなく、水位を一定以上に上げて水路へと水を導くことが目的であるため、堤高は低く、上流からの水を越流させる構造が一般的に用いられます。これは選択肢(5)の記述に合致しています。

水路式やダム式といった水力発電の全体像を示す系統図と、川の横断面に描かれた各ダムの薄さや幅を重ねてみると、それぞれのダムが周囲の地形から受ける力をどのように逃がしているのかが見えてきます。

参考リンク

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