令和8年度第三種電気主任技術者上期試験 電力科目 問40 解説 問4 問4 次の文章は、原子核に関する記述である。
問4 原子核は、正の電荷をもつ(ア)と電荷をもたない中性子とが結合したもの である。原子核の質量は、(イ)と中性子の個々の質量の合計より(エ)。 この差を(ウ)といい、結合時にはこれに相当する結合エネルギーが放出され る。この質量の差を m [kg]、真空中 の光の速度を c [m/s] とすると、放出されるエ ネルギー E [J] は (エ)に等しい。 原子力発電は、ウラン等原子燃料の(オ) の前後における原子核の結合エネ ルギーの差を利用したものである。 上記の記述中の空白箇所 (ア) 〜 (オ) に当てはまる組合せとして、正しいものを次 の (1) 〜 (5) のうちから一つ選べ。
- (1) 陽子 大きい 質量増加 mc^2 核融合
- (2) 陽子 小さい 質量欠損 mc^2 核分裂 ✓ 正答
- (3) 電子 大きい 質量増加 mc 核融合
- (4) 陽子 小さい 質量欠損 mc 核分裂
- (5) 電子 小さい 質量欠損 mc 核分裂
解説
原子核は、正の電荷を持つ陽子と、電荷を持たない中性子が結合したものであり、その質量は、構成する陽子と中性子の個々の質量の合計よりも小さい。この質量の差は質量欠損と呼ばれ、結合時にはこれに相当する結合エネルギーが放出される。この質量の差を [kg]、真空中の光の速度を [m/s] とすると、放出されるエネルギー [J] は に等しい。原子力発電は、ウランなどの原子燃料の核分裂の前後における原子核の結合エネルギーの差を利用したものである。
原子核の構成要素と質量欠損、結合エネルギー
原子核は、陽子と中性子で構成されています。陽子は正の電荷を持ち、中性子は電荷を持ちません。
- 陽子: 正の電荷を持つ粒子。原子核の質量数(陽子の数と中性子の数の合計)に寄与します。
- 中性子: 電荷を持たない粒子。原子核の質量数に寄与しますが、電荷は持ちません。
原子核を構成する陽子と中性子は、それぞれ個別の質量を持っています。しかし、これらが結合して原子核を形成する際には、個々の質量の合計よりも原子核全体の質量の方が小さくなります。この質量の差を「質量欠損」と呼びます。
この質量欠損は、アインシュタインの有名な相対性理論における質量とエネルギーの等価性を示す式 によって、エネルギーとして放出されることが説明されます。ここで、 はエネルギー、 は質量欠損、 は光速です。つまり、質量が減少する代わりに、その質量に相当するエネルギーが放出されるのです。この放出されるエネルギーは「結合エネルギー」と呼ばれ、原子核を構成する陽子や中性子を引き離すために必要なエネルギーに等しいと考えられます。
原子力発電の原理
原子力発電は、この結合エネルギーの差、特に「核分裂」という現象を利用しています。
- 核分裂: 重い原子核(例:ウラン235)が中性子を吸収し、より軽い原子核に分裂する現象です。この分裂の際に、元の重い原子核の質量の合計よりも、分裂してできた軽い原子核と放出される中性子の質量の合計の方がわずかに小さくなります。この質量の差(質量欠損)が、前述の の関係に従って莫大なエネルギーとして放出されます。このエネルギーが熱となり、発電に利用されます。
- 核融合: 軽い原子核同士が結合してより重い原子核になる現象です。太陽などの恒星で起こっており、こちらも質量欠損に伴うエネルギー放出がありますが、原子力発電で利用されているのは主に核分裂です。
選択肢の判断
設問の空欄に当てはまるものを、上記の解説に基づいて判断します。
- (ア) 原子核は正の電荷を持つ粒子と電荷を持たない粒子で構成されることから、(ア) は 陽子 です。
- (イ) 原子核の質量は、構成要素の質量の合計よりも小さいという事実から、(イ) には 小さい が入ります。
- (ウ) 質量の差は 質量欠損 と呼ばれます。
- (エ) 放出されるエネルギー は、質量欠損 と光速 を用いて で表されるため、(エ) は になります。
- (オ) 原子力発電は、ウランなどの原子燃料が分裂してエネルギーを放出する 核分裂 を利用しています。
これらの判断から、選択肢 (2) がすべての空欄に正しく当てはまります。
設問文の「原子核の質量は、(イ)と中性子の個々の質量の合計より(エ)」という部分に注目すると、質量欠損の概念と の法則の適用が正答を導く鍵となります。