この問題は、トランジスタ増幅回路の周波数特性、特に結合コンデンサ C1 が増幅度にもたらす低域遮断周波数を求めるものです。与えられた回路定数と条件「RA∣∣RB>>hie」に基づき、コンデンサ C1 から見た等価抵抗を hie と近似することで、電圧増幅度が 1/2 になる周波数は約 5.3 Hz と算出されます。したがって、最も近い選択肢は 5.3 Hz です。
遮断周波数とRCハイパスフィルタの特性
この問題の鍵は、交流信号が通過する経路に直列に挿入されたコンデンサ C1 の影響を理解することです。コンデンサは直流を遮断し、交流は通過させますが、その通過のしやすさは周波数によって異なります。低い周波数ではコンデンサのインピーダンスが大きくなり、信号が減衰します。
増幅回路において、結合コンデンサ C1 が入力側にある場合、信号源 vi とトランジスタの入力との間にRCハイパスフィルタを形成します。このフィルタの特性により、ある特定の周波数以下では増幅度が低下します。
電圧増幅度が「本来の増幅度の 1/2」となる周波数は、**遮断周波数(またはカットオフ周波数、3dB減衰点)**と呼ばれます。この遮断周波数 fc は、RC回路の抵抗 R と容量 C を用いて以下の式で表されます。
fc=2πRC1
ここで R はコンデンサから見た等価抵抗です。ハイパスフィルタの場合、コンデンサの入力側にある信号源の内部抵抗(通常は0と見なす)と、出力側にある負荷抵抗の合成抵抗が R になります。
遮断周波数の算出
それでは、この性質と与えられた条件を問題に適用し、遮断周波数を計算していきましょう。
1. コンデンサ C1 から見た等価抵抗 Rin の特定
図1の入力回路を見ると、信号源 vi の後に結合コンデンサ C1 が直列に接続されています。その C1 の右側には、トランジスタのベース、そしてベースバイアス抵抗 RA と RB が接続されています。
交流小信号回路において、トランジスタのベースから見た入力インピーダンスは hie で表されます。また、バイアス抵抗 RA と RB は、交流的には並列に接続されていると見なせます。
したがって、コンデンサ C1 から見た等価抵抗 Rin は、RA, RB, hie の並列合成抵抗として計算されます。
Rin=RA∣∣RB∣∣hie
まず、RA と RB の並列合成抵抗を計算します。
RA∣∣RB=RA+RBRA×RB=100 kΩ+600 kΩ100 kΩ×600 kΩ=70060000 kΩ=7600 kΩ≈85.71 kΩ
次に、この RA∣∣RB と hie の並列合成抵抗を計算します。
hie=3×103 Ω=3 kΩ
Rin=(RA∣∣RB)∣∣hie=(RA∣∣RB)+hie(RA∣∣RB)×hie=(600/7 kΩ)+3 kΩ(600/7 kΩ)×3 kΩ
Rin=621/71800/7 kΩ=6211800 kΩ≈2.8986 kΩ
2. 近似条件の適用
問題文には「RA∣∣RB>>hie と考えられるとき」という条件が提示されています。
実際に計算した RA∣∣RB≈85.71 kΩ と hie=3 kΩ を比較すると、RA∣∣RB は hie より非常に大きいことが分かります。
ここで、抵抗の並列合成における近似の法則を適用します。2つの抵抗 R1 と R2 が並列接続されていて、R1>>R2 の場合、その合成抵抗はほぼ小さい方の抵抗 R2 に等しくなります。
R1+R2R1R2≈R1R1R2=R2
この法則を Rin=(RA∣∣RB)∣∣hie に適用すると、RA∣∣RB が hie より非常に大きいため、等価抵抗 Rin は hie に近似できます。
Rin≈hie=3×103 Ω
この近似が、問題が意図する解法であると判断できます。
3. 遮断周波数 fL の計算
コンデンサ C1=10 μF=10×10−6 F と、近似した等価抵抗 Rin=3×103 Ω を遮断周波数の式に代入します。
fL=2πC1Rin1=2π×(10×10−6 F)×(3×103 Ω)1
fL=2π×30×10−31=0.06π1
π≈3.14159 を用いて計算すると、
fL=0.06×3.141591=0.18849541≈5.305 Hz
この計算結果は、選択肢の 5.3 Hz と非常によく一致します。
図1の入力回路に目を戻すと、結合コンデンサ C1 が信号源からトランジスタのベースへ信号を伝える役割を果たしています。この C1 と、その先に繋がるトランジスタの入力抵抗(hie とバイアス抵抗 RA∣∣RB の並列合成)が、今回の遮断周波数を決定するRCフィルタを形成していることが見えてきます。
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