第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度 上期 第3種 理論 / 各問題解説 / 問120
certification-simodake-work

令和8年度 上期 第3種 理論 問120 解説 問12

次の文章は,二つの重陽子による核反応について述べている。重陽子 H は重水素の原子核で,陽子と中性子が 1 個ずつ結合したものである。H + H → He + n ①1 式に示す核反応式では質量量の大きい原子核が生成するので,これは (ア) 反応である。反応後の総質量は Δm [kg] だけ (イ) し,(ウ) [J] で表される核エネルギー:5.4×10⁻¹³ J が放出される。また①式の核反応を起こすには,二つの重陽子を 4.0×10⁻¹⁵ m 程度の距離に近づける必要がある。その距離における重陽子間の静電気力による位置エネルギーは (エ) J である。ただし,真空中の光の速さは c = 3.0×10⁸ m/s,静電気に関するクーロンの法則の比例定数は k = 9.0×10⁹ N・m²/C²,電気素量は e = 1.6×10⁻¹⁹ C とする。また二つの点電荷 q₁ [C],q₂ [C] が距離 r [m] 離れて存在するときに各点電荷が持つ位置エネルギーは U = kq₁q₂/r [J] (無限遠点を基準とする) で与えられる。

  1. (1) 核分裂 増加 Δm・c² 3.6×10⁻¹⁴
  2. (2) 核融合 減少 Δm・c² 5.8×10⁻¹⁴
  3. (3) 核融合 減少 Δm・c² 3.6×10⁻¹⁴
  4. (4) 核融合 増加 1/2 Δm・c² 5.8×10⁻¹⁴
  5. (5) 核分裂 減少 1/2 Δm・c² 3.6×10⁻¹⁴ ✓ 正答

解説

設問の核反応式 2/1H + 2/1H → 3/2He + 1/0n から、軽い原子核が融合してより重い原子核が生じているため、(ア)は核融合反応であり、エネルギーが放出される際には(イ)総質量が減少し、そのエネルギーはアインシュタインの特殊相対性理論に基づき(ウ)Δm・c^2で表されます。また、与えられた定数とクーロンの法則を用いて重陽子間の静電気による位置エネルギーを計算すると、(エ)5.8×10^-14 Jとなるため、選択肢(2)が正しいと判断できます。

核反応の種類と質量欠損の原理

原子核は陽子と中性子から構成されており、これらが結合したり分裂したりする反応を核反応と呼びます。核反応は大きく「核融合」と「核分裂」に分けられます。

  • 核融合反応: 軽い原子核同士が結合し、より重い原子核を生成する反応です。この過程で莫大なエネルギーが放出されることが特徴です。太陽が輝いているのも、水素原子核がヘリウム原子核へと核融合する反応によるものです。設問の反応式 2/1H + 2/1H → 3/2He + 1/0n は、2つの重陽子(水素の同位体)が結合してヘリウム3(軽い原子核)と中性子を生成しており、これは核融合反応に該当します。
  • 核分裂反応: 重い原子核が分裂し、より軽い原子核や中性子を生成する反応です。この反応でも大きなエネルギーが放出され、原子力発電に利用されています。

核反応でエネルギーが放出される現象は、アインシュタインの特殊相対性理論における「質量とエネルギーの等価性」の原理(E=mc^2)によって説明されます。この原理によれば、質量はエネルギーに、エネルギーは質量に変換され得ることを示しています。

核反応では、反応前の総質量と反応後の総質量を比較すると、反応後の総質量がわずかに減少することがあります。この減少した質量を「質量欠損 (Δm)」と呼び、この質量欠損分がエネルギー (E = Δm・c^2) として放出されます。この放出されるエネルギーは、原子核を構成する陽子や中性子を結合させている「核力」による結合エネルギーに由来します。エネルギーが外部へ放出されるということは、反応系の持つエネルギーが減少したことを意味し、それに伴って反応系の総質量も減少するのです。

クーロンの法則と静電ポテンシャルエネルギー

電荷を帯びた粒子間には「クーロン力」という静電力が働きます。同じ符号の電荷を持つ粒子間には反発力が、異なる符号の電荷を持つ粒子間には引力が働きます。このクーロン力による相互作用が、粒子の間に位置エネルギーとして蓄えられます。

2つの点電荷 q1 [C] と q2 [C] が距離 r [m] 離れて存在するとき、これらの電荷が持つ静電気による位置エネルギー U [J] は、問題文に示されているように以下の式で与えられます。

