第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度 上期 第3種 理論 / 各問題解説 / 問130
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令和8年度 上期 第3種 理論 問130 解説 問13

設問図

図は,電界効果トランジスタ(FET)を用いたソース接地増幅回路の簡易小信号等価回路である。この回路の電圧増幅度 A_v = |v_o / v_i| を近似式として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,図中の S,G,D はそれぞれソース,ゲート,ドレインであり,v_i [V],v_o [V],v_gs [V] は各部の電圧,g_m [S] は FET の相互コンダクタンスである。また,抵抗 R_d [Ω] は抵抗 R_L [Ω] に比べて十分大きいものとする。

  1. g_m r_d
  2. g_m R_L
  3. g_m (R_L + r_d)
  4. g_m r_d / R_L
  5. g_m R_L / (R_L + r_d) ✓ 正答

解説

電界効果トランジスタ(FET)を用いたソース接地増幅回路の簡易小信号交流等価回路において、電圧増幅度 Av=∣vo/vi∣A_v = |v_o / v_i| は、図中の抵抗 rdr_d が抵抗 RLR_L に比べて十分大きいという条件により、相互コンダクタンス gmg_m と負荷抵抗 RLR_L の積である gmRLg_m R_L と近似されます。

FET小信号等価回路と増幅の基本

この問題は、FETを用いた増幅回路の特性を交流信号に対して解析するために用いられる「小信号等価回路」に基づいています。小信号等価回路は、FETが直流バイアス点周りで線形的に動作すると仮定し、交流成分のみを扱うためのモデルです。

  • 相互コンダクタンス (gmg_m) FETの重要な特性値の一つで、ゲート-ソース間電圧 vgsv_{gs} の変化量に対して、ドレイン電流 idi_d がどれだけ変化するかを示す量です。単位はジーメンス(S)で、式で表すと id=gmvgsi_d = g_m v_{gs} となります。これは、ゲートに加わる入力電圧が、ドレインに流れる電流をどれだけ制御するかを示す指標です。小信号等価回路では、この特性を制御電流源 gmvgsg_m v_{gs} として表現します。

  • 出力抵抗 (rdr_d) FETのドレインとソース間の内部抵抗で、理想的な電流源とは異なり、ドレイン電流がドレイン-ソース間電圧にわずかに依存することを示します。小信号等価回路では、この抵抗を電流源に並列に接続して表現します。

  • オームの法則とキルヒホッフの法則 回路の電圧、電流、抵抗の関係を理解する上で基本となる法則です。この問題では、特に電流源から流れる電流が並列接続された抵抗にどのように分配され、それによって抵抗の両端にどのような電圧が生じるかを考える際に用います。複数の抵抗が並列接続されている場合、合成抵抗を求めることで、流れる電流と生じる電圧の関係を簡略化して考えることができます。

電圧増幅度 AvA_v の導出ステップ

  1. 入力電圧 viv_i とゲート-ソース間電圧 vgsv_{gs} の関係を特定します。 図の左側を見ると、入力電圧 viv_i はFETのゲート(G)とソース(S)の間に直接印加されています。 したがって、vi=vgsv_i = v_{gs} となります。

  2. 出力側の回路構成と電流源を確認します。 図の中央から右側にかけて、ドレイン(D)とソース(S)の間には、制御電流源 gmvgsg_m v_{gs} が接続されています。この電流源に並列に、FETの出力抵抗 rdr_d と負荷抵抗 RLR_L が接続されています。電流源 gmvgsg_m v_{gs} からの電流は、これら並列接続された抵抗 rdr_d と RLR_L を通って流れます。

  3. 出力抵抗 rdr_d と負荷抵抗 RLR_L の並列接続と問題の条件を考慮します。 抵抗 rdr_d と RLR_L は並列に接続されているため、これらの合成抵抗は Req=rdRLrd+RLR_{eq} = \frac{r_d R_L}{r_d + R_L} となります。 ここで、問題文にある重要な条件「抵抗 rdr_d は抵抗 RLR_L に比べて十分大きいものとする」(rd≫RLr_d \gg R_L)を適用します。 この条件が成り立つ場合、rd+RLr_d + R_L は近似的に rdr_d とみなすことができます。 したがって、合成抵抗 Req≈rdRLrd=RLR_{eq} \approx \frac{r_d R_L}{r_d} = R_L と近似されます。 この近似により、電流源 gmvgsg_m v_{gs} からの電流は、抵抗 rdr_d を無視できるほどわずかしか流れないため、ほぼ全てが負荷抵抗 RLR_L に流れると考えることができます。

  4. 出力電圧 vov_o を算出します。 ステップ3の近似により、制御電流源 gmvgsg_m v_{gs} からの電流がほぼ全て負荷抵抗 RLR_L に流れると考えると、オームの法則により出力電圧 vov_o が決まります。 電流源の矢印はドレインからソースの方向を向いており、この電流が抵抗 RLR_L を流れるため、ドレイン端子の電位はソース端子に比べて低くなります。出力電圧 vov_o はドレインからソースへの電圧として定義されているため、電流の向きを考慮するとマイナス符号がつきます。 vo=−(gmvgs)×RLv_o = - (g_m v_{gs}) \times R_L

  5. 電圧増幅度 AvA_v を計算します。 電圧増幅度 AvA_v は出力電圧の入力電圧に対する振幅比 ∣vo/vi∣|v_o / v_i| で定義されます。 ステップ1で vi=vgsv_i = v_{gs}、ステップ4で vo=−gmRLvgsv_o = - g_m R_L v_{gs} を得ました。 これらを代入すると、 Av=∣−gmRLvgsvgs∣A_v = |\frac{- g_m R_L v_{gs}}{v_{gs}}| Av=∣−gmRL∣A_v = |- g_m R_L| 振幅比であるため絶対値を取ると、 Av=gmRLA_v = g_m R_L となります。

この結果は、問題文の選択肢「gmRLg_m R_L」と一致します。抵抗 rdr_d が抵抗 RLR_L に比べて十分大きいという条件が、FETの出力抵抗の影響を無視できることを示しており、増幅度は相互コンダクタンスと負荷抵抗のみで決まるという結論に導いています。

図中の電流源 gmvgsg_m v_{gs} から抵抗 rdr_d と RLR_L へ流れる電流の分配を、「抵抗 rdr_d が抵抗 RLR_L に比べて十分大きい」という条件と重ねてみると、出力電圧 vov_o がどのように決まるかが見えてきます。

参考リンク

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