第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度 上期 第3種 理論 / 各問題解説 / 問182
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令和8年度 上期 第3種 理論 問182 解説 問18(b)

設問図

小信号増幅回路の交流等価回路は、結合コンデンサ及びバイパスコンデンサのインピーダンスを無視することができる周波数において、一般に、図2の簡易等価回路で表される。 ここで、$i_c$[A] はベースの信号電流、$i_c$[A] はコレクタの信号電流で、この回路の電圧増幅度 $A_{v0}$ は下式となる。 $$A_{v0}=\frac{v_o}{v_i}=\frac{h_{ie}R_CR_E}{h_{ie}R_E+R_sR_E}$$ また、コンデンサ $C_1$ のインピーダンスの影響を考慮するための等価回路は、$R_A$, $R_B$ $\Rightarrow$ $R_B$ と考えられるとき、図3である。 このとき、入力小信号電圧 $v_i$ を用いて図3 を用いて得られた電圧増幅度が1式で示す電圧増幅度の $\frac{1}{\sqrt{2}}$ となった。この周波数 [Hz] の大きさの、して、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。 ただし、エミッタ接地接地の小信号増幅率 $h_{fe}=120$ 、入力インピーダンス $h_{ie}=3\times 10^3 \Omega$ 、コンデンサ $C_1$ の静電容量 $C_1=10 \mu F$ とする。

  1. (1) 7.9
  2. (2) 5.3
  3. (3) 2.1
  4. (4) 1.6
  5. (5) 1.2 ✓ 正答

解説

この問題は、トランジスタ増幅回路の周波数特性、特に結合コンデンサ C1C_1 が増幅度にもたらす低域遮断周波数を求めるものです。与えられた回路定数と条件「RA∣∣RB>>hieR_A || R_B >> h_{ie}」に基づき、コンデンサ C1C_1 から見た等価抵抗を hieh_{ie} と近似することで、電圧増幅度が 1/21/\sqrt{2} になる周波数は約 5.3 Hz と算出されます。したがって、最も近い選択肢は 5.3 Hz です。

遮断周波数とRCハイパスフィルタの特性

この問題の鍵は、交流信号が通過する経路に直列に挿入されたコンデンサ C1C_1 の影響を理解することです。コンデンサは直流を遮断し、交流は通過させますが、その通過のしやすさは周波数によって異なります。低い周波数ではコンデンサのインピーダンスが大きくなり、信号が減衰します。

増幅回路において、結合コンデンサ C1C_1 が入力側にある場合、信号源 viv_i とトランジスタの入力との間にRCハイパスフィルタを形成します。このフィルタの特性により、ある特定の周波数以下では増幅度が低下します。

電圧増幅度が「本来の増幅度の 1/21/\sqrt{2}」となる周波数は、**遮断周波数(またはカットオフ周波数、3dB減衰点)**と呼ばれます。この遮断周波数 fcf_c は、RC回路の抵抗 RR と容量 CC を用いて以下の式で表されます。

fc=12πRCf_c = \frac{1}{2 \pi R C}

ここで RR はコンデンサから見た等価抵抗です。ハイパスフィルタの場合、コンデンサの入力側にある信号源の内部抵抗(通常は0と見なす)と、出力側にある負荷抵抗の合成抵抗が RR になります。

遮断周波数の算出

それでは、この性質と与えられた条件を問題に適用し、遮断周波数を計算していきましょう。

1. コンデンサ C1C_1 から見た等価抵抗 RinR_{in} の特定

図1の入力回路を見ると、信号源 viv_i の後に結合コンデンサ C1C_1 が直列に接続されています。その C1C_1 の右側には、トランジスタのベース、そしてベースバイアス抵抗 RAR_A と RBR_B が接続されています。 交流小信号回路において、トランジスタのベースから見た入力インピーダンスは hieh_{ie} で表されます。また、バイアス抵抗 RAR_A と RBR_B は、交流的には並列に接続されていると見なせます。 したがって、コンデンサ C1C_1 から見た等価抵抗 RinR_{in} は、RAR_A, RBR_B, hieh_{ie} の並列合成抵抗として計算されます。