U=kq1q2rU = k \frac{q_1 q_2}{r}

ここで、k は静電気に関するクーロンの法則の比例定数です。 重陽子 2/1H は、陽子1個と中性子1個から構成される原子核です。陽子は電気素量 e と同じ正の電荷を持っていますが、中性子は電荷を持ちません。したがって、重陽子1個あたりの電荷は陽子1個分の電荷、すなわち電気素量 e に等しくなります。二つの重陽子なので、それぞれの電荷 q1 と q2 はともに e となります。

各空欄の判断と計算

  1. ア:核反応の種類を特定する 設問の核反応式は 2/1H + 2/1H → 3/2He + 1/0n です。これは、軽い原子核である重陽子(水素の同位体)2つが結合して、より重い原子核であるヘリウム3と中性子を生成する反応です。この「軽い原子核が結合して重い原子核になる」という特徴は、核融合反応の定義に完全に一致します。したがって、(ア)には「核融合」が入ります。

  2. イ:反応後の総質量の変化を特定する 問題文には「核エネルギー: 5.4×10^-13 Jが放出される」と明記されています。前述の「質量とエネルギーの等価性」の原理に基づくと、エネルギーが放出されるということは、その分の質量がエネルギーに変換されたことを意味します。したがって、反応後の総質量は反応前と比べて減少します。この減少分が質量欠損Δmとなります。したがって、(イ)には「減少」が入ります。

  3. ウ:放出される核エネルギーの式を特定する 放出される核エネルギーは、質量欠損Δmがエネルギーに変換されたものです。この関係はアインシュタインの特殊相対性理論によって示される式 E = Δm・c^2 で表されます。ここで c は真空中の光の速さです。したがって、(ウ)には「Δm・c^2」が入ります。

  4. エ:重陽子間の静電気による位置エネルギーを計算する 二つの重陽子間の静電気による位置エネルギー U を計算します。 与えられた式は U=kq1q2rU = k \frac{q_1 q_2}{r} です。

    • クーロンの法則の比例定数 k = 9.0×109 N・m2/C29.0 \times 10^9 \text{ N・m}^2/\text{C}^2
    • 電気素量 e = 1.6×10−19 C1.6 \times 10^{-19} \text{ C}
    • 重陽子間の距離 r = 4.0×10−15 m4.0 \times 10^{-15} \text{ m}
    • 重陽子1個の電荷は陽子1個の電荷と等しく、q1 = q2 = e = 1.6×10−19 C1.6 \times 10^{-19} \text{ C}

    これらの値を式に代入します。 U=9.0×109×(1.6×10−19)24.0×10−15U = 9.0 \times 10^9 \times \frac{(1.6 \times 10^{-19})^2}{4.0 \times 10^{-15}} U=9.0×109×2.56×10−384.0×10−15U = 9.0 \times 10^9 \times \frac{2.56 \times 10^{-38}}{4.0 \times 10^{-15}} U=9.0×2.564.0×109×10−3810−15U = \frac{9.0 \times 2.56}{4.0} \times \frac{10^9 \times 10^{-38}}{10^{-15}} U=23.044.0×10(9−38−(−15))U = \frac{23.04}{4.0} \times 10^{(9 - 38 - (-15))} U=5.76×10(9−38+15)U = 5.76 \times 10^{(9 - 38 + 15)} U=5.76×10−14 JU = 5.76 \times 10^{-14} \text{ J}

    有効数字を考慮すると、5.8×10−14 J5.8 \times 10^{-14} \text{ J} となります。したがって、(エ)には「5.8×10−145.8 \times 10^{-14}」が入ります。

これらの判断から、(ア) 核融合、(イ) 減少、(ウ) Δm・c^2、(エ) 5.8×10−145.8 \times 10^{-14} の組み合わせである選択肢(2)が正解です。

核融合反応を起こすためには、重陽子同士の静電気的な反発力に打ち勝って、核力が働く距離(約 10−1510^{-15} m 程度)まで近づける必要があります。ここで計算した静電気による位置エネルギーは、そのために必要なエネルギーの目安を示しており、放出される核エネルギーと比べると、非常に大きなエネルギーを要することが見て取れます。

参考リンク

学習の記録にははてなブックマーク!

気づいたこと・覚えたことをコメントにメモしよう