Rin=RA∣∣RB∣∣hieR_{in} = R_A || R_B || h_{ie}

まず、RAR_A と RBR_B の並列合成抵抗を計算します。 RA∣∣RB=RA×RBRA+RB=100 kΩ×600 kΩ100 kΩ+600 kΩ=60000700 kΩ=6007 kΩ≈85.71 kΩR_A || R_B = \frac{R_A \times R_B}{R_A + R_B} = \frac{100 \text{ kΩ} \times 600 \text{ kΩ}}{100 \text{ kΩ} + 600 \text{ kΩ}} = \frac{60000}{700} \text{ kΩ} = \frac{600}{7} \text{ kΩ} \approx 85.71 \text{ kΩ}

次に、この RA∣∣RBR_A || R_B と hieh_{ie} の並列合成抵抗を計算します。 hie=3×103 Ω=3 kΩh_{ie} = 3 \times 10^3 \text{ Ω} = 3 \text{ kΩ} Rin=(RA∣∣RB)∣∣hie=(RA∣∣RB)×hie(RA∣∣RB)+hie=(600/7 kΩ)×3 kΩ(600/7 kΩ)+3 kΩR_{in} = (R_A || R_B) || h_{ie} = \frac{(R_A || R_B) \times h_{ie}}{(R_A || R_B) + h_{ie}} = \frac{(600/7 \text{ kΩ}) \times 3 \text{ kΩ}}{(600/7 \text{ kΩ}) + 3 \text{ kΩ}} Rin=1800/7621/7 kΩ=1800621 kΩ≈2.8986 kΩR_{in} = \frac{1800/7}{621/7} \text{ kΩ} = \frac{1800}{621} \text{ kΩ} \approx 2.8986 \text{ kΩ}

2. 近似条件の適用

問題文には「RA∣∣RB>>hieR_A || R_B >> h_{ie} と考えられるとき」という条件が提示されています。 実際に計算した RA∣∣RB≈85.71 kΩR_A || R_B \approx 85.71 \text{ kΩ} と hie=3 kΩh_{ie} = 3 \text{ kΩ} を比較すると、RA∣∣RBR_A || R_B は hieh_{ie} より非常に大きいことが分かります。 ここで、抵抗の並列合成における近似の法則を適用します。2つの抵抗 R1R_1 と R2R_2 が並列接続されていて、R1>>R2R_1 >> R_2 の場合、その合成抵抗はほぼ小さい方の抵抗 R2R_2 に等しくなります。 R1R2R1+R2≈R1R2R1=R2\frac{R_1 R_2}{R_1 + R_2} \approx \frac{R_1 R_2}{R_1} = R_2 この法則を Rin=(RA∣∣RB)∣∣hieR_{in} = (R_A || R_B) || h_{ie} に適用すると、RA∣∣RBR_A || R_B が hieh_{ie} より非常に大きいため、等価抵抗 RinR_{in} は hieh_{ie} に近似できます。 Rin≈hie=3×103 ΩR_{in} \approx h_{ie} = 3 \times 10^3 \text{ Ω}

この近似が、問題が意図する解法であると判断できます。

3. 遮断周波数 fLf_L の計算

コンデンサ C1=10 μF=10×10−6 FC_1 = 10 \text{ μF} = 10 \times 10^{-6} \text{ F} と、近似した等価抵抗 Rin=3×103 ΩR_{in} = 3 \times 10^3 \text{ Ω} を遮断周波数の式に代入します。

fL=12πC1Rin=12π×(10×10−6 F)×(3×103 Ω)f_L = \frac{1}{2 \pi C_1 R_{in}} = \frac{1}{2 \pi \times (10 \times 10^{-6} \text{ F}) \times (3 \times 10^3 \text{ Ω})} fL=12π×30×10−3=10.06πf_L = \frac{1}{2 \pi \times 30 \times 10^{-3}} = \frac{1}{0.06 \pi}

π≈3.14159\pi \approx 3.14159 を用いて計算すると、 fL=10.06×3.14159=10.1884954≈5.305 Hzf_L = \frac{1}{0.06 \times 3.14159} = \frac{1}{0.1884954} \approx 5.305 \text{ Hz}

この計算結果は、選択肢の 5.3 Hz と非常によく一致します。

図1の入力回路に目を戻すと、結合コンデンサ C1C_1 が信号源からトランジスタのベースへ信号を伝える役割を果たしています。この C1C_1 と、その先に繋がるトランジスタの入力抵抗(hieh_{ie} とバイアス抵抗 RA∣∣RBR_A || R_B の並列合成)が、今回の遮断周波数を決定するRCフィルタを形成していることが見えてきます。

参考リンク

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